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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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 日本一長い時代小説を目指して
ちなみに日ほ本一長い歴史小説と言われているのは、山岡荘八先生の「徳川家康」で、四百字の原稿用紙で17、482枚。
文字数は単純計算すると6、992、800字です。
鐘巻兵庫145話終了時点で約451万文字ですから、今のペース年55万文字で書くと、目標達成は2025年5月頃でしょうか。
そこまで長生きできれば良いのですが。

鐘巻兵庫無頼控え ←連載中
 
湯上り侍無頼控え ←連載終了

駄文創作の徒然 ←たま~に
小説を書くことで体験する事柄を綴ります。 

馬鹿な話 ←たま~に
日々思いついた身近な題材を選び、少の偏見を込め綴ります。

鼻歌 100曲作りました。興味無くても聞いてください。
      珠玉の鼻歌100曲のメドレー

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Posted on 2031/04/30 Wed. 09:34 [edit]

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【鐘巻兵庫 第148話 統合へ(その10)】 

 養育所に戻った兵庫は、移築が進む小屋を見ながら上屋に入り、自室に戻った。
兵庫の顔を見た妻の志津が、
「何か在りましたか?」と誘った。
「はい、子供たちを竜泉寺町に集める話ですが、出来れば今月中にでも終わらせることにしました」
「お風呂屋の二階も使うのですか」
「いいえ、あそこに子供たちは入れずに、なんとか納まる手が見付かりました」
「どのような?」
「今、中屋に移築中の家には三十二の寝床が用意されて居ますので、ここには中之郷から来る男の子たちを優先に住まわせようとかんがえました」
「それでは、押上から来る女の子はどこに?」
「下屋に入って貰い、そこに居る男の子で年長の者たち太物屋に移って貰う考えです。中之郷から来た者でも町や暮らしに成れている者を選び太物屋へ・・・」
「悪くありませんね。それでしたら雲海様には中屋に移って頂き、下屋には向島から平田様ご夫婦をお呼びしたら如何ですか」
「中屋には勉強をしなければならない者が多く集まりますので、妙案ですね」
「そう成ると、太物屋の今の住人に出て行って貰わないと動けませんね」
「その件は、内藤さんが動いてくれますが…太物屋に置く保安方は・・・」
「押上か中之郷から来て頂くことに成りそうですね」
「そうなりますね。これらのことを食事前にここの庭に集め話します」

 急遽、中屋と下屋の者たちが上屋の庭に集められた。
「未だ細かい日程は決まって居ませんが、今月中に養育所の全ての子供たちを竜泉寺町に移します。おおざっぱな、配置ですが女の子は上屋と下屋、男の子は中屋と中屋に移築中の家、それと外の太物屋にします。なお太物屋に入る者は町家暮らしに成れている駒形暮しの長い者の中から選びます。
「兄上、子供が居なくなった養育所はどうなるのですか」
「押上は今まで通り残し、十軒店の商いも続けます。本所方面へ行った時など使えます。向島も何か遊びに行った時など休憩に使えます。中之郷は養育所を支える商いの場所になります。将来、この中から中之郷で働く者も出て来るでしょう」
 この他にも兵庫と子供たちの間で問答が交わされていた。
その様子を雲海、田中親子、久保田夫妻、小野等大人が見ていた。
世の中では途中段階で下の者に話すことはまずない。
養育所では子供たちの発言も聞く。
それは子供たちのための養育所であり、自立心を高めるためにも、考えて居ることを話させることが必要だという考えに基づいているからだ。

質問が途絶えたところで、文吉が
「兄上、大人たちは忙しいので、押上からの引っ越しは私たちにさせて下さい」
「その仕事を取られると私のすることが無くなる恐れが在るのだが・・任さよう。ただし下屋の保安方として向島の平田殿ご夫妻が同道するので、揉め事には関わらないようにしなさい」
「心得ています」
「日取りが決まったら頼むので、それまで勉強して居なさい」
「はい」の声が共鳴した。

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Posted on 2021/03/01 Mon. 04:01 [edit]

