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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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 日本一長い時代小説を目指して
ちなみに日ほ本一長い歴史小説と言われているのは、山岡荘八先生の「徳川家康」で、四百字の原稿用紙で17、482枚。
文字数は単純計算すると6、992、800字です。
鐘巻兵庫107話終了時点で約313万文字ですから、今後年55万文字のペースで書くと、目標達成は7年1ヶ月後、私が82歳を迎える頃でしょうか。
そこまで長生きできれば良いのですが。

鐘巻兵庫無頼控え ←連載中
 
湯上り侍無頼控え ←連載終了

駄文創作の徒然 ←たま~に
小説を書くことで体験する事柄を綴ります。 

馬鹿な話 ←たま~に
日々思いついた身近な題材を選び、少の偏見を込め綴ります。

鼻歌 100曲作りました。興味無くても聞いてください。
      珠玉の鼻歌100曲のメドレー

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Posted on 2031/04/30 Wed. 09:34 [edit]

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【鐘巻兵庫 第108話 掴まり立ち(その12】 

 棒手振りと云っても担ぐのではなく、江戸から越谷宿の遠距離の運搬に大八車を使い繰り返し行ったことが、宿場から信用を勝ち得ようとしていた。
その棒手振りの大二郎と熊吉が空になった大八車を牽き江戸へ戻っていき、暫くすると勝手口から乙次郎の妻・お美代が顔を見せ、乙次郎と目配せして姿を消した。
乙次郎が兵庫の所にやって来た。
「先生。これから旅籠の主に変身しますので」と云い、続けて
「好太郎、波平。後を頼む」と云い、お美代が姿を見せた勝手口に消えていった。
 兵庫自身はまだ稽古が出来る状態だったが、泊り客を迎え始めた旅籠で働く者にとって稽古をする時間を過ぎていた。
「皆さん上がって下さい。道具は私が片付けておきます」と兵庫が言い、稽古が終わった。
兵庫は手足を洗い、着替え直すと道具を片付け、外に貼った貼り紙を外し、木戸を内側から閉め、そして勝手口から旅籠内に入っていった。

 旅籠内に入り台所を抜け出した兵庫は客の一人に成った。
帳場辺りは入って来る旅人を迎えるものと旅人で、兵庫がのんびりする場所は無い。
兵庫は客だが、旅籠代を貰う客ではない。旅籠の部屋は旅籠代を払う者に先ず割り当てられる。幸か不幸か客が少なく部屋が空いてしまった時に兵庫の部屋が、そうでなければ他の客との相部屋か空いた布団部屋で孝太郎や波平と寝ることに成るのだ。
落ち着き先を求めて兵庫は帳場にやって来た。昼を食べた部屋は昼だけ飯屋の舞台に模様替えされていたが、夜は旅人を迎える部屋に戻されて居た。
 外からは孝太郎や波平の客引きの声が聞こえてきた。
その呼び込みの声で兵庫は旅籠より外に誘われた。
だが、帳場は草鞋を脱ぐ客、その足を洗う者で込み合っていた。
兵庫は勝手口から出ることにし戻っていった。
台所で、
「お美代さん、旅籠の者たちの夕飯はいつ頃に成りますか。外に出ますが、それまでには戻るようにします」
「最後の客に食べさせた後というのが福寿屋のやり方ですが、暮れ六つの鐘が鳴ったら帰って来て下さい」
「分かりました。行って来ます」
 勝手口から出た兵庫は表へ通じる脇道を通り、木戸を開け街道に出た。
相変わらず旅人を客にしようと遠慮がちに声を掛けている好太郎と波平を横目に見て兵庫はまた問屋場に向かった。
問屋に着くと、年寄りに
「今晩、本陣にお偉い方が泊まりますか」
「いいえ、寝所を使う人は泊まりませんよ」
「分かりました。それなら迷惑は掛からないでしょうから行って来ます」
 兵庫は街道筋から少し入った所に立派な門を構える本陣・荒川屋に入っていった。
出て来た者に
「私は鐘巻兵庫と申します。久五郎殿と立ち話で良いのでお取次ぎください」
久五郎は笑みを浮かべて出て来て、
「鐘巻様、立ち話ではなく、お上がりください」
それでは、お言葉に甘えて、と兵庫が上がった後に、福寿屋の焼き印の入った下駄が残っていた。

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Posted on 2018/04/23 Mon. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第108話 掴まり立ち(その11)】 

