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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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 日本一長い時代小説を目指して
ちなみに日ほ本一長い歴史小説と言われているのは、山岡荘八先生の「徳川家康」で、四百字の原稿用紙で17、482枚。
文字数は単純計算すると6、992、800字です。
鐘巻兵庫151話終了時点で約471万文字ですから、今のペース年55万文字で書くと、目標達成は2025年6月頃でしょうか。
そこまで長生きできれば良いのですが。

鐘巻兵庫無頼控え ←連載中
 
湯上り侍無頼控え ←連載終了

駄文創作の徒然 ←たま~に
小説を書くことで体験する事柄を綴ります。 

馬鹿な話 ←たま~に
日々思いついた身近な題材を選び、少の偏見を込め綴ります。

鼻歌 100曲作りました。興味無くても聞いてください。
      珠玉の鼻歌100曲のメドレー

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Posted on 2031/04/30 Wed. 09:34 [edit]

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【鐘巻兵庫 第159話 雨夜の品定め(その1)】 

 安政二年四月二十八日(1855-6-12)、目覚めた兵庫が何時ものように、子供たちが出した汚れ物を洗い、軒下に干し戻って来ると、志津が、
「雨がもう少し気を遣ってくれれば良いのですが・・」
「??どのように」
「出来れば昼間に降る分も夜中に降って貰えればと思うのですが」
「なるほど、そう成れば迷惑を被る者も減りますね」
「はい、せめてこの長雨の季節だけでも夜により多く降らせて頂ければ・・」
「雨を降らされる夜の神様が気を悪くしなければ良いのですが・・・」
「八百万の神様たちの利害がぶつかりますか???」
「その辺んことは無信心な私には何とも言えませんが、出掛ける時には小止みに成るように祈ることに致します」
「今日はお出かけですか」
「この長雨で人の動きも抑制されているでしょうから、大した話は届いて居ないでしょうが、朝飯前に駒形へと思っています」
「そうですね、でも届いているとすれば、旦那様の退屈しのぎになる様な話かもしれませんよ」
「それを願っては不謹慎です。でも何か良い話でも在れば出掛けた甲斐が在ると云えるのですが」
「良い話を楽しみに待っております」

 高下駄に蛇の目傘を差して兵庫は養育所を出た。
雨、朝も早いので物見遊山の者は一人として歩いてはいない。
泥跳ねを気にしながらも、歩いて居る者の足どりは早かった。
 駒形、“たちばな”の暖簾を出す料理屋、出入り口の引き戸は開放され、客の出入りを容易にしていた。
兵庫が入ると客が通り庭に据えたトーヘル(テーブル)を使い朝食を食べて居て、板の間に上がって食事する者は三人だけだった。
 と云うより板の間に上がるには汚れた足を拭きあがらねばならない面倒くささがあったため、使い慣れてきたオランダ渡りと称する土間に置かれた椅子にトーヘルを使う者が多いのだ。
その椅子席が塞がったため、板の間に上がらざるを得なかったのかもしれない。

「先生、旦那様がお待ちです。奥にどうぞ」
 通り庭を奥へ進むと、山崎の妻・志乃、預かり所のお岸が料理を作り、他にもみじ、いくえ、てまり、べに娘たちが奥と表を行き来しながら働いて居た。

 男主の山崎はたちばなの業務をする様子は見せて居なかった。
しかし、兵庫の姿を見ると、話が在りますので上がって下さいと、仕事を始めた。
「何ですか」部屋に上がった兵庫が尋ねた。
「昨日、久坂さんが参りまして、お願いをされました」
「聞かせて下さい」
「先ず、概要を云うと、ここの所江戸市中で特色ある押し込み被害が増えているので町の方々に注意するように伝えて欲しいという頼みです」
「特色ある押し込みについて話して下さい」
「一つ目ですが押し込みは雨の日の夜に行われること。二つ目は守りの強い大店ではなく小金持ちが狙われていること。三つ目は、被害の額が数両からこれまでの最大が八十両だそうで、これまでに総計三百両になっているそうです。この三つが特徴ですので、なんとか捕まえて欲しいとのことです。少ないかもしれないがと十両を置いて行きました」
「おびき寄せて掴まえろと云う事ですか」
「十両は百六十朱ですから、養育所が手数料取らなければましら達七人とあと数人を長雨が終わるまで使えます」
「この時期、自分の手当てだけでも稼いで貰えれば御の字です」
「金を受け取ってしまいましたので、後は宜しくお願いします」
「分かりました。早速持ち帰り今夜からでも動けるように段取りを考えます」

