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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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 日本一長い時代小説を目指して
ちなみに日ほ本一長い歴史小説と言われているのは、山岡荘八先生の「徳川家康」で、四百字の原稿用紙で17、482枚。
文字数は単純計算すると6、992、800字です。
鐘巻兵庫124話終了時点で約375万文字ですから、今のペース年55万文字で書くと、目標達成は2025年5月頃でしょうか。
そこまで長生きできれば良いのですが。

鐘巻兵庫無頼控え ←連載中
 
湯上り侍無頼控え ←連載終了

駄文創作の徒然 ←たま~に
小説を書くことで体験する事柄を綴ります。 

馬鹿な話 ←たま~に
日々思いついた身近な題材を選び、少の偏見を込め綴ります。

鼻歌 100曲作りました。興味無くても聞いてください。
      珠玉の鼻歌100曲のメドレー

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Posted on 2031/04/30 Wed. 09:34 [edit]

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【鐘巻兵庫 第126話 共生(その19)】 

 池之端の元茶屋・しのぶに残った兵庫、碁四郎、山崎と弥一の四人は黙々と一階の畳を裏長屋の空になった二軒目に運び、積み上げていった。
何度往復したか数えてはいないが、六十畳を四人だから十五往復したことに成る。
「山崎さん、一応終わったのですか」
「一応、彦次郎さんから云われたことは済んだと思います」
「子どもたちが二階から外を見た時に開けた障子は良いのですか」
「外障子は目隠しなので、時期が来るまで閉め切っておくようにと言われて居ます」
「分かりました。それでは神田庵から大八が戻るまで休みましょう」

 そこに車輪のきしむ音がした。
「休みは無さそうですね」と山崎が反応して見せた。
 しかし、姿を見せたのは神田庵に向かった者ではなく、彦次郎ら大工衆だった。
顔を合わせた者たちに笑みが浮かんだ。
「皆さん、一段落したようですね」と彦次郎が打診して来た。
「はい、見分お願い致します」と山崎が応えた。
「分かりました。拝見します」
「この大八、借りられますか。畳運びに使いたいのです」 と兵庫が頼んだ。
「どうぞ、使い終わったらここに戻して下さい。皆は荷を下ろし母屋の土間に入れて下さい」
 彦次郎が見分に、母屋に消えて行った。大工衆が荷を下ろし始めた。
その大工衆は亀吉、水野粟吉、総三郎、浜吉、仙一、久六、福助、次郎の八人だった。
 荷は、職人が建設現場に持ち運ぶ自分の道具箱ではなく、家を建てる時に使われる丸太、縄、槌等の他に大きな釘抜の類、畚(もっこ)や何に使うのか判らぬものまであったが、この家の解体に使用される物だろう。

 大八で運ばれてきた荷が下ろされると、代わりに長屋から畳が出され積み込まれていった。
そこに神田庵から大八が戻って来て、休むことも無く畳が積み込まれた。
四台の大八に満載したが、同じほどの畳が長屋に残っていた。
「二往復で運びきれると良いですね」
「そうですね、ただ七人では・・・」
「分った。一人借りてきます」と兵庫は云い、大工衆が消えた母屋に入って行った。
暫くして、兵庫が連れて来たのは大工の亀吉だった。
その亀吉が、
「“亀、お前の大工修行は今日で終わりだ“と彦次郎のとっつぁんに云われちゃいました」
と、大八車の押手に加わった。
こうして長屋に納められていた物が無くなるまで荷運びが繰り返され、役目を終えた三台は聖天町に戻され、一台は亀吉、山崎、弥一等により池之端に運ばれ、この日の荷運びは終わった。

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Posted on 2019/08/23 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第126話 共生(その18)】 

 昼飯は握り飯で、皿など返品するものなど無くお手軽なものだった。
用意したのは湯沸かしを乗せた七輪だけで、まさに男所帯の昼飯は昼の鐘が鳴った時には終わっていた。
「山崎さん、二階は終わった。一階はどうしますか」と手持無沙汰を嫌う兵庫が尋ねた。
「弥一さん、長屋に空きが在りますか」山崎が格納場所の余裕を確かめた。
「畳がきついような気がします。長屋の板の間は四畳半ですが、母屋の畳の大きさが大きいのでそれを平置きで納まるのは畳三枚です。現在既に三つ目の山が半分ほど積み上がって居ます
「一体何畳有るのですか」
「二階は確か八十四畳です。一階は台所などが在り少なく六十畳在ります」
「合わせて百四十四畳ですか。使いきれそうも在りませんね」
 兵庫が云うと碁四郎が
「そうですね共生村づくりをしますが、畳敷きの部屋から始めさせるわけには行けませんからね」と先の話を心配した。
「その話は、雨が降ってからにしませんか」と山崎が外を見ながら今やらねばならないことを言った。
「そうでした。一階の襖。障子を運び出しましょう」
こうして午後の仕事が始められた。

