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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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 日本一長い時代小説を目指して
ちなみに日ほ本一長い歴史小説と言われているのは、山岡荘八先生の「徳川家康」で、四百字の原稿用紙で17、482枚。
文字数は単純計算すると6、992、800字です。
鐘巻兵庫192話終了時点で約587万文字ですから、今のペース年万文字で書くと、目標達成は2026年8月頃でしょうか。
そこまで長生きできれば良いのですが。

鐘巻兵庫無頼控え ←連載中
 
湯上り侍無頼控え ←連載終了

駄文創作の徒然 ←たま~に
小説を書くことで体験する事柄を綴ります。 

馬鹿な話 ←たま~に
日々思いついた身近な題材を選び、少の偏見を込め綴ります。

鼻歌 100曲作りました。興味無くても聞いてください。
      珠玉の鼻歌100曲のメドレー

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Posted on 2031/04/30 Wed. 09:34 [edit]

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【鐘巻兵庫 第195話 互助(その2)】 

 兵庫がから気合を定期的に飛ばす声は、昼に客に出す蕎麦を打つ八重樫にも聞こえていた。
その八重樫に蕎麦の汁等を作っている佐吉が
「その蕎麦を打ち終わったら、ヤットウの方に行って下さい。切るのは私でも出来ますので・・」
「分かりました」
八重樫の蕎麦を打つ手にさらに力が加わり、動かす手も心なしか早くなっていった。

 暫くして、剣術の支度をした八重樫の姿が道場に立ち、から気合ではない気合の応酬、竹刀の打ち合わせる音が蕎麦を切る佐助の耳にも届き始めた。
二人の稽古は小休止を挟みながら昼四つの鐘が鳴るまで続けられた。
だがこの間に、剣術の腕前判定を願い出る者が訪れることは無かったのだが、思わぬ客が姿を見せた。
 その客とは、元この家の主だった一哲で、一緒に来たのは養育所の大工衆を束ねる棟梁の彦次郎だった。
「仕事のことでしたら、内藤さんに頼んで下さい」
「はい、頼んで参りました」と一哲が応え、続けて
「お願いは新選組の皆様を引き続きお願いしたいのと、先日まで当方に居ました野口様と北里様を暫くお借りしたいのです」
「不器用な侍の出番が有るのですか」
「ご存知のことですが、手前どもの者たちはみな育ちがそだちで・・タガを緩めると・・・それと芝や品川の東海道筋では手に追えぬ者たちがやって来ますので・・・」
「事情は分かりました。お二方は現在笠原道場で修行中ですので、・・彦次郎さん平右衛門町の山中さんにお二方のことを頼んで下さい。私は暫くここを離れたくないので・・・」
「有り難うございます。これで常吉さんの知恵をお借りした継志館の子店が先ず品川で進められます」
「頑張って下さい。平右衛門町へ向かう前に佐吉さんの蕎麦でも食べて行って下さい」
「この匂い、素通りは出来ませんよ」

 それから時が流れ一哲と彦次郎は山中碁四郎を訪ね、事情をはなし笠原道場で修行中の野口と北里の品川の改築現場への派遣を頼んだ。
「話しは分かりましたが、出歩くことが好きな鐘巻さんが人を通して私に頼んだ訳が判りませんが、何か在りましたか」
「鐘巻様は“私は暫くここを離れたくないので”とは言ってはいました」と一哲
「何か離れたくない訳があるとすると困ったことになりますよ」 
「困ったことになる?とは・・」
「新選組を完璧に動かせるのは鐘巻さんしか居ないのです。ですから早く鐘巻さんが動けるようにしないと、彦次郎さん鐘巻さんの心配事が何か分かりませんか」
「心配事は防備が不完全と云うことで、街道沿いは犬も入れぬように板塀と小屋で囲いましたが」
「それでも心配だとすると守る人が不足と云うことに成りますが、鐘巻さん以外の守りは誰ですか」
「剣術の腕前判定で知り合った八重樫様でしょうか。私達が行った時は佐吉さんの蕎麦売りの手伝いをしていました。佐吉さんが蕎麦打ちの力が無くなったため、剣術修行と合わせて蕎麦打ちの修行して居るとのことでした」
「鐘巻さんが守りたいものは家族だ。押上の様に専任の保安方を置かねば外出できないのだろう」

Posted on 2024/04/21 Sun. 04:00 [edit]