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Posted on 2021/09/22 Wed. 04:01 [edit]

【鐘巻兵庫 第158話 つれづれ(その21)】 

 町の者への将棋指南を済ませた兵庫が、次の客が来るまでと、再び三度、草鞋作りを始める支度をしていると、大工衆と鳶衆が
「先生、戻ります」
「折角の雨降りです。身体を休めておいて下さい」と返され戻っていった。
 そして、子供たちも
「兄上、戻ります」と云い、戻っていった。

 残ったのは町の若い衆で、空いた将棋盤に分かれ指導を受けた手順の習得を始めた。
それから暫くして雲海がやってきた。

 雲海は、養育所が一次お世話になった高田寺の住職だったのだが、大火の起きた日に寺内の塔頭の一つ昇龍院が不注意から出火したことで、本山から寺を追われ、後に縁のある養育所に落ち着いた和尚である。

「子供たちに話しを聞き、手持無沙汰なのでやって来ました」
「それでしたら、町のお方と遊ばれたら如何ですか」
「そう願いたいものだが・・・」
「町のお方、こちらは養育所の雲海さんです。相手をお願いできませんか。無料です」
「こちらに依存は在りませんが、宜しいのですか」
「遠慮するな。わしもヘボだ。勝手も自慢話は出来ない相手だ」
「私は正真正銘のヘボですから、勝てば自慢話をしてしまいますよ」
「それでは、相手をしてくれる者が居なく成らないように、頑張らねばいかんな」
「少してをにぃて下さい」
舌戦を交わしながら、和尚は空いた舌戦相手の前に座った。

 指し始めると雲海の口が止まった。
二十手ほど進んだところで、
「なかなかのものだな」と雲海が口を開いた。
「もう少し指せば、人が変わったようになりますので・・・」
 更に手が進み、町の者が考えて指したてを見て
「うむ・・これは鬼手か・・」
「いいえ、私の手です」
「一応只だから頂くことにするよ」
五段目に飛び出した桂馬を中段の飛車が払った。
「あ・あ・あ・あ・・・・・」
「参った!」
「数手前から本当に人が変わったな・・」
「はい、数手前からが私の実力です。それまでは鐘巻先生に教えて頂いた指し手です」
「なるほど、皆そうですか」
「はい、今ここに居るのは皆そうですが、私より覚えの良い者は少ないです。ここまで無事させたのが確認できました。有り難うございました」
 事情を知った雲海は、他の相手とも指し、駄目な手が出たのを咎めながら、その変化を選ばないように教えていった。

 更に時が経って、男がやって来た。
朝飯、昼飯を抜き、寝て居たのだが腹が空いたのでやって来たと仲間に話した。
そして、我が身の事情を語り終えると、
「少しは上手くなったか」
「ああ、わしらは昼前からここに居る。上手くなっているはずだ」
「よし、もう少し腹を空かせてから晩飯だ。誰でもいい相手に成れ」

 こうして始まった将棋は、早い手順で兵庫が教えたものと外れていった。
あとは実力の差、運不運で勝負は決まる。
結果は、昼前から来ていた者が勝ちを納めた。
「これまでに、お前に負けたことは無かった。これは腹を空かしていたためだろう。飯を食ったらもう一度相手をしろ」
「ああ、雨が降ったら此処にきている、いつでも相手をしてやるよ。おれはお前が惰眠をむさぼっている間に修行をしたのだ。簡単には負けねぇよ」
「何言ってやがる。将棋を教えたのはこの俺だ、そう簡単にまけるわけはねぇ。待って居ろ」

 この男、負けた悔しさと、空腹とで、少し早い夕飯を胃袋に流し込むように食べ戻ってきた。
再戦が始まると、この男、手を変えずに同じ道をたどり、悪くなったと感じたところで手を変えたが、駒損が大きくて挽回が出来ず負けに終わった。
「お前たち、あの坊様に教わったのか」
「ああ」
「坊様、明日雨が降ったら来ますので、私にも教えて下さい」
「雨が降ったらな」

