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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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 日本一長い時代小説を目指して
ちなみに日ほ本一長い歴史小説と言われているのは、山岡荘八先生の「徳川家康」で、四百字の原稿用紙で17、482枚。
文字数は単純計算すると6、992、800字です。
鐘巻兵庫117話終了時点で約355万文字ですから、今後年55万文字のペースで書くと、目標達成は2024年5頃でしょうか。
そこまで長生きできれば良いのですが。

鐘巻兵庫無頼控え ←連載中
 
湯上り侍無頼控え ←連載終了

駄文創作の徒然 ←たま~に
小説を書くことで体験する事柄を綴ります。 

馬鹿な話 ←たま~に
日々思いついた身近な題材を選び、少の偏見を込め綴ります。

鼻歌 100曲作りました。興味無くても聞いてください。
      珠玉の鼻歌100曲のメドレー

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Posted on 2031/04/30 Wed. 09:34 [edit]

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【鐘巻兵庫 第118話 火事場泥(その14)】 

 嘉永七年二月十三日(1854-3-11)の朝、間を置きながら駒形の養育所に人が集まり始めていた。
その中には、岡っ引きの勇三や平次の姿もあった。
そして兵庫は品川宿へ向かう茂吉と次郎を駒形に待たせていた。
それは、八丁堀の兄・南町奉行所与力から何らかの話が届くからで、その情報を持たせ品川宿の久坂の所へ行かせたかったからだった。
 その八丁堀からの使いは、駒形に集まって来た者たちを待たせることなくやって来た。
戸を開けて入って来たのは田村栄助だった。
「田村さんがお使いとは、何かお土産が期待できそうですね」と兵庫が迎えた。
「はい、お奉行の使いで参りました。こちらに中川矢五郎殿、彦四郎殿は居られますか」
「控えております」
「役儀故上がらせて頂きます」
「どうぞ」
田村は上がると中川親子の前に立ったまま懐から書状を取り出し、その表を見せた。
それには“委嘱”と書かれていた。
それを見て、中川親子のみならず居並ぶ者が頭を下げた。
「世情の不安に乗じ、不届きに及ぶ者有之。よってこれらの者を捕縛し町内の不穏を除き安らぎをもたらすため、有志を募り、その長と成り昼夜の警邏を行う役を委嘱するものなり。中川矢五郎殿、中川彦四郎殿。南町奉行池田播磨守頼方。嘉永七年二月十二日」
田村は読み切った書状を皆に向け見せた。そして、懐から長い袋を二つ取り出した。
「お奉行から十手を預かって参りました」と二人に書状と共に渡し、そして、
「お二人の身分は、お奉行の隠密と云う立場だそうですが、報告は与力殿の方へお願いします」
「有難くお受けいたします」と親子が頭を下げた。
「それでは、私は御役が在りますので失礼いたします」
田村は出て行った。

 田村を見送った後、矢五郎が、
「これを持てば、お触れも流れ星も必要なくなった」と袋から取り出した十手を見せた。
「そうですね。それでは、亥蔵の茶屋への御用改めの日取りを十五日、天気が悪ければ十六日に致しましょう」
「それでいいだろう。茂吉さん、その事を久坂さんに伝えてくれ」
「行きますが、十五日の私たちの出番を作って下さよ」
「皆に働いて貰うよ」
品川宿当番に当たった茂吉と次郎は後ろ髪を引かれながら出て行った。

「先ず、昨日までの調べで、しのぶの裏店には他国者が十五人、しのぶの中に二人居ることが賄いの女から聞きだしました。他にしのぶには亥蔵が居ますが子分のことが全く分かって居ません。今日明日中に人数、居場所を調べて下さい」と兵庫が頼んだ。
「それは、私たちでします」と勇三がくじを引いた。
「次郎さんが、居ませんね。何方か一人・・」
「私が」と久六が手を上げた。
こうして、勇三、平次、福助、久六の四人が出て行った。

 少しばかり間が空き
「当日の得物は何を使いましょうか」
「六尺にさす股も用意しますが、短い物の方が使い易いでしょう。 
「寝込みを襲うので相手も大した抵抗は出来ないでしょう。手加減無しで叩ける竹刀にしませんか」
「その方が良い。大怪我をさせると牢まで運ぶのに戸板に乗せなければならなくなるぞ」
「少し物足りないが、わしらもひどい目に遭わずにここに居るのだ。一歩違って居れば牢に送られるところだったのだからな」富に覚えのあるものばかりで頷いた。
「此度は捕らえた者たちは、全員裁きに場に座らせます。養育所の子供たちにも学ばせなければならないことですから」

