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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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 日本一長い時代小説を目指して
ちなみに日ほ本一長い歴史小説と言われているのは、山岡荘八先生の「徳川家康」で、四百字の原稿用紙で17、482枚。
文字数は単純計算すると6、992、800字です。
鐘巻兵庫98話終了時点で約269万文字ですから、今後年55万文字のペースで書くと、目標達成は7年10ヶ月後、私が82歳を迎えた頃でしょうか。
そこまで長生きできれば良いのですが。

鐘巻兵庫無頼控え ←連載中
 
湯上り侍無頼控え ←連載終了

駄文創作の徒然 ←たま~に
小説を書くことで体験する事柄を綴ります。 

馬鹿な話 ←たま~に
日々思いついた身近な題材を選び、少の偏見を込め綴ります。

鼻歌 100曲作りました。興味無くても聞いてください。
      珠玉の鼻歌100曲のメドレー

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Posted on 2031/04/30 Wed. 09:34 [edit]

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【鐘巻兵庫 第100話 共喰い(その6)】 

 勝五郎が日光街道を北へ帰って行ってから暫くすると、千疋(せんびき)屋から一人、十兵衛が出て来た。十兵衛は迷うことなく道を斜めに横切りながら茶店にやって来た。
「あれ? 皆さんは」
「三人は、勝五郎の後をついて行きました」
「仕事にあり付こうと思って居るんですかい」
「勝五郎の仕事はもうやりたく無いです。次にどんな悪さを企んでいるのか見に行ったのですよ。十兵衛さん、苦々しい顔をしていますが、無理無体を言われたようですね」
「ああ、勝五郎はわしを子分としか見て居ない。今までは借りがあったので我慢してきたが、奴の尻拭いをしたから今からは対等だ」
「尻拭いさせられたのですか」
「今回のことはわしが企てたことだそうだ」
「なぜそうなったのですか。わしら五人を雇ったのは勝五郎で、十兵衛さんはわしらに鐘巻兵庫が誰かを教える役目をしただけなのに」
「捕らえられてしまい、正直に言えばよかったものを、わしは勝五郎の名を出さず自分の企みだったことにした。これを勝五郎が気に入ったのだろう。捕まったわしの不手際が一番悪いと言い張ったよ」
「何も弁解をしなかったのか」
「したよ。捕らえられたのは不手際と云えば不手際に違いない。しかし、同時に皆さんら五人も捕らえられていたがこれはわしの不手際ではないとね。捕らえられたわしは、仁義を貫き鐘巻殿を襲わせたのは勝五郎であることは話さず私が引き受けたのだ。もし、わしが捕らえられずに戻って居たら、捕らえられた皆さんが真実を話しただろうと弁解をしてみたが、皆さんが勝五郎を売るはずがないと怒り、聞き入れる様子を見せなかった。だから不満だが責任を引き受けたのだ」
「勝五郎は思った以上にごつい男だな。わしらは金を得るため、生きるために人殺しを請け負った。生きるためなら勝五郎に頼まれたと真実を言うよ」
「今思えばわしの不手際は皆さんの案内を引き受けたことだった。事が失敗したのだから得るものが無いのは仕方がないが、事が成就したとしても何も得ることは無かっただろう。それが分かったのが今回の収穫だった」
 十兵衛の話をひとまず聞き終わると、額に包帯をした浪人が
「十兵衛さん、ところで聞きたいのだが、潜んでいるわしらに合図をするのが遅れたのではないか」
「それは後詰をされて居た方が戻ったら確かめて欲しいのですが、私が脇差を抜き合図をした時、一番早く動いたのは鐘巻様でした。皆さんとすれ違った時、歩いてくるはずの鐘巻様は走っていたでしょう。私の合図を鐘巻様も見て、狙われているのに気づき、前を塞がれる前に走り抜けたのだと思って居るのですが」
「いや、疑って済まなかった。あの後、鐘巻殿は我らを誘い、気が付いたら逆に挟み撃ちにされていた」
「お陰で生きて帰れた訳だ」と相棒が笑った。
「それも相手が、わしらより一枚も二枚も上だったお陰だ」
「わしらは、数日の内に江戸に戻り、見聞きしたことを土産に鐘巻殿に改めて許しを請い、お仲間に加えてもらうつもりです。わしはここに残る十兵衛殿が心配だ」
「そう思いますか。まともな出入りでは勝てない相手だからな・・・」
「勝五郎と取り交わしたという念書のことですが、不慮の際には相手の財産を引き継ぐと云う事は真実ですか」
「はい、噓は申しておりません」
「勝五郎は恩ある鐘巻殿をわしらに狙わせた。十兵衛殿が兄弟分の勝五郎を疎ましく感じるのなら、きっと勝五郎も十兵衛殿をと思うはずです。まともに戦えないのなら、勝五郎のような手を先に使ったら如何ですか」
「手伝って頂けますか」
「私たち五人は、鐘巻殿の弟子もしくは雇人になるつもりです。そのためには人を殺めることは避けなければならないと教えられました。ですから、勝五郎を倒すことは容易(たやす)いことですが、手伝うことは出来ません」
「教えられた、誰に?」
「もう直ぐここに戻ってきます」