 養育所の夕食を知らせる拍子木が打たれ、将棋道具は片付けられた。
兵庫は夕食後の片付けが終わると日記を書き始めた。
安政二年四月二十七日、今日も雨、特に用はなく昨日同様、集会所に赴き、つれづれの時の中に身を置き過ごす。
庭の木々の葉に当たる雨の音、明日も又、かくてありなん。

第158話 つれづれ 完

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Posted on 2021/09/21 Tue. 04:01 [edit]

【鐘巻兵庫 第158話 つれづれ(その20)】 

 集まった子供たちの好きな駒を聞き、子供たちを将棋の世界に誘い、それぞれの駒の動き方の復習をし終えた。
「駒の中で一番強いのは何かな?」
「飛車」「飛車と角」・・の返答が舞った。
「飛車と角のどちらが強いのかな? その訳は?」
「飛車」
「訳は」
「え~とね~、大兄上とは駒落ちで稽古しますが、皆が早く一枚落ちの飛車落ちまで上達したいというから・・」
「なるほど・・・もう少し駒の働きから考えることにするので、よく将棋盤見なさい」
 幼子たちの目が将棋盤に集まった
文吉は将棋盤の中央に飛車を置いて、
「飛車が動ける場所は何か所あるかな」
「十六」が連呼された。
「それではここに動かしたらどう成るかな」
と云いつつ、飛車をかどの隅に置き皆を見た。
「同じです」「十六です」が返って来た。
「それでは角の場合はどうかな」と盤の中央に置いた
少し遅れたが「十六」の返答がされた。
「それでは隅ではどうかな」
「あれ、八つに減っている」「本当だ」
「飛車は邪魔をする駒が無いと、盤上の何処に置いても十六か所に移動できますが、角は置き場所によっては十六か所から八か所迄変化します。この様に飛車の方が駒の働きが大きいのです。それでは次に進みましょう」

 子供が幼い子供たちに将棋を教えている。その近くで子供たちのやり取りを聞きながら将棋を指している町の男たちは、だんだん居づらくなって来た。
先ほどは兵庫の二十何手詰めを見せられ、今は己らの将棋とは全く違う、理屈だったやり方を聞かされている。
 雨の中帰り、夕食時にまた来るのは、わびし過ぎる。
朝飯と昼食を兼ねて食べ、将棋盤が置いてあったので、粋な計らいと思いつつ、居座っていたのだ。
「先生、中まで指して居てもただの時間つぶしです。何か得るものが欲しいのでご指導して頂けませんか。幸い、朝飯を一食抜きましたので、巾着が未だ膨らんで居ます」
「構いませんが、そちらの一面を子供たちのために空けて頂けませんか」
「全部空けます。私が負けるのを仲間が見たいでしょうから」
「文吉、その場を私に譲って下さい」
「はい、片付けますので少々お待ちください」
 それを見て町の者たちも
「わしらも片付けてお渡ししましょう」と盤上を片付けた」

 片付けが終わると、文吉が座布団を二枚持って来て置いた。
 兵庫が座に着くと相手もかしこまった。
「申し訳ありませんが、二十文の先払いでお願い致します」
「手渡しで宜しいでしょうか」
「構いませんよ」
 兵庫は四文銭五枚を受け取ると「確かに」と云い、巾着を出ししまった。
「正座は痺れて将棋には良くありませんので、胡坐(あぐら)にしましょう」と云い、自ら胡坐にし相手にも勧めた。

 互いに礼を交わしたところで、兵庫が、
「先ず、普段の要領であまり考えずに指し進めて下さい。形勢が傾いたところで、反省致しましょう」
「分かりました」

 最初に兵庫の手直しを受けた者は、相当な量の手直しを受け、駒組が出来上がるまでにほころびを見せない、一つの起こりやすい手順を何度か繰り返し指し、覚えさせられた。
「私が途中で指す手を変えれば、対応できないことは起こります。それが将棋の奥の深いところです。今日は皆さんも、この一つの手順を覚えて下さい。その上で、実戦ではどこかで手を変えこの手順に幅を持たせるようにして下さい」
「ご指導有り難うございました」

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Posted on 2021/09/20 Mon. 04:01 [edit]