【鐘巻兵庫 第195話 互助(その1)】 

 日光街道沿いにある浅草山谷町、解りやすく言うと小塚原の知置き場にごく近い町に鐘巻兵庫一家が引っ越して来たのは四月八日の午後だった。
そこには前の持ち主の一哲とその妻の他に手伝いのおハナ、さらにほとんどの荷造りを終えた大八車と引手が待っていた。
 この時残りの家財が譲渡され、手伝いのハナは鐘巻家で働くことになった。
麻布善福寺に向かう一哲一家を見送った後、兵庫は庭内を見回ったがその防備の貧弱さへの対応を迫られた。
取りあえず手配したのが昔から鐘巻家で働いて居て兵庫の良き理解者の佐助を養育所から呼び戻すと同時に、外周の垣根など補修などを彦次郎に頼んだ。
 さらに兵庫は剣術道場の看板を掲げることで、この家が盗みなどの標的にならないように努めた。
引っ越して来てから本日十九日までに、街道沿いの百姓囲いは家屋と塀を組み合わせた貧乏武家囲いに変えられた。
そして剣術の看板を掛けたことで、やって来た浪人八重樫保を雇いいれ、屋敷内に住まわせることで佐吉の蕎麦屋の手助け、剣術の手助け、さらに守りの一員に加えることが出来た。
これで兵庫は日中の短い時間なら家を空けることが出来るようになった。

 この日も兵庫は朝飯前の早朝稽古を養育所からやって来る子供三人、文吉、佐助、在吉および八重樫と行うことから始まった。
そしてその稽古は朝食を知らせる板木の音で終わった。
朝食はこの家に住む者たち全員が集まって行われる。

 ちなみに全員とは兵庫とその妻・志津、二人の子・千丸とつぼみ、鐘巻家本家からの付き合いの佐吉、手伝いの娘・ハナ、立場は使用人の浪人・八重樫の計七人である。

朝食が済むと志津とハナは片付けと昼の用意などの勝手仕事、兵庫は二人の子供たちのお守、佐吉と八重樫は昼前開店の蕎麦屋の準備と別れていった。

 暫く経って妻・志津が戻って来て子供を引き取って貰った兵庫は、表木戸に地天流剣術指南と剣術腕前判定所の看板を掛けてから庭に区画した青空道場に立ち、鍛錬棒を振り始め、時折気合を挙げることを繰り返した。
時折り気合を挙げるのは街道を行き来する者の目を道場方向に向けさせ木戸の掛けてある看板に目を向けさせ道場の存在を知らせるためである。
未だ引っ越したばかりで看板を出して間もないため、収益の源泉に成る門弟は居ない。
ただ、これまでに剣術腕前判定所の看板に興味を持った侍が数人現われ、腕前判定を願い出た者はいる。
 現在使用人として働いて居る八重樫も腕前判定に興味を持った浪人だが、支払うべき判定代の持ち合わせが無く、判定されるのでなく逆に判定してやるので判定代を支払えとの申し出を兵庫が受けたのだ。
立ち合いは兵庫勝ち、兵庫が
「判定は?」と尋ねた。
「ふそく」で御座います。
「何が不足で御座いますか」
「不足ではなく、私には測りきれない不測で御座る」
兵庫は立ち合いで非凡な腕前を、問答では機知を感じ取り、行く当てのない身である八重樫を身近に置くことにしたのだ。
 道場運営は道場主一人では無理ゆえ、心の何処かで八重樫を師範代とすることを考えていたのかも知れない。

Posted on 2024/04/20 Sat. 04:00 [edit]

【鐘巻兵庫 第194話 続・夏の虫(その22)】 

 根岸、沢登、小山が無事役目を済ませ戻って来たのは、そうなるよう剣術修行させ、逃げることを教えた兵庫にとっては喜ばしいことだった。
しかし、役目を邪魔した者のうち三人に傷を負わせてしまったことは、しかたがないことだが、尾を引きそうな気がした

 暫くして昼飯の板木が打たれた。
この日から昼の食事の座から佐吉、おハナ、八重樫の三人は蕎麦屋稼業が忙しいため抜けることになった。
そのため親子四人のだけの食事が始まり、そして終わった。
その後、昼の後片付けのため志津が働くため、子供二人の面倒を見る役目が兵庫に回って来た。
 そしてその役目も志津が戻って来て奪われ、兵庫は一人きりになり、己ともう一人の己が語り始め、最近のできごとを確かめ始めた。

 浅草山谷町に兵庫が引っ越すことに成ったのは本人の意志と云うより、兵庫が関わって来た者たちの意志のに流された結果だった。
流されたのはその流れを作ったのが兵庫自身だったからだ。
 その始まりは兵庫たちが養育所の運営に必要な資金を稼ぐために始めた料理屋・かすみに軒代をせびる者が来たことだった。