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Posted on 2017/08/19 Sat. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第100話 共喰い(その5)】 

 茶店はそれほど広くはない。浪人たちの話は奥に潜んだ弥一にも届いて居た。
浪人たちの考えを知った弥一は、茶を淹れた土瓶を下げて浪人たちに近づいた。
「お茶をお注ぎいたします」と五人を回った。
しかし、浪人たちは弥一に気が付かなかった。
それどころか、浪人の一人が
「おい、この宿場で一番安い宿屋はどこだ」と尋ねて来た。
「宿場には決まりが在りますから、格付けが同じなら似たようなものですよ。もしここで良ければ布団は有りませんが」と云い、諭吉を見ると頷いた。
「一人素泊まりで十文で結構です」と弥一はつづけた。
「寒そうだな」
「とっつあん、莚(むしろ)が五枚ありますか」
「在るよ。それでも寒ければ、蓑(みの)を貸しますよ」
「よし、決めた。泊まらせてもらおう」
「それでは、夕飯ですが、温かい飯に干物を焼いた物、味噌汁と新香付きで六十文で如何ですか」
「六十文は高いのではないか」
「高いと思うのは御尤もですが、これでも私は先日まで、知る人ぞ知る押上の飯屋で働いて居ましたから」と云い、浪人五人を見回した。
押上と聞き、浪人たちの記憶が蘇った。
「お主・・・やっぱり、あそこで見かけた男か」
「やっと、気が付きましたか」
「ここに居ると云う事は十兵衛を見張って居るのか」
「はい、それと旦那方もです。ただ、鐘巻様を恨んでいないお話を伺い安堵しています。そこで一言、言わせて貰っても宜しいですか」
「何だ」
「もし、鐘巻様の所で養育所の一員として仕事をしたいのでしたら、決して人を殺めないことです。やむを得ない場合のことですが、先ずは逃げることを考えて下さい。次に相手より先に抜かないこと。そのためには証人が居る所で戦うことに成ります。そして喧嘩ではなく自衛のためで在ることを証言して貰う事です」
「話は分かるので努力はするが、町人は触らぬ神に祟りなしを決め込み、証言して貰えぬからな」
「その通りです。ですから日ごろから言動に気を配って下さい。これが数知れない人を斬ったと言われる鐘巻様が咎を受けない理由だそうですから」
「そう言えば、確かに鐘巻殿は誰にでも言葉遣いが丁寧だったな。弥一・・・さん」
「鐘巻様は大人に対しては誰でもさん付けで呼びます。ですから例外的に“甚八郎”と呼び捨てされる根津甚八郎様を羨ましがる者が多いのです」
「だそうだ、我々には直ぐには出来ぬ事だがな。出来ることは、夕飯を頼んで構わぬか」
「頼む」「わしもだ」と全員が弥一の夕飯を食うことに成った。
「諭吉さん、干物は在りますか」
「ない、米もな」
「と云う事で、これから仕入れに行って来ますので、餅代と合わせて百文、お願いします」
「おい、旅籠に泊まった方が安いような気がするが気のせいか」
「その様な気もするが、良い話も聞かせて貰ったからな」と渋る様子を見せずに金を出した。
 弥一は五人から百文ずつ集めて、
「諭吉さん、この金全部仕入れに使っても構わないか」
「構わないが、わしも夕飯を食いたいのだが六〇文払わねば駄目か」
「それはいいですが、裏に鶏が居ましたが、雄の年寄りの方を晩飯と明日の朝の膳に乗せたいのですが、構いませんか」
「いいよ、雄の山羊も余っているが・・・」
「あれは、一貫文で婿にするので譲って下さい」
「嫁はどこに居るのだ」
「江戸は向島に母と子が居るのですが、子も大きくなってきているので、そろそろ次の子を作らせ、人間の赤子が養育所に来ても育てられるように乳を確保したいのです」
「それだったら、金は要らないよ」
「有り難うございます。江戸に戻る時連れて帰ります」
 弥一は台所で、足らないものを確かめ、天秤にぶら下げた大笊(ざる)に買った物を納める入れ物を乗せ、町に買い物に出て行った。
一方、浪人たちは千疋屋から勝五郎が出て来るのを待って居た。
そして出て来ると、少しの間を取り三人がついて行った。
浪人たちは弥一の任務が十兵衛を見届けることと聞いて居たため、二人を残し三人は勝五郎の動向を見届けることにしたのだ。
当然のことだが、浪人五人が茶店に居ることは,子飼いの者から十兵衛にも勝五郎にも知らされていた。

