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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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 日本一長い時代小説を目指して
ちなみに日ほ本一長い歴史小説と言われているのは、山岡荘八先生の「徳川家康」で、四百字の原稿用紙で17、482枚。
文字数は単純計算すると6、992、800字です。
鐘巻兵庫103話終了時点で約296万文字ですから、今後年55万文字のペースで書くと、目標達成は7年4ヶ月後、私が82歳を迎える頃でしょうか。
そこまで長生きできれば良いのですが。

鐘巻兵庫無頼控え ←連載中
 
湯上り侍無頼控え ←連載終了

駄文創作の徒然 ←たま~に
小説を書くことで体験する事柄を綴ります。 

馬鹿な話 ←たま~に
日々思いついた身近な題材を選び、少の偏見を込め綴ります。

鼻歌 100曲作りました。興味無くても聞いてください。
      珠玉の鼻歌100曲のメドレー

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Posted on 2031/04/30 Wed. 09:34 [edit]

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【鐘巻兵庫 第106話 余波(その1)】 

 嘉永六年十月二十八日(1853-11-28)の未明、目覚め着替え始めた兵庫に、志津が、
「文吉がまだ戻って居ないようですが、何か不都合でもあったのでしょうか」
「在ったにしても知らせがありませんので、大したことではないでしょうが、志津を高田寺に送り届けてから行って見ます。 
「お願いします」

 文吉とは養育所の子だが剣術に秀でていて八丁堀の実家に預け、武者修行に出している。
そうなったいきさつは鐘巻本家から倅・幸太郎のおもり役を求められ、兵庫はその役を巳之吉に託した。しかし、巳之吉は優しすぎて相手より勝ろうとせず、我慢することが多かった。
そこで、兵庫は巳之吉に文吉を付け、兵庫が修行した鏡新明智流桃井道場に通わせ、下の子を育てるためには優しいだけでは駄目なことを文吉使い教えたのだ。
巳之吉は直ぐに己の役目を知り、優しさに増して己自身の修行にも励むようになっていた。
それは兵庫にとっても喜ばしいことだった。
 そうした中、先日二十四日、平田実深と加戸須磨の婚儀が養育所で執り行われることに成り、各所に居る養育所の子供たち全員が集められた。
久しぶりに会った文吉との話の中で、文吉の修行相手が居ないことが判ったのだ。修行は年内いっぱいの予定だったが急遽、呼び戻すことに成ったのだ。
婚儀後八丁堀に帰ったのが二十五日だったから、道場への挨拶を済ませ、もう戻っても良い頃だったのだ。

 朝食後、志津を入谷に収容した子供たちの修行先にした、高田寺内の塔頭・昇龍院に送り届けると、八丁堀に向かった。
 八丁堀に着くと、当主の兄・兵馬は出仕中だったが、父・多門は居た。
「あの竹刀の音は文吉と巳之吉ですか」
「庭で剣術を教えているよ」
「巳之吉は桃井道場に行って居ないのですか」
「文吉が止めたことをこれ幸いと、寄って集って巳之吉を・・・」
「そう云う事ですか。先生は居ないのですか」
「出かけることが多いらしく、また高弟も見て見ぬ振りらしい」
「それは辛い思いをさせましたね。修行が出来ないようなら道場を変えましょう」
「どこに」
「桶町の千葉道場です。知り合いが居ますので」
「それでは、今の道場に断らねばならぬな」
「はい、これから桃井道場に挨拶に行って参ります」
「その前に、兵馬が持って来た話をするので、聞きなさい」
「はい」
「今、伝馬町の牢は一杯だそうだ。台場造成工事に集めた荒くれどもたちが、騒ぎを起こした結果だ。奉行所で新年前に牢屋敷に入って居る者を減らして置きたい。そこで在所が江戸以外の者を江戸所払いにするとのことだ」
「幕府の声掛かりで集まった者たちを、都合が悪くなると所払いとは、身勝手に思いますよ。追い出される者は恐らく無一文。生きるためには単なる騒ぎでは済まされないことをしでかしますよ」
「そうだな。奉行所が何とか出来るのは千住までだろう。その先は宿場で何とかせねばならぬ。だから、話をするのだ」
「有り難うございます。守りを固めさせるようにします」