【鐘巻兵庫 第148話 統合へ(その9)】 

 兵庫が持ち帰った青竹は、一人の大工により、所定の長さに切り揃えられた。
次に、半分に割られた。
さらに中節が削り取られていった。
他に一本ずつ屋根に乗せるのではなく六本まとめて屋根に乗せられるように竹同士を連結する穴が、割られた縁より少し内側に開けられた。
これは穴に紐を通し他の竹が離れないようにする工夫だった。
こうして使えなくなった竹の代替品が出来ていった。

 移築作業がよどみなく進められて行くのを見た兵庫は中屋を出て、“なんでもや”に内藤を訪ねた。
「鐘巻さんが来たと云う事は移築の仕事には、もう出番がないと云う事ですか」
「そんなところです」
「先日、奥様が中之郷から移る子供たちを太物屋と風呂屋の二階に住まわせれば、形の上で子供たちの竜泉寺町への統合が済みます。これには問題が生じるかもしれませんが、中之郷の離れなどをこちらに移築する作業に取り掛かれますので、これは決断ですね」
「子どたちを一日でも早く一か所に集める決断はして居るのですが、風呂屋にの二階は使わずに何とか出来そうな気がして来たのです」
「どの様な?」
「今、中屋に移設中の家は五部屋在ってその内の四部屋には二段床が四つ設けられて居て八人が一部屋に八人が泊れます。四部屋で三十二人が入れますので、中之郷の子供たち全員を入れられるのではないかと思ったのです」
「そうですね。中之郷の子どもは確か三十一人と預かっている元仲居の子が二人ですから何とか成りますね。そうなると、そこに入る予定だった女の子を太物屋に入れるのですか」
「いいえ、女の子は屋敷内に置き、代わりに古手の男の子たちを外に出そうと思うのです。古手の子は駒形時代に町家に住み、出入りして居たので慣れて居ますからね」
「それでしたら、進めても良いと思います。現在の住人には私の方から、なんでもや内の九尺二間に分散しては居るように言っておきます」
「それを待って、養育所の子供たちを太物屋に移し、押上の女の子たちを迎える事にします」
「その仕事も直ぐに終わってしまいますね」
「いざと云う時には草鞋造りが残って居ますよ」

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Posted on 2021/02/28 Sun. 04:01 [edit]

【鐘巻兵庫 第148話 統合へ(その8)】 

 養育所の統合に向けて、先ず、押上の子供たちの移動が行われた。
その翌日。二十一日の午前には向島の子供たちが、空いた押上の養育所に移動を始めた。
そこに、大工衆と鳶衆がやって来た。
目的は、子供たちが居なくなり空き家となった子供長屋を竜泉寺町に移築するため、取り壊しにやってきたのだ。
その準備のため、大八に積んできた丸太を使い、移築する子供長屋の周りの足場を作り始めると同時に、雨戸などの他に、部屋に後付けで取り付けた二段の棚(二段ベッドのようなもの)取り外しが行われ、庭に出され積まれていった。

 それが終わり、足場が出来ると家の取り壊しになった。
皆、既に同じような造りの家を竜泉寺町に建てており、壊す要領は解っていた。
元宮大工・彦次郎の指示で取り壊しを始めて行った。
 この解体、移築には他の大人たちに、復興の任を背負った内藤から声が掛かっていた。
これは大工衆と鳶衆には荷運びなどをさせないためだった。
兵庫が剣術の稽古を田中と小野に任せ、荷運びのため弥一、福助等と大八車を牽き、向島に着くと、押上からの手伝いに駆り出された山口と向島の村上茂三郎と平田実深が働いて居た。
「皆さん、遅れてすみません」
「先生、壊した順に積みますので、その順に下ろし混ざらないようにお願いします」
「あの様に下ろした順に運んだ先でも小山を造り並べれば良いのですね」
兵庫は取り壊し積み上げてある物を指さした。
「それで結構です」
 こうして兵庫たちは、この日三往復して運び終え己等の役割を終えた。