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Posted on 2017/08/18 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第100話 共喰い(その4)】 

 浪人たちの話を聞き、廊下に控えていた勝五郎の子分たちが気色ばんだ。
だが、それを制する様に勝五郎が、
「先生方には申し訳なかった。鐘巻兵庫とその仲間の強いことは浅草に住む者、特に悪党仲間で知らぬ者は居ないと云っても過言ではないそうです。ただ、強いだけなら良いのですが、街の者たちが頼りにしているのです。浅草で顔を売ろうとした者たち、それを手助けしようとしたものたち、総勢三十名近くがこの月に入ってから鐘巻兵庫の軍門に下って居るのです」
「その軍門に下った者が、わしらが連れ込まれた道場の木材を運び建設の手助けをしたのですよ」と十兵衛が付け加えた。
「わしも十兵衛も鐘巻兵庫には過去に助けられた恩は在っても恨みは全くない。ただこっちはやくざ、相手は真反対の仕事をしている集まりだ。離れている時は良かったのだが、浅草にわしらが入れそうな隙間が出来ているのを知ると、越谷や草加くんだりから浅草で顔を売りたくなった訳だ。恨みはないが邪魔なのだよ。鐘巻兵庫が」
「話は分かりました。ただ、今の話を聞いても仕事は請け負ったと思う。金が欲しかったからな。だが、残りの金は諦めるよ。話は信じないが身をもって確かめたからな」と額の包帯を触った。
「先生方には、こちらも同じ仕事を頼むつもりは御座いません。お引き取り頂いて結構です」
「力に成れずに申し分けなかった」
浪人たちは部屋から出て行った。

 茶店番を、金を払ってまでしていた弥一が千疋屋から出て来た浪人たちを見た。浪人たちは街道の北や南を見ていたが、決まらないのか一人が茶店を指差した。それには皆が同意したのかやって来た。
 弥一は昨夕、逃げる十兵衛を常吉や乙次郎と追いかけ、捕らえ戻って来た時、浪人たちに顔を見られている恐れがあった。
「諭吉さん」と茶店の主を呼びながら、奥へ行き、出て来た諭吉に、
「済みません知り合いの浪人が来ます。顔を合わせたくないのでお願いします」
「分かった。茶を淹れておいてくれ」
やって来た浪人の一人が、
「親父、腹持ちの良いものを食わせてくれ」
「有り難うございます。餅でも焼きましょうか」
「大きさはどのくらいだ」
「一つ半合で、十文で御座います」
「それでは一人四つに新香を頼む。焼けた順に持って来てくれ、いや寒いので、自分たちで焼くので七輪を持って来てくれ。」
「分かりました。お上がりに成って、少々お待ちください」

 板場に上がった浪人たちは七輪を囲み、餅を焼きながら話し始めた。
「旨い話だと思い飛びついたが、とんでもない相手だった。命拾いしたよ」
「考えてみれば、鐘巻兵庫はわしの命の恩人だよ。重ねの厚い刀が額で止まって居るのを見た時はお終いと思ったが、刀を納めてくれた」
「わしの命の恩人は坂崎とか言ったな。動けなかったよ」
「お二人の傷の手当ても堂に行ったものでしたよ」
「他に中川彦四郎と云う生き残りも居た。とんでもない奴らを相手にしたということだな」
「皆、袖すり合うも他生の縁。こうして会い死線も見た。再度江戸に参らぬか」
「何をしに」
「先ず、やくざ者も離れたがっているここに居ても、食っていけぬだろう。江戸に行けば外聞さえ気にしなければ、食っていく道はある。だがわしはあの若い鐘巻兵庫に弟子入りするつもりだが」
「それが出来るのなら・・わしも」
「わしも江戸に行くつもりだが、勝五郎が今後どのように動くか気に成る。そもそも此度の悪党は我々を雇った勝五郎だ。十兵衛は鐘巻兵庫の顔を知る者として我々に付き添わされた者だ。鐘巻殿は色々と十兵衛に質問していたが十兵衛の後ろに勝五郎が居ることを感付いて、鐘巻殿を狙った真の犯人ではない我々や十兵衛を許し解放したのだとわしは思う。わしは勝五郎が新たな悪だくみを企てるのを暫く見張りたいと思って居る」
「そうだな、鐘巻殿の所に行くのなら、何か土産話が在った方が良いだろう」
「幸い、勝五郎から貰ったお宝がある。贅沢しなければ草加と越谷を見張れるな」
五人は、どうやら草加や越谷に留まることにしたようだ。

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Posted on 2017/08/17 Thu. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第100話 共喰い(その3)】 