 問屋場から福寿屋に戻ってきた兵庫は、表の街道から裏の道場へ通じる、隣の家との間に出来た通路といっても私道で木戸が在り、閉め切られていた。
と云っても、日中は外から開けて入ることが出来る。
その様子を確かめた兵庫は福寿屋に入ると、
「道場に客を呼び込む案内を書いて入口に貼りますので、紙と筆を頼みます」と番頭の駒吉に頼んだ。
そして、書き上げた紙には“旅のみやげに剣術見物”と書かれていた。
兵庫はこれを持って外に出、表の戸口から裏へと回った。
そこでは乙次郎、好太郎、波平の三人が、以前から旅籠で働く者たちから教えられた作業をしていた。
「先生、何ですか」
「剣術の音を立て、腕自慢の伊達侍を呼び寄せ、その腕前を確かめようと思いつきました。悪いが、剣術の道具を運び出し、一人で良いので私の稽古相手に成って下さい」
「分かりました」
道具が運び出され裏庭の道場の端に敷かれた莚の上に置かれていった。
「私たちの分と客人の用、合わせて五組です。波平お前からだ教わりなさい」
と乙次郎が譲った。
稽古仕度が出来ると、兵庫は表に行き戸口に“旅のみやげに剣術見物”と書かれた紙を貼り付けた。そして扉を開けたままにして道場に戻った。
宿場街道に面した扉が開き、剣術の稽古仕度をした侍が出て来て、何かが書かれた紙を貼り戸を開けたまま戻って行くのを見た者が、戸口までやって来て貼り付けられた紙に書かれた文字を読み、吸い込まれるように兵庫を追っていった。

 気合が街道に届き始めた。その声を聞いた者の首が振られた先に剣術と書かれた紙が貼られていた。
耳には気合が、目には剣術の文字を見た男は貼り紙に歩み寄り、小さい文字まで読み終えると気合のする奥へと入っていった。
 稽古をしていた兵庫は見物人が数人に成った所で、稽古を止め、
「皆さんの中で剣術の稽古をやりたい方は道具を着けて下さい。初めての方にはお手伝いします」と云い、また稽古を始めた。

 この日稽古を見に来た者は町人が多く武士はただ一人だった。ただ誰一人として稽古に参加することはなかった。
いや居た。夕方近くに成って棒手振りの先輩大二郎と新米の熊吉が荷を乗せた大八車を牽き納品のため裏口にやって来たのだ。
納め終ると
「先生、叩かせて下さい」と稽古に参加したのだ。
兵庫は押上での稽古とは違った喜びを感じながら、稽古を続けた。

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Posted on 2018/04/22 Sun. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第108話 掴まり立ち(その10)】 

 問屋場で兵庫は興味ある話を聞いた。それは大大名の伊達藩の参勤の宿決めをする道中役の中に、歩合をねだる者、乱暴を働く者が居ると云う事だった。
ただし、宿場の方でも 各宿場の話し合いを持ち抜け駆けをしなくなったことで、道中役の旨みが薄れたのか騒ぎを起こすようなことは無くなったということだった。
 福寿屋に戻った兵庫は帳場に人を集め、問屋場で聞いて来たことを話し、福寿屋としてこれまでにやって来たことを番頭の駒吉に聞いた。
「鐘巻様、先ず、行列が通る日は御殿様も居ますので、何も不祥事は起きません。あくまでも起こるとすれば道中役が通る今日明日です。しかし、道中役にとって足軽らが泊まる福寿屋には目もくれません。本陣に泊まって少しばかり良い思いをさせて貰うだけです」
「それでは、本陣の荒川屋から何か言って来るまでただ待つだけですか。ところでどのような乱暴を働くのですか」
皆が、事情を知っているだろうと番頭を見た。
「知りません。ここの宿場で伊達の侍が暴れた具体的な話は聞いたことがありません。有ったとしても参勤の年だけと少ないからかもしれませんね」
「もう一度、問屋場に行って来ます。宿場の重役しか知らない事なのかもしれませんね」

 兵庫が再び問屋場に行くとそこに残って居たのは問屋場の年寄り、会田銀右衛門だけだった。
「何ですか」と兵庫の来た訳を聞こうと銀右衛門が話しかけて来た。
「福寿屋に戻り先ほどの話について、もう少し細かいことを尋ねたら・・・」
「知らなかったのですね」と銀右衛門が引き継いで言った。
「はい」
「知らなくても不思議では在りませんよ。越谷宿での出来事では在りませんから」
「それではどこの宿ですか」
「草加宿で二度ほど起きたそうです。草加宿の本陣で話し合いが上手く行かず狼藉を働いた伊達様のご家来に、本陣の主が狼藉侍に説教して狼藉の矛先を逸らしたそうです」
「どの様な説教をしたのですか」
「伊達様の立派なご家来と在ろうお方が、金の問題で金が命の町人を脅すとはみっともない。町人を金のことで屈服させたいのなら、お武家らしく怒りを弱い町人に向けるのではなく、強いお武家を屈服させてから再度お越しください。お武家様が命を懸けているのを見せて頂ければ、お話を受け入れましょう。と申したそうです」
「なるほど、それでどう成りましたか」
「強い武家で心当たりある者が居るのなら教えて欲しいと聞かれ、草加宿に道場を開く者を指名したそうです」
「それでその道場主を打ち負かしたのですね」
「はい、命を懸けた証に、木刀勝負にしたそうです。気の毒だったのは傷ついた道場主で、道場を売り宿場を離れたそうです」
「それにしても強いお方勝とは、たいしたものですね。どうして、道中役などをしているのですかね」
「その方のお役は殿様がお泊りに成る宿と寝床の警護で、事前に泊まる宿の検分を済ませ、不足が在れば直すように指示するそうです。実はその改修費が高すぎるので、話がこじれたので、歩合をねだると云うのは真実ではないようです」
「分かりました。もし越谷宿にその方が姿を見せるようでしたら、今日明日でしたら福寿屋に、明後日でしたら草加宿の道場に私が居ますので、私と勝負するようにさせて下さい」
「はい、その様に本陣の主・久五郎さんに伝えておきます」
「お願いします」