 父との話を終えた兵庫は庭の見える廊下へ出た。
「文吉、巳之吉、ここに来なさい」
「はい、兄上」
「話は爺様から聞いた。巳之吉、道場を桶町の千葉道場に変えてみようと思うのだがよいか」
「稽古が出来るのでしたら、何処でも構いません」
「それでは、桃井道場に分かれの挨拶に行きましょう。文吉はどうする」
「一緒に行きます」
「それではそのままの格好で行きましょう」
 暫くして兵庫、文吉、巳之吉の三人は浅蜊河岸に着き、竹刀の音が漏れ出す桃井道場に入った。
兵庫を見てか、文吉を見てか定かではないが竹刀の音が静かになった。
そして目の合った高弟に、
「私は、この巳之吉の兄・鐘巻兵庫と申します。巳之吉のことで、ご挨拶に参りました。桃井先生は御在宅でしょうか」
「いや、お出かけです」
「それでは、挨拶の口上を述べますのでお伝えください」
「分かりました」
「鐘巻巳之吉、さらなる修行に励むため、本日をもちまして止めさせて頂きます。以上です」
「ここでは修行に励めぬと申されるのですか」
「巳之吉は未だ七歳で御座います。剣術を私が教えては、物笑いに成りかねませんので、こちら様の教えをと思い、文吉と巳之吉を過日、先生にお願い致しました。しかし、分け合って文吉は我が道場に戻すことにし、巳之吉一人をこちら様に残しました。ところがご覧の様に顔にあざが、道着を脱げば身体にも・・・、これでは、私が教える品の無い稽古と変わりありません。こちら様にお願いする必要が無くなったのです」
「巳之吉殿、申し訳ないことをしました。桃井に代わり謝ります」
「私が弱くなければこうは成りませんでした。もっと修行し文吉兄さんのように強く成ります」
「それでは、失礼いたします。この道場には二度と参りませんので、掛けてある私の名札は、外すようにお伝えください」
 道場に居た者たちが一斉に名札掛けを見た。
鐘巻兵庫の名札は、この道場に通う誰よりも上席に掛けられていたのだ。

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Posted on 2018/02/21 Wed. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第105話 ぬくもり(その23)】 

 屋敷の下見を済ませた太白と北村が兵庫と上がった縁側まで戻って来た。
そこには上がる時いた者たちは姿を消していた。
その代わりに、丸められた紙を持った又四郎が雲海和尚に連れられてやって来た。
「又四郎、もう描き終わったのか」
「はい、太白先生」
「いくら何でも早すぎないか」
「私も昇龍院を見たかったのです」
「手を抜いたのか」
「いいえ、その様なことは致しません」
太白は、確かめるように又四郎が持つ紙を見た。
「太白さん、温盛さんの絵は気に入りましたよ」と和尚は云った。
又四郎は持っていた紙を太白に渡した。
太白は丸められていた紙を広げた。
半紙判ほど紙には紛れもなく雲海和尚が描かれ、描き終わったことの証として温盛と雅号が記されていた。
「見事なものでしょう」と和尚が言った。
 太白から回されて来た紙には和尚の右目と眉、鼻筋と皺が描かれていたが、顔の輪郭が入らないほどに大きく描かれていたのだ。
「なるほど、この絵が軸となり掛けられて居たら、和尚を知る人なら、誰が描かれているかは判るでしょうね」
北村に渡った絵を取り戻そうと、和尚は用意して居たのか二朱を取り出すと北村に渡し、絵を受け取ると戻って行った。
この後、又四郎が見たかった屋敷内を再び巡り、兵庫等は高田寺を出、それぞれの住まいに戻った。

 嘉永六年十月二十七日(1853-11-27)、朝食を済ませた兵庫と志津は千丸を婆様に預け、高田寺に向かっていた。
又、中之郷元町の養育所では太白と又四郎たちの昇龍院への引っ越しが、弥一等により進められていた。
また、昇龍院では、彦次郎が手配した、屋根職人の久米吉、大工の新吉、亀吉、大工修行中の水野粟吉に建具修行中の水野賢太郎が集まり、弁天堂の屋根の修理が突貫で行わ始められた。 
昇龍院の庭では、庭仕事の心得の在る村上茂三郎も手伝いに来て伸び放題だった、高い所の枝の剪定が行われた。
入谷からやって来た子供たちは、昨日に引き続き仮名の読みが始められていた。
そこに、太白等の引っ越し荷物が付くと、学業が一時止められ、子供たち全員が手伝い奥の部屋に運ばれた。
そこに、駒形、入谷と寄り道をして来た兵庫と志津がやって来た。
子供たちは志津により従順だった。
「こどもの仕事は勉強ですよ。習いごとに戻りなさい」の言葉に従った。
そして昼少し前に子供たちは食事に戻った。
それと入れ替わるように、竜三郎が昼の弁当の入った岡持を両手に下げやってきた。
「竜三郎さん、無理なお願いして済みませんね。ここの台所も動かすようにしますからね」
「商いですから、客が居なくなる方が辛いですよ」といい。弁当を置くと急ぎ戻って行った。