 草加宿で十兵衛の店を見張る弥一は、近くの茶店に入った。
やって来た年寄りに、
「塩むすびを頼みます」
そしてむすびを持って来た年寄りに
「あの暖簾を出していない店は何を商っているんだい?」
「千疋屋さんですか。何をやっても上手く行かないようで、今は顔を売って居ます」
「それは長く続いて居るのですか」
「二年ほど乗っ取られていたようですが、今年になって取り戻したようです」
「未だ一年足らずですか。それじゃ、子分衆も多くはなさそうですね」
「子分と云っても皆、それぞれが稼業を営んでいますから、普段は出入りして居る子飼いの者は数人ですよ」
「羽振りはどうですか」
「その子飼いの者がここにもやって来て、日当たり百文払えと云いやがった。そんなことをされたらこの宿場に残っている最後の茶店が無くなるぞと云ったら帰っていったよ。子が飢えて居る様じゃ親も見栄を張るので一杯でしょう」
「やくざ稼業も大変だな。ところで頼みが在る、日当たり百払うから店番させて貰えないか」
「千疋屋を見張るのか」
「そうだ」
「あんたも、顔を売る商売かい」
「いや、人様には万屋弥一と呼ばれているが、未だ顔を売る商いをしたことは無い」
「先払いにして貰えるか」
「構わないよ」
弥一は腰にぶら下げて居た巾着から百文差を取り出し渡した。

「それでは、一通りのことを教えるから頼むよ」
出せる食べ物の作り方と値段、草鞋や笠などの売り物と値段などを教えると
「それじゃ弥一さん、後は頼むよ。何か在ったら奥に居るから呼んで下さい」
「分かりました。お名前は」
「諭吉だよ」と奥に行く後ろ姿に
「諭吉さん、北から柄の悪い男たちが来ますが知り合いですか」
振り返った諭吉が男たちを見て、
「奴らは越谷宿で顔を売り、悪評を買っている勝五郎と子分どもだよ。近づいて良いことは無い。あまり見るな」と云い引っ込んでしまった。
 弥一は養育所では万屋の屋号に恥じず幅広く使われている存在でこれと云った役は無い。
そして今は、茶店の主に化け、千疋屋を見張ることに成った。
弥一は諭吉の“あまり見るな”の忠告を聞き入れ、茶店の影に入り目立たなく茶店に溶け込んだ。
やって来た勝五郎と子分が千疋屋に近づくと一人が抜け出て千疋屋の戸口から中に「姐さん」と声を掛けたのが聞こえて来た。出て来たのが十兵衛と女だった。
その十兵衛を見て、先頭を歩いて居た勝五郎が十兵衛を指さし
「どう成って居るんだ」の声を上げるのが聞こえて来た。
女が勝五郎に歩み寄り、その手を引き家の中に入れた。
勝五郎が越谷宿から朝早くわざわざやって来たと云う事は昨日の出来事が勝五郎に伝わっていると考えるのが素直だった。
ただ、出迎えに出た十兵衛を見た勝五郎が叫んだ「どう成って居るんだ」の言葉と、慌てて勝五郎を家の中に誘い入れる女の様子が何故か分からなかった。

 一方、千疋屋の中に入った勝五郎が女に向かって、
「お麦、聞いた話と違うがどう成って居るのだ」
「兄さん、話が長くなりそうなので上がって下さい」と促した。
 部屋に通された勝五郎はそこに五人の浪人が、その内二人は包帯で鉢巻きをして、控えていた。部屋に入れたのは他に見届け人として十兵衛と離れて行動した杉吉だった。
他は部屋の外の廊下に控えた。
「私が杉吉から聞いている話は、十兵衛以下六人が捕らえられ中之郷の屋敷内に連れ込まれたということだが、どうしてここに居るのだ」
「一時は殺されることを覚悟したが、解放された。解放されても信用できずにおびえて逃げたよ。吾妻橋を渡った所で五人の先生方に会えた時は嬉しかった、何故、ここに居られるのか、はっきり言って私にも良くわからない」と十兵衛が本音を吐露した。
「勝五郎さん、鐘巻殿は、襲った私の額を割る直前で止めったよ。そして刀を拭い先に鞘に納めた。私が今感じることは、わしら五人は鐘巻殿にとっては駄々をこねる子供同然で、本気で相手にするほどの相手ではなかったのだと思って居ます」
「そうは言いますが、先生は免許皆伝でしょう」
「そうだが、その腕を使ったのは今回が初めてで、それも罪もない者を殺すためだった。免許皆伝など何の役にも立たなかった。わしは命を懸けて戦ったつもりだが、役目を果たせなかった。申し訳ないがもう鐘巻殿に刃は向けられないので、下ろさせて貰います」
「私も」「わしも」と浪人全員が、再度の暗殺に出向くことを拒否した。

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Posted on 2017/08/16 Wed. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学