【鐘巻兵庫 第158話 つれづれ(その19)】 

 雨に閉じ込められた者たちは兵庫に限らず何をしたものかと思う。
一人で楽しめる趣味を持って居る者なら何とかしのげるのだが、一人で居続けることが苦手な者は多い。
一人酒では四半刻(約30分)も飲めばわびしさに襲われかねないが、仲間で飲めば一刻(約2時間)もあっという間に・・・。

 なんでもやの集会所で行われた将棋の集いは、途中、見物客を増やして行った。
それは何もすること無く寝ていた町の独り者が空腹を満たすため昼飯を兼ねた朝飯を食いに来た後、将棋盤を囲む輪に加わっていたからだった。
 更に昼飯を伝える養育所の拍子木が打たれ兵庫等が居なくなった後も、将棋盤を囲う者が居たのだ。 

 昼食後兵庫が集会所に戻って来ると、兵庫が使っていた盤を除き、他の将棋盤は全て塞がっていた。
「先生、お待ちしていました」
「遅れてすみません」
「いいえ、それだけ考える時間を頂けました」と政吉が応えた。
 実は兵庫は政吉と将棋を指し進める中で兵庫から、
「指導対局ではなく、三番勝負にしませんか」と、話し掛け一局目は兵庫が勝ち、二局目の途中で昼食となり、指し掛けとなっていたのだ。

 対座した兵庫が、
「妙手が見付かりましたか」
「残念ながら見つかりませんので、最後のあがきをさせて頂きます」
「人ですから、間違いはします。最後の間違いをした者が負けるだけのことです。間違えないように指したいと思います」
「それでは、お願いしますと」
双方が頭を下げ手合いが再開した。
 それを待って居たかのように、鳶衆や大工衆が対局する二人の盤側に集まって来た。
さらにその動きが他の盤で指して居た者たちまで集めたのだ。
政吉が昼飯を挟んで考えた手を見た兵庫が
「やはり縛って来ましたか。受けが在りませんね」
「この手は読み筋でしたか」
「はい、しかし、私の詰み手順に読み抜けが無ければ良いのですが」
「こちらは詰んでいましたか。手数は?」
「二十七手詰みでしたが・・・」
「二十七手詰」と周りから声が挙がった。
 そして兵庫から王手がかけられ、政吉がそれに対処をしていった。
政吉の玉将の位置は左下から右へと動きながら中段近くまで上っていった。
そして二十一手目の王手を兵庫が掛けたところで、政吉が
「負けました。確かに二十七手詰めですね」
「最後まで見せて下さい」
周りの観戦者が頼んだ。
二十二手目から玉が詰む二十七手まで手順が紹介されると驚きの声が周りから挙がった。
「先生はどちらで将棋の修行を為されたのですか」
「子どもの頃、近くの寺の和尚の所に大橋某と云う将棋指しが来ていました。和尚より私の方が筋が良かったようです」
「負けたのに納得できました。二十文で一局させるのなら毎日お願いしたいですね」
「駄目ですよ、四半刻の線香一本代で終わる相手でないと、あそこの置いてある草鞋造りの方が稼げますので・・・」と隅に置いてある縄と出来上がっている草鞋を指さした。
 笑いが起こった。

 この日は兵庫との力の差を見せつけられた者たちは、兵庫に指南を受けるのを躊躇った。
仕方なく、兵庫は先ほど指さした縄を使い草鞋作りを始めようとした。
そこに子供たちの声がして、雨の中、文吉が男の子を連れやって来た。
 その時空いていた盤は兵庫が使っていた物だけだった。
「兄上、お借りします」
「どうぞ、文吉、今日は何を・・・」
「将棋を始めた子に、駒の働きを教えます」
「そうか懐かしいな」
「はい、私が習ってから二年が過ぎています」
 文吉は駒箱から王、飛車、角行、金将、銀将、桂馬、香車、歩の八つの駒を取り出し将棋盤の上に並べた。
「久助、好きな駒の動かし方を見せて下さい」
「はい、兄上」
久助は歩を掴み、将棋盤に置き直すと、一歩進めて見せた。
「久助、何故、歩が好きなのだ」
「小さくて、可愛いから。それと裏側に読めて書ける字が書いてあるから」
「そうか、その好きな駒が上手に使えるように成れば、将棋がうんと強くなるから頑張りなさい」
「はい。兄上」

 こうして文吉による将棋の指導が始められた。

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Posted on 2021/09/19 Sun. 04:01 [edit]