 昼食後、子供たちが再びやって来る前に大人たちは動き始めた。
そして、子供たちがやって来ると、志津は子供たちを一部屋に集めた。
「皆さんは未だ、養育所の子供では在りません。ですから自由です。今日まで皆さんが養育所に馴染めるか様子を見てきました。皆さんは養育所に入っても立派にやっていけます。皆さんに聞きます。養育所に入り、更に勉強を続けたいと思う人は、今から庭の片付けを手伝いに行きなさい」
 子供たちに迷いはなかった。一人が立ち上がると皆がそれに従い庭に降りていった。
そして、午後も七つ近くに成り、大人も子供たちも仕事を終えた。

昇龍院の日の差し込む座敷に二十三人の子供たちが集められ、一人一人母代わりとなる志津に呼ばれていた。
浮浪時代と別れを告げるため、また忘れぬために、子供たちの爪と髪の一分が切られる儀式が行われた。
最後に志津の膝に頭を置き耳の掃除をして貰って終わるのだ。
ぎこちない母子の触れ合いは微笑ましく、子供たちが母の温かさを感じると、そのぬくもりが、子供たちを見る大人にも感じらるのか、大人たちの顔を優しくしていった。

第105話 ぬくもり 完

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Posted on 2018/02/20 Tue. 04:01 [edit]

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janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第105話 ぬくもり(その22)】 

 暫くして高田寺に足を踏み入れた兵庫等四人は、庫裏で雲海和尚と向かい、連れて来た三人を紹介した上で、昇龍院の留守居として入れたいことを願い出た。
「養育所の商に書画の類をしているとは、寺の商売敵にもなりかねぬな。その様な者を」と云い、雲海が笑った。
「そう成らない様に画題を選んでおりますので、その心配は無用です」
「冗談です、留守居が決まったのは有り難い話です。ただ、商売繁盛のようで留守居殿が出かけて留守に成ることが多くてはと・・・」
「その懸念はありますが、当面は私の妻が、子供たちの世話も兼ね参りますので、大人が居なくなることは在りません。いざと云う時は私が留守番に参ります」
「ところで、両替商相手の商いだとすると頼み賃は高いのだろうな」
「それは安くやらせて頂きます。材料費の他に手間賃は日に二朱です、ただし、そうではない両替商などの上客が優先されます」と北村が説明した。
「それは又四郎でも同じか」
「はい、養育所の者の手間賃は皆同じで一朱です。ただし、請け負い仕事では仕事が一刻で終わっても値引きはしません。その他に養育所分としてもう一朱頂くのが通常です。ただし相手が金持ちの場合は別です。安いことを嫌がるものですから」
「それでは又四郎、わしの肖像を一枚今日中に描いてくれ。後々、軸に仕上げられるように頼む。一切の道具は寺の物を使って頼みます」
「又四郎、この一日仕事を受けますか」と北村が確かめた
「はい、喜んで」

 又四郎一人残して大人たちは昇龍院に向かった。
「あそこの屋根に枯草が揺れているのが昇龍院で、弁天様を祀っています」
「鐘巻さん、表があれでは・・・」
「屋内の掃除は終わりました。手入れする職人を入れた所ですが、暮らしの場は中之郷よりはいくらか良いと思いますよ」
例によって、脇の木戸から入ったが、庭を手入れする声は聞こえて来なかった。
案の定、大人たちは一服している所で、やかんを回し湯飲みに白湯を注ぎ、縁側に置いた七輪に乗せる所だった。
「おや、おや、太白先生じゃないですか」佐吉が云うと
「どうやら、ここの留守居が決まったようですな」と彦次郎がやって来た訳を見抜いた。
「寺に絵師、誰よりも似合う。家賃を払ってでも引き受けたいお役じゃありませんか」
「それほどの所か」と太白が話に乗って来た。
「それは自分で確かめて下さい」
「子供たちが学んでいるようなので、静かに屋敷の見分をしましょう」と兵庫が上り、太白と北村が従っていった」
先ず弁天堂を見せ、続いて部屋を回り始めた。
どのように子供たちを分けたのは確かではないが、三部屋を使い天道、新藤、志乃の三人が手習い帳にあらかじめ書かれている文字の読み方を教えて居る様だった。
そして、四番目の部屋、最後の五番目の部屋まで案内し、
「この部屋を使われたら如何ですか」と勧めた。
「本当にここを、しかもただで借りられるのか」
「先ほど、和尚に会った通りですよ。ただし、荒れて居る庭の手入れと弁天堂の雨漏りなどを無償で直す約束しました。もし問題が在るとすれば、借りられる期間が約束されていないことです」
「明日、追い出されることも在りえると云う事か」
「そうですが、そう出来ない尻尾を握られていると和尚は思って居るはずですから、追い出すのではなく、どこか別の所を世話してくれると思います」
「相手に弱みが有ると云う事か」
「そう思わせているだけです。こちらが人と金を掛け自信ある姿を見せれば、そう思わざるを得ない事です。囲碁でも将棋でも負けて居ません。良い相手が居なくなるのも嫌でしょう。さらに又四郎に肖像画を描かせています。志津が云ったように又四郎の絵にはぬくもりが在ります。きっと又四郎のことが気に入ります。自ら深みにはまろうとしていますから昇龍院を出ることに成っても、庫裏の部屋を貸してくれますよ」
「鐘巻さんには、弱みを突く気は無いようだな」
「そんなことしたら、養育所の暮らしにぬくもりが無くなりますよ」