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Posted on 2019/02/17 Sun. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第118話 火事場泥(その13)】 

 大二郎が空荷を担いで出て行くと矢五郎が
「長屋の十五人は相手にせずに亥蔵と頭分の二人を取り押さえるのが良さそうだが」
「賄いの女たちは通いですから、仕事が終われば裏口から帰るでしょう。中に残る者が内側から錠を掛けない限り侵入できますね」
「早朝に賄いの女が来た時に中の錠を外す者は居ないとわしは思う。要するに鍵は掛けられて居ない。そもそも亥蔵の家に盗人が入ることなど考えて居ないのではないか」
「裏店の木戸もしっかりとは閉められて居ないでしょうね」
「楽観的な見通しだが、未だ時は在るので事前に確かめさせましょう」
「次に、近くにこちらが潜む所を確保しないと・・・」
「幡随院門前町の裏店を使えば何とか成らないですか」
「あそこは使えるが、池之端まで少し遠いな」と矢五郎が渋った。
「今日、下谷町二丁目の自身番に行って来ましたが使わせて貰えますかね」
「使わせては貰えるが、不自由になるかもしれぬな」
「まさか流れ星の話は出来ませんね」
「その辺は、お触れが出てからだな」
「もう少し思って居ることを話して下さい」
「町に治安維持のために今までより積極的に取り組めと云うお触れがでると思われるので、自警団を組みその中に流れ星を潜ませることは出来る」と矢五郎が思って居ることを話した。
「面白そうですが、もし町に役人が居ない状態で賊を捕えた時、賊を牢屋敷まで送ることが出来ますか」
「重罪犯なら、奉行所も直ぐにでも応じてくれるだろうが、入牢(じゅろう)の調べ書きを整えないと牢役人が受け入れてくれないからな」
と、言いながら矢五郎は意味ありげに兵庫を見た。
「私の勘違いですといけませんので確かめますが、矢五郎さん、奉行所から依頼が在れば、昔取った杵柄で調べ書きを作成して頂けると云うことで構いませんね」
お互いに困って居るのだから昔のことを水に流すことに躊躇いはない」
水に流すとは、中川彦四郎が奉行所同心のお役を辞めた時に生じたわだかまりのことである。
「分かりました。これから八丁堀に行ってきます」
兵庫が腰を上げようとした時、戸が開き見回りに出ていた勇三ら四人が戻って来た。
「皆さん、新門の縄張りは手あたり次第荒らされて居ます。近い内に血の雨が降りますよ」
と勇三が言った。
「鐘巻さん、新門が動く前にこちらで片付けた方が良さそうだ。急いで十手を二つ預かって来て下さい」
「分かりました。だれか神田庵に戻るのが少し遅れると知らせておいて下さい」

 兵庫が八丁堀の実家鐘巻家に入った時、目論見通り既に夕食が終わった後だった。
主の部屋に兵庫と隠居の多門が集まった。
「先ずは浅草の現状を申し上げます。浅草の治安は新門が東海道へ出払って居ること、また久坂殿も品川宿に出張り不在が続くことを良いことに、他国から来た者たちに荒らされて居ます。近々、お触れが出ると伺って居ますが、それに合わせ賊を捕える算段をしていますが、何分にもその権限が定かでは御座いません。そこで、中川親子に十手をお預け頂ければ養育所の者たちで自警団を組み、新門が戻る前に賊どもを一網打尽にして見せます。遅れますと、新門も黙ってはおられませんので血の雨が降ることになります。それは幕府に助力する新門に汚点を与えることと成り、後々のことを考えると得策とは思えません。どうか早急に久坂殿留守中の守りを中川親子に申しつけ下さい」
「治安の乱れについては、奉行所内でもどうにかせねばと評定しているが、人手については無い袖は振れず、お触を出すに留まって居たのだ。有り難い話だ。さっそくお奉行に話してくる。ところで相手が何人で、兵庫、お前の方は何人だ」
「今分かって居る他国から来た者たちは十七人ですがこれを呼び集めたやくざ者が居ます。そのやくざ者の子分が何人いるかは今分かりません。それに立ち向かう者としてこちらで集められるのは、侍だけでも二十人はいます。勿論、ごつい男たちもその数に勝るだけ居ますので、数は足りています」
「そんなに居るのか」
「今年に成ってからも、異国船のお陰で十人以上を仲間に加えましたので、賊に大怪我をさせることなく捕らえられると考えて居ます」
「分った。お奉行との話の是非は明日にでも駒形の養育所に届ける」
「有り難うございます」