 二十二日は、朝飯前から竜泉寺町養育所の中屋に人が集まり、事前に縄張りを済ませた庭に足場を作り始めた。
 兵庫がそれを見て居ると、彦次郎がやって来た
「先生、屋根に使った竹ですが割れが入った仕舞った物が御座います。辰五郎さんの所に行き青竹を十本ほど貰って来て頂けませんか」
「分かりました飯を食べたら行って来ます」

 養育所が建てる小屋の殆どは瓦屋根ではなく、竹の半割を凹に並べた上に、逆向きの竹を乗せ崩れないように押さえた屋根で、軽く、柱なども細く出来るので費用節約が出来るため、採用して居るのだ。

 朝食後、兵庫と二郎は大八を牽き亀戸普門院脇で鍛冶屋を営んでいる辰五郎の所に行き、訳を言い青竹を切らして貰い、戻って来ると。既に家の組み上げ始まっていた。

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Posted on 2021/02/27 Sat. 04:01 [edit]

【鐘巻兵庫 第148話 統合へ(その7)】 

 午後の自由時間に男の子の多くが剣術を選び、いずみ湯の裏に新造した庭道場は人であふれた。
阿部家からはいつもの六人に加え、非番の時に時折来る山村と大崎も来ていた。
他に復興の手助けをしながら町の保安も見て居る、新藤栄二が顔を見せて居た。
どうやら得体のよく分からない腕利き小野豊蔵の話が広がった様だった。
その小野は、山中碁四郎などが用意無しで来た時使う防具を着け、昨日押上から移って来た今年六歳から八歳になった子供たちの打ち込みを受けていた。
遊びとしての剣術から抜け出せない者も居るが、八歳になった大助の打ち込みには驚きを見せて居た。
この稽古はほんの四半刻少々で、兵庫が
「大助、皆と、此の柵の内側を回って見て来なさい」
「はい、兄上」と云い、割り当てられた莚(むしろ)の上に防具などを置き、道場から離れていった。
 それを待って居たかのように、阿部家の家臣が進み出て、
「山村と申します。一手お相手お願いします」
「小野で御座います。こちらこそお願い致します」
 二人が向かい合うと、道場は二人だけに成った。
皆が、小野の腕前を見たかったのだ。
ほとんど動かない小野に見合っていた山村が打ち掛かった。
だが、その出鼻をつかれ、小手を打たれた。
二本目も同じだった。
ここで山村は頭を下げ引き下がった。
「観太さんは居るか」と小野が呼んだ。
「はい」と観太が進み出た。
「昨日の続きをせぬか」
「宜しくお願い致します」
 昨日は空腹に耐えかねた小野が腹ごしらえ願い出て立ち合いが流れてしまったのだが、一日経った今、小野の身体には生気が蘇り始めて居たのだ。
それでも小野は慎重に観太と向かい合った。
そうさせたのは少し前に稽古をした八歳の大助の打ち込みの巧みさだった。
幼さゆえに身体が未だ出来上がっておらず、手足腰に力強さと俊敏さに欠ける所がある。
しかし、観太は大助と比べれば身体がかなり出来上がっていたのだ。
更に小野はまだ身体が戻って居ないことを感じさせられて居たのだ。
それは、今、手にしている竹刀だった。
その竹刀は山中碁四郎が来た時に使う物で、重かったのだ。
それは昨日借りた兵庫の竹刀より僅かに長いが、目方はかなり重く、今の小野には持て余す物だったのだ。
「観太、すまぬ。未だ、駄目だ。私には、この竹刀、今の私には重すぎる。もう数日待ってくれぬか」
「それ、山中先生の同田貫ですからね。待ちます」
 こうして注目を集めていた小野が道場から引き下がり集団での稽古が戻った。
皆の視線を浴びていた小野だったが、今度は皆を見ることに成った。
小野は数人の光る腕達者を選び出していった。
しかし、その腕達者たちも兵庫と立ち会うと、その光を失うのだ。
兵庫の底知れぬ強さは、知らず知らずのうちに小野を養育所に縛りつけていった。

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Posted on 2021/02/26 Fri. 04:01 [edit]