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Posted on 2018/02/19 Mon. 04:01 [edit]

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【鐘巻兵庫 第105話 ぬくもり(その21)】 

 廊下に子供たちの足音がして、その複数の影が障子に映り座るのが見えた。
「兄上様、北村様、大神田様、又四郎さんがお越しで御座います」とお玉の声がした。
「お通しして下さい」
 三人は肖像画商いで役割を分担している。
 北村徳三郎は跡取りの倅・博文の横死により断絶の憂き目を見たが、その賊を彦四郎らが討ち取ったことで縁が結ばれ、中之郷の養育所に妻・佐和と共に身を寄せている。
その北村の役割は客探し等、絵を描く以外のことを行い、絵師の負担を減らしている。
 大神田太白は絵師だが斬られ彦四郎の肖像画が評判を呼び、名を知られるようになった。
 赤松又四郎は少年だが絵の天分を志津に認められ、大神田に師事し修行しながら、主に子供の肖像画を手掛けている。
「皆様、ご苦労様です」と兵庫が労い迎えた、
「戸澤屋の絵は終わり、為吉の方に全てを渡し終えましたので、お二人には次の舛屋の話が決まるまで休んで貰います」と北村が絵師の仕事がおわったことを告げた。
「太白先生、又四郎、皆さんの御蔭で、薬に続き養育所運営にとって大切な柱が生まれたと確信出来ました。有り難うございます」
「嬉しいお言葉です。それが出来たのも、良い画題を与えてくれた皆様のお陰です」
「又四郎、お前の絵には見る人の心を温めるぬくもりがあります。おまえの雅号の一つにぬくもりと読むか、おんせいと読むかあるいは別の読み方にするかは決めて下さい」と志津が云い用意してあった紙を渡した。
それには温盛と書かれていた。
その紙を見ていた又四郎が
「これあつもりと読めませんか。私は敦盛が好きなのです」
「読めますよ。私も敦盛が好きです」
「ぬくもりにします」
「あれ、あつもりが好きなのではありませんか」
「好きですが、ぬくもりの方がもっと好きですから」
「ぬくもりか、良い雅号です。遠慮せずに使いなさい」と太白が言った。
又四郎がどのように返事をしてよいのか迷い、志津を見て嬉しそうに子供らしさを見せた。
「太白先生、私からお願いがございます」
「どのような」
「今、先生を中之郷元町の屋敷に入って頂きましたが、人が増え続けています。制作活動には不向きになって来て居ると思って居ます。そこに、また新しい男の子が十人加わる予定です。如何でしょうか、浅草の高田寺内の塔頭・昇龍寺を丸ごと借りられることに成りました。考えて頂けるのでしたらご案内致します」
「塔頭を丸ごと借りたのか」
「はい、ただし、中之郷に移る子供たちの寺子屋として暫く使いますので、その間はお待ちください。子供たちがもれなく養育所にやって来られるようにするため、志津がぬくもりを与えに参ることに成って居ます」
それだったら、その間に私も移ることにするよ。確かに子供たちが居ると絵の妨げになるが、それは子供たちが居る方が絵を描くより楽しいからだよ」
「それではこれから見に行きましょうか」
「案内してくれ」
これに北村と又四郎も付き合い、押上を出て行った。

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Posted on 2018/02/18 Sun. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

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