 兵庫は兄との話を、帰路、山中碁四郎と内藤虎之助に告げ、また品川からの情報を聞き神田庵に戻った。  

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Posted on 2019/02/16 Sat. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第118話 火事場泥(その12)】 

 その日の午後、天秤棒の前後に荷を下げた棒手振りが池之端の出会い茶屋の裏店に入って行った。
聖天町を拠点にしている棒手振り仲間の一人大二郎だった。
この裏店の出入り口は茶屋の脇にある木戸の奥、茶屋の奥行と同じ敷地の中に五軒長屋、井戸、厠などが設けられていた。その奥の井戸近くに茶屋の勝手口があった。
その勝手口から出て来た女に、
「青物、魚、乾物、雑貨などご要望に合わせお持ち致しますが、何か足らない物は御座いませんか」と声を掛けた。
「ま~珍しい。ここに棒手振りさんが来るなんて、何でも頼めるの」
「頼めますが、互いに信用できないと、滅多に売れない物、高価な物は仕入れられません。日々の売り上げを次の仕入れに使いますので、私たちにとって金の流れが止まるのは禁物なのです」
「よく分かりますよ。見たいので持って来た荷を広げて貰えますか」
「有り難うございます」
大二郎は多くの荷を運べるように三段に重ねられ、高くなった竹籠を前後に下げていた。
荷を下ろすと大二郎は出て来た女たちの前に六つの竹籠を広げた。
「沢庵や味噌まで、その徳利は油、醤油、お酒の何ですか」
「こちら様はお酒が好きだと伺って居ますので新春絞りの酒を一升持って来ました。注文いただければ醤油、酢、てんぷら油などもお持ちしますが、重たいので注文を頂くのが前提でございます」
「みんなどうする」
「有り難うございます。勉強させて頂きます」
大二郎に値段を聞いた女たちは、女たちが普段支払う値段より安いのに驚いた。
「無理にしなくても良いのですよ」と女の方が心配する様子を見せた。
「お近づきの印です」
 こうしてかなりの物を売ることが出来た。
「こちらには、どのくらいの頻度で何を持って参れば宜しいでしょうか」
出来れば毎日来て頂きたいですね。それと魚は見栄えの良いものも、お願いします。陽気が良くなると、お客様も増えるのです。お酒も欠かさずお願いします」
「そうでした。私はいつもは裏店の方々を得意先にしているものですから、イワシや干物が多くなります。そう言えば裏店からお一人も姿を見せませんが、皆さんがお暮しですか」
「いいえ、裏には男が十五人も、お偉いさんの二人はこちらの部屋で寝ていますよ。私たちは通いですよ」
「良かった、裏に声を掛けなくて」
「もし変なことが在ったら、こちらへの届け物と言って下さい」
「分かりました。それと、毎日のこととなると代わりの者が参ることも在ります。私は大二郎と申しまが大二郎の代わりと名乗りますので、私同様にお願い致します」

 売れ残った荷を担いだ大二郎は聖天町には戻らず駒形に立ち寄った。
そこには養育所三役の鐘巻、山中、内藤の他に中川矢五郎が居た。
「先生、池之端に行って参りました。売れ残り物を置いて来ますのでちょっと待ってください」
 荷を勝手まで運び、下ろした大二郎が帳場に戻って来た。
「大二郎さん、ご苦労様でした。何か得られましたか」
「役に立つかは判りませんが、裏の五軒長屋には十五人、偉いのが店の方に二人居るそうです。賄いの女は三人顔を見せましたが通いだそうです」
「役に立つ情報です。これ以上のことを調べ上げるのは難しいでしょうが、今後も棒手振り稼業は出来そうですか」
「はい、気に入られました。陽気が良くなると客が増えるそうで、毎日、値の張る魚を持って来てくれと頼まれました。酒も持って来るように頼まれました」
「碁四郎さん、浮橋でも客が増えて居ますか」
「言われてみれば・・・お互いに身体が冷えていては嫌なんでしょうね。万丸も千丸も生まれる十月十日前は陽気が良かったですね」
話声が奥にも届いたのか、奥からも笑い声が聞こえて来た。
「それでは大二郎さん、明日以降もよろしく頼みます」
「はい、結構な上客ですから、続けたいと思って居ます」

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Posted on 2019/02/15 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第118話 火事場泥(その11)】 