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Posted on 2018/04/21 Sat. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第108話 掴まり立ち(その9)】 

 座を譲ろうとするきねに、
「そのままでいて下さい。私は記憶違いをしていたようです」
「何がでしょうか」
「お子を宿したのは麦殿と思って居たのです。きね殿でしたか」
「鐘巻様の記憶は間違ってはいません。勝五郎もこのことを知らずに逝ってしまいましたので・・・」
「勝五郎殿が知らないこのことを知っている方は他に居ますよね」
「ご安心を、先日粕壁の義父・寿右衛門様には目立ち始めたお腹を見せて参りました。勝五郎が亡くなってからの子としては育ちすぎて居るのを判って貰いました」
兵庫は思わず顔に笑みを浮かべた。
「私は今日明日こちらに泊まり、宿場の様子を見て戻る予定です」
「乙次郎さんのことでしたら、心配なさらなくても大丈夫ですよ」
「心配はしていませんが、勝五郎殿の時とは変わったことは何でしょうか」
「それは、所謂子分衆が子分衆では無くなり対等に成ったことぐらいです。何かを頼む時は頭を下げて頼みに行っています」
「それは特定の者に頼るのではなく自立の芽生えですから歓迎ですが、もし他人任せだと乙次郎さんの苦労が増えますね」
「その増える方でしょうね」
「参考に成りました。有り難うございました。散歩してきます」

 兵庫が帳場に出て行くと、
「お出かけですか。旅籠の下駄をお掃きください」
旅籠の焼き印が押された下駄を履いた兵庫が出て行くと、
「お供します」と外で待って居た波平が言った。
波平は元東都組の者だったが、乙次郎が越谷の勝五郎一家を引き継ぐために移ることに成った時、乙次郎の手足に成って働くように好太郎と共に、兵庫が送り込んだ者で、乙次郎の子飼いと成った。

 兵庫の足は宿場の中ほどに在る問屋場に向かっていた。
宿場の動きが分る所だからだった。
問屋場に入るとそこには、兵庫の顔見知りが揃って居た。
「鐘巻様」と最初に声を掛けたのが問屋の彦五郎で、それが発端で話し合っていた、本陣の荒川屋久五郎と脇本陣の大沢屋庄左衛門が兵庫を見て、座を一人分空けたのだ。
「ご相談が御座いますのでお上がりください」と云った普段問屋場に居る年寄りの会田銀右衛門だった。
会田とは先日、騒動を起こした五人組を観念させた特に会っており、彦五郎、久五郎、庄左衛門には今年の正月、熊蔵一家を捕らえた時に会って居たのだ。
「相談とは何でしょうか」
「来年伊達様の参勤が御座います。人数が多いので伊達様の予定が決まらないと、他の御大名と相談に入れないのです。伊達様のお使いが今日明日にでも来て泊まる宿を押さえに来ます。その者たちが乱暴者で、時として騒ぎを起こすのでその時は穏やかに治めて欲しいのです」
「乱暴を働く訳は何ですか」
「法外な歩合を要求する交渉の中で、断ると物品を壊すのです」
「何故、受け入れられないような法外な歩合を要求するのでしょうか」
「暴れたいからだとしか思えません」
「性悪者ですね」
「ただ宿場としては通り抜けされては困るので、粕壁、越谷、草加の各宿で相談して泊まる人員の人数を分け合って、抜け駆けをしないようにしているので、滅多に騒ぎは起きないようになりましたので、あくまでも用心のためです」
「今日明日は福寿屋に泊まって居て明日は草加宿に泊まります。その間でしたら知らせて頂ければ出向きます」
「宜しくお願い致します」

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Posted on 2018/04/20 Fri. 04:02 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

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