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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【湯上り侍無頼控え(三話)坊主の碁(その26)】 

碁四郎は世話になったおりょうに別れを告げ、お静と三途丸に乗り、梅雨の晴れ間の大川を渡り、船宿・浮橋に戻ってきた。
女将のお蔦は碁四郎とお静の様子を見て
「上首尾のようだね」
「いや~、持ち出しでした」
「野暮だね。お静さんに聞いたんだよ」
「はい、上首尾でした」
「そりゃ、よかった。碁四郎さん、日本橋の小間物問屋の大和屋彦五郎さんが先程来て、詫びを言い、世話になったと何か置いていったよ。後日、また挨拶に来ると言ってましたよ」
「大和屋には名前も何も言わなかったのですが、良く分かりましたね」
「それは大和屋の番頭が、去っていった碁四郎さんの舟に書いてあった“三途丸”を頼りに捜させたそうだよ。昨日その使いが此処に来たから、それは碁四郎さんの舟で、確かに二人を引き上げたと色々と教えたら、さっき彦五郎さんが来たのさ」
碁四郎に届けられた物は十両の金だった。
「持ち出しが戻ってきました。女将さん。捨吉さん、銀太さん、安五郎さんにお礼として一両ずつ渡して下さい」
「分かった。何か期待してたから、きっと喜ぶよ」
「お静姐さんにも一両」
「いいよ、何もして無いし」
「いえ、襦袢に染みを付けたので・・・」
「変なこと言わないでおくれよ」
「いいじゃないか。二人の間に在ったことを隠そうとしないんだよ。目出度いじゃないか」
お蔦の話にお静も納得させられたのか、恥じらいと喜びの混じった顔を見せた。

碁四郎は浮橋を出ると、お静を置屋の都鳥に送った足で自身番に寄り、同心の久坂へ渡してくれと居合わせた勇三に一両預け、湯屋に戻った。
遊び人から侍姿に改めると、前南町奉行だった遠山家に篠塚を尋ねた
「山中さん。簪を質屋に入れた侍は見付かりませんでしたよ」
「あの、簪の残りは殺された正三郎の荷の中に入れられていました」
「そうでしたか。それで、今日は?」
「この話を終わらせましたので、お礼を持ってきました。少ないですが受け取ってください」
一両を受け取った篠塚に、事の顛末を告げた。
「結局、心中者にした宇野の思う壺ではないですか」
「それは、心中者と決め付け晒し者にしておいた町方が悪いのですよ。本所の定廻りの坂牧殿以下、手伝わされた浦島の者まで罰を受けることになるより、ましでしょう」
「分かった。殿様には、そのように伝えておくよ」

碁四郎は遠山家からの帰りの足で本所亀沢町の団野道場に出向き、出てきた団野源之進に会った。
既に宇野と団野の間で話しは出来ていていた。
居なくなった宇野の代わり、師範代並みの腕前確認のため居合わせた数人と手合わせをさせられたが、誰一人として碁四郎を打ち込めず、団野の目にも適い、明日の朝稽古から出向くことになった。
 
 午後、湯屋の二階の遊興部屋に出て行くと
「先生!・・一手お願いします」と老人から声がかかった。
碁四郎が座ると、
「先生、ここ二・三日、姿が見えませんでしたが出かけておられたのですか」
「はい、川向こうの深川で、坊主の碁を打ってきました」
「それは、双方痛みが少なく良かったですね」
「はい、何とか・・・」
碁四郎は湯屋の二階から、梅雨の晴れ間の空を見ながら坊主の碁を打ち始めた。

坊主の碁・・完

Posted on 2011/03/25 Fri. 07:31 [edit]

thread: 幕末物語

janre 小説・文学

【湯上り侍無頼控え(三話)坊主の碁(その25)】 

 翌早朝、おりょうの看護でこの世に蘇った宇野を交え、四人が朝飯を食っていた。
重湯をゆっくりと啜りながら宇野が碁四郎に尋ねた。
「お主、わしを何故、助けた」
「それは、もう一度死んでもらう為です。二人殺したのですからね」
「そうか。今度はどのように殺すきか。また溺れさすのか」
「私は殺しません。死に方は宇野さんが決めて下さい。その前に今日一日、浮世のしがらみを断ち切りに行き、戻って来て下さい」
「わしを放免すると言うのか。何故だ」
「それは・・この事件は表向き、身元不明の心中として済んでいるのです。それを下手に蒸し返せばこの事件に関与した者までお裁きを受けねばならなくなります。女将それでも良いですか」
「嫌に決まっているじゃないか」
「宇野さん。女将は一晩中寝ずに看護してくれたのです。その方を、微罪で済むかもしれませんが罪に陥れたくは無いでしょう」
「分かった。世のしがらみは然程無い。日の在る内に戻ってくる」