 そこに昇龍院の子供たちが稽古着姿で走り込んできた。その殿(しんがり)には反町半四郎が付いていた。
「何か運ぶ物が在れば手伝います」
「もう直ぐ、大八車が来るので神田庵まで頼みます」
 子供たちは店の中に初めて入り何も無くなっている二階を見て下りて来た。
「池や上野のお山が良く見えました。皆にも見せてあげて下さい」
「ちょっと待って下さい。実は外の景色を見て居ないのです。確かめてきます」
 兵庫が上がるとそれに従う者が続出した。
「山崎さんも見て居ないのですか」
「面目ない」
 上がった兵庫が表通り側の障子を開けると、蔀(しとみ)格子を通して開けた外が見えた。
「なるほど。いい景色ですね。二階が取り壊される前に連れて来て見せて上げましょう」
「兄上、大八が来ました」と下から声がかかった。
「それでは長屋に納めた荷を出して、大八車乗せましょう」

 聖天町に頼んでおいた大八車、三台を牽いて来たのは聖天町から棒手振りの大二郎となんと髪結いの六助それと向島からは棒手振り伊佐次の三人だった。
「面白い組み合わせですね」
「この時間に都合を付けられた者が来ただけです。申し訳ないのですが、私たちは戻りますので大八は聖天町に戻して下さい」
「分かりました。ご苦労様でした」

 大八車を運んできた三人が帰ると、兵庫が
「届け先は神田庵です。先ず布団からにしますが、その前に乗せた布団の荷崩れを防ぐため大八の左右に畳みで堰板を作って下さい。二台目と三台目には襖・障子を積んで下さい。
 こうして一台目には十数組の布団が積み上げられ、縄を掛けられた。
二台目、三代には襖や障子が横に立てられ積まれていった。
「それでは浜中さん、美濃部さん、新藤さんそれと子供たちと反町さんで荷を神田庵まで届けて下さい。帰り子供たちは昇龍院に戻りなさい」
こうして荷を満載した三台の大八車は子供たちの手助けを借りながら神田庵に向かった。

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Posted on 2019/08/22 Thu. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第126話 共生(その17)】 

 嘉永七年五月十三日(1854-6-8)少しばかり雨が降っていた。
朝食を済ませた兵庫は、腹掛け股引き姿に地天の半纏、更に蓑に傘を被り無刀姿で雨の中に飛び出していった。
行く先は池之端だが兵庫は途中昇龍院によった。
出て来た保安方の浜中松之助と反町半四郎に
「これから池之端の取り壊しの手伝いに行きます、お一人可能な限り下働きできる姿になって付いてきて下さい」
「私が」「私が」がほぼ同時に発せられた。
「保安方としての用がありますので一人にして下さい」
兵庫はそう言うだけで人選はしなかった。
どう話し合いがついたかは分からないが、浜中が薄物一枚に頬被りしたうえで蓑笠を着けて出て来た。
「良く似合いますね」とは人選に敗れた反町が云った。
笑いが、部屋で学習しながら様子を見ていた子供たちの間から洩れてきた。

 兵庫たちが池之端に着くと既に駒形から保安方の新藤栄二が来ていた。
そして、中之郷から美濃部要人、少し遅れて山中碁四郎が姿を見せた。
「今日の侍崩れは五人のようですね。山崎さん、交代で来ますので明日からは四人に成ると思います。宜しく仕事の割り振りをお願いします」
「分かりました。今日は二階の物を長屋に運んで貰います。布団は木戸寄りの一棟目に、その隣に襖・障子、三棟目には畳を納めて下さい。四棟目には既に二階に置かれていた調度の類を運んでおきました。五棟目は空けておくようにお願いします。なお。みな再利用することに成って居ますので丁寧にお願いします」

「大した雨ではないが降って居ます。外に運び出せるのは多少濡れても良さそうな畳ですが、運び出すに襖・障子がじゃまです。襖・障子を先ず一階の空き部屋に下ろしましょう」
兵庫が段取りを提案した。
 こうして助っ人五人の侍に山崎と弥一を加えた七人で二階からの襖・障子下ろしが始まった。
単純な作業で下ろされた襖・障子は一階の一室に納められていった。
その襖・障子下ろしが終わったところで一服となり、台所に茶を淹れにいった弥一が
「皆さん、雨が止んだようです。今なら二階の布団部屋の布団を長屋に運べますよ」
「せっかく腰を下ろしたのに・・・」
「お天道様のお心遣いです。やりましょう」
「上に二人、下に五人。布団は階段下へ投げ落として結構です」
 部屋の出口近くに座っていた浜中と新藤が二階に駆け上がっていった。
「私が階段下から台所まで布団を運びますので、御三方は土間に下り長屋まで運んで下さい」
と山崎が役割を決め、布団運びが始まった。
この布団運びは思ったより速く終わった。
というのは出会い茶屋では旅籠とは違い一部屋に一組で足りるためだった。
 布団運びが終わっても、雨の切れ間は七人を休ませなかった。
「次は下ろした襖・障子だ」
こうして昼前に、二階には畳を残して裏長屋に納める物は無くなった。
「ちょっと待って下さい。昼飯が届きますので」
「何処に頼んだのですか」。
「ははこ屋です」
「繁蔵さんのところですか。それは結構ですね」