 兵庫たちが養育所の運営資金を稼ぐ方法には二通りのやり方が在った。
一つは地道な商いだが、これらの利益だけでは養育所の運営費は賄い切らないのが現状だった。
賄いきれないことで考えられる訳は養育所が抱える孤児たちの人数が多いことだが、今、増えることを制限する考えないため、足らない分は別の方法で稼がねばならなかった。
その別の方法とは私利私欲のために不法な方法で金を集めている悪党から、貯えた大金をこちらの正体を気付かれずに奪うことだった。
これまでに何度か成功しているが、盗人は己の財を盗まれても奉行所に訴えることはなく、事件にもならなかった。
ただ問題は標的とする悪党を探し出すことが難しいことだった。
 それが悪党の方から兵庫等が運営している料理屋に軒代をせびりに来たのだ。
この悪党のことを向こうから飛び込んできたので、季節も四月・夏に成ったことでもあり、“飛んで火にいる夏の虫”から“夏の虫”と呼ぶことになった。
夏の虫は政吉等により調べられていき、元締めとなる者が浅草山谷町の農家に住んで居ることが判り、農家の主・一哲に調べが及んで行った。  
そして一哲の配下には金貸が三店、軒代稼ぎが四店を営む者が居ることが判った。
こうして、押し込むとすれば一哲の家に成ることはほゞ決まったが、腕利きの侍が居ることで兵庫と山中碁四郎の二人で腕利き侍にあたることになり特別な稽古も行われた。
しかし、押し込む日が決まる前に一哲家内に変事が起こった。
それは防備も兼ねて、詰めていた腕利きの侍が約束されていた取り分を金箱から取り出し家を出ていってしまったのだ。
ただ、この変事の発見に養育所の関係者の働きがあり、一哲が養育所に興味を示し、兵庫も一哲と顔を合わせるまでになった。
兵庫は養育所をより良く理解してもらうため、一哲の仲間等が軒代稼ぎをして集めた金が最終的に集まる所、一哲宅を襲う計画を立てていたことも話した。
一哲は養育所の現実を確かめることも兼ね、仲間を養育所の施設に送り込んだ。
その仲間は霊岸島にある養育所の施設、継志館で商いの修行し、継志館のような店を持つ夢を持った。
これにより、これまで軒代稼ぎをしていた家からでは継志館に通えない者たちは、家を出てしまい空き家に成る。
その空き家に一哲が居を移すことを決めた。
それは浅草山谷町に居ては仲間との連絡が取れないことのほか、空き家にしておくと家が荒れることも危惧されたからだった。
そして一哲が出ることによって空き家に成る山谷町の家に、兵庫一家が入ることになった。
これまでの流れは、特に違和感はなかったが、己が一哲の家に引っ越すことに成るとは思っても居なかった。
もしかすると私は一哲にとっては夏の虫だったのかなと兵庫は思った。

第194話 続・夏の虫 完

Posted on 2024/04/19 Fri. 04:00 [edit]

【鐘巻兵庫 第194話 続・夏の虫(その21)】 

 三人の注文を取ったおハナが奥に戻り、佐吉と八重樫に
「お客様は根岸様、沢登様、小山様の御三方ですよ」
「本当か・・先生に知らせて来てくれ」
「分かりました」
 おハナから、知らせを受けた兵庫が稽古着姿草鞋履きで表街道に出て蕎麦屋の暖簾を潜った。
「無事戻れたようですね」と兵庫が話の口火を切った。
「先生、お蔭様で無事、御役目を果たすことが出来ました」
「もう少し、聞きたいのですが・・・」
「話せることは教え頂いたように少し遠回りですが見張りが居ない国境(くにざかい)より藩内に入り無事陣屋に到着出来ました。さすがに陣屋内では人目も多く何事も無く御役目を果せました」
「そで口の裂け目は、帰路ですか」
「気づかれましたか」
「話しの前に、先ずは蕎麦を平らげて下さい」
「それでは、食べたら道場の方へ行きますので、そちらでお待ちください」

 兵庫が母屋の縁側で待っていると食事を済ませた根岸ら三人がやって来た。
「そで口の裂け目ですが、仰せの通り帰路に、使いの用を果したと勘違いした私たちは往路では避けた国境へ帰路では向かったのです。その途中待ち伏せされました。考えてみれば私たちの用は、受け取った書状を持ち帰って果たしたことになるのでした」
「そこで立回りをしたわけか」
「そんなところです。白刃を抜き前方を塞ぐ六人に向かって、こちらも抜き突っ込むと、こちらの勢いに負けたのか怯みを見せました。その時の応接で三人に手傷を与え、囲みを破ることが出来、逃げることが出来ました。
「怪我人が出ましたか」
「死ぬほどの傷ではないと思うのですが・・恨が残りますかね」
「遺恨になるかもしれませんが、だれも手助けはしないでしょう。殿様の使者を襲ったのですからね」
「損な役回りをさせられたという事ですか」
「それが、禄を戴く代償というものです」
「皆さんは禄とは無縁ですか」
「先ほど蕎麦を食べたでしょう。八重樫さんの打った蕎麦ですよ。気楽な商いです」
「それでは、懐の者を殿様に届けに戻ることに致します。ここでの修行で命を救えたことに感謝いたします」
「ご苦労様でした」

Posted on 2024/04/18 Thu. 04:00 [edit]