 その言葉どおり、宇野は昼前に戻ってきた。
「御用は全て済みましたか」
「ああ、だが一つ頼みたいことがある」
「お主、いや山中殿。こんなわしでも居なくなると困る者が少し居た。わるいがわしの代わりを暫らくやってもらえぬか」
「何でしょうか」
「本所亀沢町の団野道場で剣術を教えてやってくれぬか」
「団野先生は?」
「もう御歳です。暫らくすれば麻布から男谷先生が参られます。それまでだ」
「そうですか。私は構わないのですが流派が違いますよ」
「それは流派を継ぐ者に教えるには必用だが、たしなみ程度の者には流派など気にする必要は御座らぬ」
「分かりました。その件はお引き受けします」
「ありがたい。それでは腹を切るので頼む」
「よい、お覚悟です。その前に一つ頼みたいことがあります」
「何だ、覚悟が鈍るでないか」
「正三郎の荷物を下総佐倉の親元を探し、届けてやって下さい」
「あの荷物をか。嫌な役目だな」
「はい。ただ親が見付かっても事件を蒸し返すことは言わないで下さいね」
「分かった・・・下総の佐倉だな」
「助かりました。それでは荷を担ぎやすいように月代を剃り髷もこのように変えたら如何ですか」
「町人に流行の本多髷ではないか」
「はい、これなら腰が寂しくても苦になりませんよ」
「腰が寂しくても寂しくないか・・・」
「はい、二本、預からせて貰います」
「そうか、そう言う事か。それなら、くれてやる」
宇野宗十郎は女将のおりょうに月代を剃られ、髷を本多に結い直され、路銀を貰い下総に向け旅立っていった。
それを、宇野の刀を腰に差した碁四郎が見送っていた。

Posted on 2011/03/25 Fri. 07:28 [edit]

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janre 小説・文学

【湯上り侍無頼控え(三話)坊主の碁(その24)】 

 風呂場へと歩く碁四郎の足音は宇野に聞こえたはずだが、宇野は酔い、女将の足音とでも思っていたのか、碁四郎が風呂場に入った時は洗い場で身体を洗っていた。
宇野は碁四郎の姿を見、碁四郎も宇野の姿を見た。
「お主、朝駆けの町人ではないか」
「あなたは・・団野道場付近でよく会うお侍ですね」
「こんな所で会うとは奇遇だな」
「私は三助です。背中流しましょう」
宇野が碁四郎に背を向けた。
ここで襲えば、間違いなく宇野を仕留められると思いながらも、碁四郎の手は宇野の背中を流していた。
「お侍様の面ずれはすごいですね」
「わしの商売だからな」
「商売ですか。それほどの腕前なのに欲しいですね」
「何が欲しいのだ」
「お侍、何故若い娘と男を殺したのですか」
背中を流させていた宇野が向きを変え、碁四郎と向かい合った。
「誰に聞いた」
「何故、殺したか答えてくれれば、私も答えますよ」
「お主、目の前を若い娘が無用心に通り過ぎたら、そのイチモツが騒がぬか」
「それだけですか」
「女を襲うに、それ以上の分けは無用であろう。騒がねば殺しなどしなかった」
「それでは私も答えましょう。お侍が娘を殺したと言ったのは、お侍が使った下げ緒ですよ」
宇野は殺した二人を心中者に見せかけるため、己の刀から抜いた下げ緒を使ったことを思い出していた。
「そうか、それは抜かったな」
宇野の両腕が碁四郎の首に伸びてきたが、それより早く碁四郎の右手が宇野の顎を張っていた。
脳震とうを起こして倒れた宇野の腕を固めた碁四郎、宇野を頭から湯船に押し込み、もがく宇野の両足を持ち上げ湯船に逆立ちさせた。
暫らくして宇野の力が抜けたところで碁四郎は宇野を引き上げ、水を吐かせた。
肺に空気が入り、むせ返りながらも宇野に息が戻ると、碁四郎は宇野を起こし担ぎ上げ、表出入り口の板の間に寝かせた。
「女将!」
碁四郎の大声が二階へ駆け上っていった。
下りてきた女将と後をついてきたお静が見たのは、素っ裸で横たわる宇野と同じく素っ裸で立っている碁四郎の姿だった。
「死んでいるのかい」
「いいえ、生きていますよ」
「それで、どうするんだい」
「それは、宇野殿が目覚めたら決めて頂きます」
「宇野殿・・頂きます・・あんた侍かい」
碁四郎の改まった言い方におりょうが反応した。
「たまにそんな格好もします。すいませんがこの格好は頂けません。私と宇野さんの着物を持ってきて下さい」

Posted on 2011/03/25 Fri. 06:58 [edit]

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【湯上り侍無頼控え(三話)坊主の碁(その23)】 

廊下に足音がして、障子の外から
「暫らくしましたら、夕食を運びます」
身繕いを直すには充分な時が与えられ、二人の膳を女将と仲居が運んできた。
「女将さん。来た時に当てが外れたと言いましたが、碁四郎さんに変なことを教えないようにして下さいね」
「変なこと?・・・あっ、あれね。残念だけど、あとはお静さんに任せますよ」
お静が笑うと、おりょうも笑い部屋を出て行った。