 昼飯は喜重が運んできた。
「鐘巻先生、山中先生。皆様ご無沙汰しております」
「喜重さん。乙女さんとはうまく行っていますか」
「はい、敷かれて居ます」
「それは結構ですね」
「これから昼の客が来ますので、失礼します」
喜重は店が繁盛していることを悟らせた。
「皆さんに宜しく伝えて下さい」
喜重は笑顔を返し、戻っていった。

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Posted on 2019/08/21 Wed. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第126話 共生(その16)】 

 向島を訪れた兵庫は母屋の村上茂三郎の部屋に平田実深を呼び出していた。
「お聞きください。中之郷に共生村を造る動きは聞いていると思いますが、動くことに成りました。その手始めとして、池之端の店を売却することで買い手を探して居ました。その過程で得た情報では店の建物には価値が無いということでした。私たちは勝手にあの店は血なまぐさい事件が在り磔にされた者たちが使っていたことで不吉だからと思って居ましたが、元宮大工の彦次郎さんの診立てでは、あの店の造りは旅籠で、出会い茶屋として使おうとする買手は建物に価値は無いと判断したのだろうと教えてくれました。そこで出た手立てが店の解体でした。養育所の者たちで丁寧に解体することで大工修行させるとともに解体で得た建材を中之郷の村建設に使う事ができるからです。ここまで宜しいですか」
 二人は頷いた。
「大工や大工修行の者たちが解体を始める前に、布団、戸障子、畳など動かせる物を運び出さねばなりません。その仕事を毎日、解体に従事できない侍衆を始めとする者たちで請け負うことにしました」
「やっと私の出番が来ましたね」と平田が嬉しそうに言った。
「はい、お願いしたいのですが保安方の代理をする者が決まってからにして頂きます」
「代理人が居ますか」
「私の最も古い友人にお願いするつもりです」
「だいたい目星がつきました。私の身内ですね」と村上が云った。
「そうなりますね。辰五郎さんには、こちらから話しておきますので、ご承知おきください。なお、お産されたお二人は早ければ明日、こちらに入る予定です」
「分かりました。わざわざ有り難うございます」

 兵庫が押上に戻ると、娘たちのお産の世話をして来た母親の村上縫が部屋に来ていた。
「お待ちして居ました」と、縫が切り出した。
「伺いましょう」
「お陰様を持ちまして二人とも無事出産でき、親子ともども健やかで御座います。明日、お天気を伺いながら皆揃って向島に入ることにしています。有り難うございました」
「これで後に続く者たちも安心して押上にやって来られるでしょう」
「はい、その時は私も」と、縫が笑いを取った。
 縫は間もなくして部屋に戻っていった。

 夕食後暫くして、栄吉と辰五郎がやって来た。
「先生、お世話になりました。明日、戻ることになりそうです」
「はい、縫殿から伺って居ます。お二方は如何されるのですか」
「向島には送り届けますが住まいは普門院脇です。子どもには会いたいのですが、女三人の中に入り込むのは疲れますので、何か用を見つけて子供の顔を見に行く事にします」
「その用の一つになりますが、いま養育所では中之郷の屋敷を養育所の者たちが巣立つ前に共生する知恵や仕事を覚えるための村に造り直すことにしました。これには養育所の者たちだけで成し遂げようとしているのですが、皆さんのお力も借りたいのです」
「先生、私たちをはじき出すのは辞めて下さい。いつまでも養育所の一員のつもりでいますので」
「分かって居ます。お二人が女三人の中に入り込むのは・・と申したのと同じ気持ちが、お二人が立派に自立して居るのを見ると湧いてしまうのです。はじき出すつもりなど微塵も無いのですが成熟した間には遠慮が生じるのです」
「何となく分かりました。それで何をすれば良いのですか」
「養育所の者の中には村造りにあまり役に立たない侍も入ります。しかし、出来ることは在りますので共に汗を流してもらうことになっています。その侍の一人に平田さんが居ます。しかし、平田さんには大事な保安方の任があり、出掛けられません。そこで辰五郎さんに平田さんのお役・保安方を一日だけでも担って貰いたいのです」
「やります。やらせて下さい」
「この話は村上さんと平田さんに今日話してありますので、遠慮せずにお願いします。尚、日取りは別途連絡します」
「私は・・」と栄吉が尋ねた
「実は平田さんは池之端の店の解体の手伝いに行くのです。やる仕事は時期によって変わると思いますが解体した建材を中之郷に運ぶ仕事に成ると思います。お二人に真にお願いしたい仕事は入れ物造りではなく、そこに入る者の中で鍛冶などの仕事をしたいと云う者が出てきますので、その者を育てて貰いたいのです。ですから出番は少し遅れますが、必ずお願いする時が来ます」
「分かりました」
こうしてこの日は暮れていった。

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Posted on 2019/08/20 Tue. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

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