 入れ替わるように兵庫が駒形に顔を見せた。
「お触れは出た様ですか」
「まだ届いて居ません」
「それでは、池之端まで様子を見に行って来ます」
「あそこには捕らえた男が居るのではありませんか。居れば鐘巻さんは見とがめられ後々触りと成りませんか」
「その懸念は在りますが、あの二人、勝次と進平と名乗ったそうですが根っからの悪党ではなさそうでした」
「乱暴もせずに解き放ってやった二人がどのように振る舞うか見るのもまた面白いかもしれませんね」

 駒形の養育所を出た兵庫は自身番に寄ってみた。
そこには勇三らが居た。
「良かった。尋ねたいことが在ります」
「先ず、池之端の裏店に浅草を荒らした者たちが潜んで居ると云う話ですが、十数人が一度に住むことが出来るのですか」
「入って行くのと、出て行くのを見て居ますので済んで居ることは間違いありません」と福助が応えた。
「先生、あそこは加賀火消崩れで臥(が)煙(えん)の亥蔵と云う者の縄張りです。詳しいことは以前一緒に(56話面影)仕事をした勘助が下谷町二丁目の自身番に居ますので聞いて下さい」と勇三が言った。
「そうさせて貰います」

 暫く歩いて兵庫は下谷町二丁目の自身番に入った。
「鐘巻様」幸運にも兵庫は尋ねて行った勘助に迎えられた。
「勘助さん。臥煙(がえん)の亥蔵のことについて伺いに参りました」
「外に出ましょう」
 二人は暫くして広小路に出たが、池之端には向かわずに黒門前に立つ高札に歩み寄っていった。
兵庫と勘助は自身番を出た時から話を始めていた。
それで分かったことはあの裏店にはまともな者は居ないということと。
住人の人数は五軒の棟割り長屋が一棟、建って居ること。どの間取りも九尺二間と狭いので上納金稼ぎをしている者たちだけでも狭いくらい。
ただし、裏長屋と表店の亥蔵うが営む出会い茶屋・しのぶと行き来ができるので、頭分は表店に居ることも考えられるということだった。
「そもそも他国者があのねぐらを探すのは容易ではないですよ。亥蔵は新門の縄張りを狙って居ましたから、亥蔵が悪党たちを呼び集め裏店に入れたのではありませんか」
「なるほど、そう考えれば、理に適っていますね。知り合いの棒手振りが居ますので探らせます。どうもお手数をお掛けしました。ちょっと湯島天神を御参りしてきます」

 兵庫は日焼けした高札を見ることなく、池之端に向かった。
出会い茶屋・しのぶの前を通り過ぎ、暫く歩いて湯島天神には寄らずに戻り、聖天町の仕舞屋に入った
 仕舞屋とは以前商家だった家だが今は商いをしていない家のことであります。
この仕舞屋は造りと残されている備品などから飲食業か二階に部屋も有ることから旅籠も営めそうである。
そしてここを任されているのが竜三郎と妻のおときである。
その竜三郎とおときは、以前入谷で飯屋を商い、旅籠への段取りを終えたところで店を以前の持ち主である繁蔵に返しここ聖天町に移って来ていた。
 繁蔵に返した店は近くの鬼子母神にちなんで“ははこ屋”の屋号で飯屋と旅籠を始めている。店を手伝うのは繁蔵の元子分三人とその妻に成った女三人でなんとかやって居る。

 入谷の店を手放した竜三郎とおたきはこの仕舞屋を店に再生させることを任されていた。
竜三郎とすればおたきの望みを叶えさせたいのだが、悩みがあった。
それはこの仕舞屋には十人もの大の男の先住者が居たことだった。
男たちはそれぞれ賄い、大工、髪結い、棒手振りなどの修行中だが、男たちにとってここは仕事場へ向かう拠点となって居て追い出す訳にはいかないのだ。

 入って来た兵庫を見て留守番の竜三郎が、
「先生、何でもやりますよ」
「昨日捕らえた者とその仲間十人以上が池之端の出会い茶屋・しのぶの裏店に潜んで居ます。茶屋の主は臥煙の亥蔵と呼ばれるやくざ者で、裏店に悪党を集めた張本人ではないかと思われます。そこに棒手振りを送り探って貰いたいのです。尚、裏店が茶屋の勝手口にもなって居るので、むしろ茶屋の探りだと思って頼みます」
「分かりました。午後から探らせます」
「頼みます」

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Posted on 2019/02/14 Thu. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

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