 酒抜きの夕飯を食い、風呂に浸かった碁四郎とお静の二人が部屋でくつろいでいると、仲居が手燭を持ってやってきて行灯に火を入れた。
「蚊帳、吊りましょうか」
「結構です、私がしますから」
「ごゆっくり」
仲居は手燭の火を吹き消すと部屋を出て行った。
お静に手を貸し蚊帳を吊った碁四郎、纏っていた物を脱ぐとお静に渡した。
蚊帳の中に入った碁四郎は、行灯の灯で寝化粧をしているお静を見ながら、いつかこれが自分の家の中で見る光景になるのかと思いながらも、その相手が目の前にいるお静なのか決めかねていた。
お静が蚊帳に入り、碁四郎の脇に横たわった。
有明行灯の光の中で碁四郎の黒い影が動き始め蚊帳を揺らした。
その時、階下で何か音がした。
「宇野が来たようだ」
「私と宇野とどっちがいいの・・・」
宇野を風呂場で襲うつもりの碁四郎だが、その宇野が風呂に入るまでどのくらい待たされるか分からない。
どうせ待つなら、お静と共にと碁四郎が思ったかは定かではないが、碁四郎はお静の着ている物を剥いでいった。
風呂屋の三助でこれまで見続けてきたお静だが、薄暗い行灯の灯に照らし出された、陰影の濃い裸身の影に顔を埋めていった。
『中略その5』(ここは読者が想像する濡れ場シーンです。コメントして下さい)
二人は、宇野のことなどすっかり忘れ、互いに求め合い時の経つのを忘れていると、階段を駆け上がり廊下を歩き、部屋の障子を開ける音がした。
「碁四郎さん、出番が来たよ」
女将の声だった。
「分かりました。もう少しです」
碁四郎の最後の気が入り、お静が声を上げ、静になっていった。
 蚊帳を抜け出した碁四郎、まだそそり立つものを隠しもせずに、女将から手燭を受け取ると裸で部屋を出て行った。
一階に下りた碁四郎は風呂場へと歩き、途中、女将の部屋に入り様子を見ると宇野の両刀が置かれていた。
「間違いないようだな」
心中者を縛っていた物と同じ下げ緒が付いている脇差と下げ緒のない大刀を見て呟いたのだ。
碁四郎の気持ちは決まり、その足は躊躇せずに風呂場へと向かった。

Posted on 2011/03/25 Fri. 06:54 [edit]

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【湯上り侍無頼控え(三話)坊主の碁(その22)】  

【湯上り侍無頼控え(三話)坊主の碁(その22)】
「これから話すことは、内緒ですよ。迷惑が掛かりますから」
「分かっています。口は固いほうですよ」
「簪を預けたのは遠山様の御家来、篠塚様です」
お静はその遠山家には碁四郎を慕って出てきた加代が居ることを思い、暫らく言葉を失っていたが
「それで殺した奴は誰なの」
「宇野宗十郎という浪人なのですが、女将とちょっと縁が在って、無理やり心中狂言を手伝わせたのです」
「殺った者が分かったのなら、御上に任せればいいじゃないですか」
「そうすると、ここの女将と船頭が罰を受けることになるのです。今のお奉行は世情のことには疎いのです」
「御上に任せないということは、碁四郎さんが始末を付ける気なんだね」
「はい、ですから今日、明日にでもその浪人が浦島にやってきます。危ないですから、お静さんは早めに帰って下さい」
「嫌です。都鳥の母(かあ)さんには、今日は泊ると言ってきたんですよ。危ないぐらいじゃ帰れませんよ」
「えっ、今晩泊るのですか」
その時、廊下から障子越しに声が掛かった。
「お酒をお持ちしました」
「そこに置いといて下さい」
お静が声の主に答えた。
互いに好いてはいたが、口には出さず、出逢ってから一年近く経った昨日、酒の力も借り何とか思いを遂げたのだが、明るい中で顔を会わせると、まだ照れが出る。
仲居が持って来た酒は酔うほどのものではないのだが、照れ隠しには役に立つのか、二本頼んだ酒も、一本が空になったところで、お静と碁四郎の目が語り合った。
碁四郎は注がれた酒を飲み干すと立ち上がり、ほんの少し前閉めた襖を開け寝間に入ると帯を解いた。
後に従ったお静が襖を閉め、碁四郎の小袖を脱がせ衣桁に掛けると自分の帯を解いた。

「中略その3」(ここは読者が想像する濡れ場シーンです。コメントして下さい)
一度・二度と果てた碁四郎が一息入れながら事件の話を始めたが、お静の手が伸び碁四郎を掴み朴念仁の話を止めさせた。
朝の生卵、昼の鰻、それより、お静のもの欲しそうな様子に碁四郎の若さが応え、碁四郎がその気になるとお静が覆いかぶさってきた。
「中略その4」(ここは読者が想像する濡れ場シーンです。コメントして下さい)
お静の全身の力が抜け、顔を碁四郎の胸板に乗せ動きが止まった。
そのままで、どれほどの時が経ったであろうか、碁四郎が体を入れ替えた。
暫らくして、お静の呼吸が荒くなり、堪えきれなくなったのか
「だめ、それは・・・夜に・・」
碁四郎はおりょうに教えられた手業を確かめていたのだ。
そして、また少し時が流れた。

Posted on 2011/03/24 Thu. 15:27 [edit]

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