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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第65話 板挟み(その12)】 

 押上に戻った兵庫は寝間の布団の中から志津に語り掛けていた
「子供たちから具足商いを嫌われてしまいました」
「その訳は」
「今までの様に遊んであげられなくなったからです。商いは子供たちの為なのですがね」
「商いか、子供か、どちらを取るかの板挟みになって居るとお思いなのですか」
「今度の商いは養育所の二年分の稼ぎが係っているのでやめる訳にはいきません」
「止められないと思われるそのお気持ちは、他に訳が在るような気がいたしますが」
「それは気が付きませんが、何でしょうか」
「己の商才を確かめたいのでは在りませんか。此度の具足商いで千両稼ぐには幾つか条件が御座います。その読みが当たるか当たらないかは、やって来る異国船を指揮する者の読みと旦那様の読みが同じでないと叶いません」
「私の読みが分かるのですか」
「はい、寝言を聞きましたので」
「何と言って居ましたか」
「江戸に来いと・・・」
「本当にその様な寝言を言いましたか」
「あっ 当たったようですね」
「はい、アメリカ国の船が今年日本に来る話は、昨年オランダを通じて長崎奉行に入り、江戸にもたらされました。日本の通商の門戸は江戸から離れた長崎しか開いて居ません。しかし、長崎を訪れる異国船は国法を盾に追い払われるか、話が江戸に伝えられてもはぐらかされ、結局は追い払われてきています。長崎を訪れても通商が出来ないことは、オランダから聞かされているでしょう。私なら、長崎などに立ち寄らず江戸湾に入り幕府に迫ります」
「その事に幕府は気が付いて居るのでしょうか」
「それは居ますが、言い出せば、幕府から国防の為と出費を言い出されますから、口をつぐんでしまいます」
「旦那様のお心の中には、まともな商いで千両稼ぐ己の姿を見せたいと思うお気持ちが強いので、子供たちの気持ちとに挟まれて居られるのではありませんか」
兵庫は志津の言葉を聞きながら、己を板挟みにした元凶が己自身に在ることを気づかされた。
「分かりました」
「商いを任せられる方は居られると思いますが、子供たちと遊んでやれる兄は旦那様しか居ませんからね」
「母親は志津しかいませんよ」
「お玉ですか。御姉さんに成りたくないと駄々をこねて居ましたが、今日はお染さんに抱かれて居る恵介に、自分の事を御姉さんと言っていたそうですよ。私はお玉を一番幼い子としてではなく、腹の子の姉として見る母親に成ります」
「鉄五郎さんは亀甲屋浦太郎さんへの恩と私への義理に挟まれ、鳥羽さんは国の両親と江戸の女子に挟まれ、私は商いと子供たちに、人はその時々何かに挟まれているのかもしれませんね」
「お玉がこの様に寝るのも、あと少しの間ですね」
兵庫と志津に挟まれ、お玉はあどけない寝姿を見せていた。

第六十五話 板挟み 完

Posted on 2015/01/28 Wed. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第65話 板挟み(その11)】 

 鎖帷子、籠手、脛当て、鉢巻を一組にした安売りの期限、三月五日が最後の日だった。
この日、兵庫は食事時に話すことを、それ以前に皆を道場に集め話した。
「急なことですが鳥羽殿が、養育所の仕事を止め、藩に戻る決意をされました。話では暫く剣術修業の許しを貰うそうです。今後、店が落ち着きましたら押上の道場を一日中開けるので、稽古に来て下さいと言っておきました。皆さんも、会うことが在りましたら、そう云うことですのでこれまでの事のお礼を言って下さい」
と少々脚色して話した。
他にも話したが、言いたいことは鳥羽の事だけだった。

 話が終わると、兵庫は少し早めに暖簾を出した。
その暖簾が出されるのを待って居たかのように客はやって来た。
その中には、以前顔を見せ買わずに帰った者もかなり居て、その者たちは買って帰って行った。
その時に、漏らした言葉が、
「他の、具足屋もまわって確かめたが、間違いなく地天屋が半値以下だ」だった。
この日の朝、残って居た具足の数は四十七組だったが、暖簾を仕舞う時まで残って居たのは僅か五組だった。
帳場には販売に携わった御男たちが集まって居た。
「良く売れましたね」と兵庫が満足気に言えば
「明日からの売り物が在りません」と甚八郎が笑いながら続けた。
「昨日の朝までに鉄五郎さんにお願いしてあるのは六十四組で昨日と今日で二十四組分が納められて居ます。これから納められるのが四十組です」と内藤が現況の注文状況を応えた
「皆さん聞いて下さい。引札で少しばかり不安を煽ったら、予想を超えた反応が在りました。もし、異国船が来たらこの何倍もの客が来ると思います。その時に売り物が無くては
愚か者のそしりを受けかねません。内藤さん、この五日間で売り上げた金とこれからの売上金の全額を仕入れに回して下さい」
「分かりました。昨日の売り物が五十組を切らないようにとの話は止め、在庫を持つと云うことで宜しいですね」
「ただ、やって来た異国船が野分前に去ることを前提にすると、のんびりとした幕府との交渉にひと月は掛かると判断すれば、やって来るのは遅くとも六月半ば以前でしょう。注文を出すのはその辺で止めましょう。来ないことも考えられますからね」
「分かりました。目標が千両でしたので、それ以上は欲張らないようにします」
「それで結構です」
 男たちの荒っぽい話が勝手にも届いたのだろう、昨日具足商・亀甲屋浦太郎から離縁を言い渡されたお雪が帳場にやって来て座に加わった。
「お雪姉さん、何かご用でしょうか」
「千両儲けて何をしようとしているんですか」
「聞こえてしまいましたか。内藤さん。お願いします」
「お雪様。この養育所で日当一朱を頂いているのは鐘巻さんからお雪さんまで十五人から二十人居ます。この係りが月に三十両から四十両です。子供が十三人と赤子が一人居て、衣食教育に一両掛けますので月に十四両、合計を月に五十両とすれば、千両も二年持たないのです」
「お雪殿。私とこちらの心次郎は越後の新発田から来た者ですが、他に十三人が押上の寮で世話になって居ます。鐘巻先生のような御方が居られることがまだ信じられません」
そこに、台所の用を済ませた八重が帰り支度をし、子供たちとやって来た。
「兄上、母上様は赤ちゃんが産まれるので、遊んでくれないとお玉が言って居ます。兄上はお仕事が忙しく僕たちを散歩に連れて行ってくれません。寂しいです」
「そうか・・・母上と相談して、もっと遊べるようにします。今日は吾妻橋まで散歩しましょう。保安方付き合って下さい」
「私も行っては駄目ですか」とお雪。
「駄目と言っても・・・」
そこに奥村がやって来て、
「内藤さん、一日中座りっぱなしは身体によくない。番をしていますので皆で御参りをして来て下さい」
「これは奥村先生有難う御座います。それでは御賽銭を用意しましょう」
駒形の店を出たのは、押上に戻る兵庫等四人、男の子十人、保安方の乙次郎と仙吉、内藤とお雪の十四人だった。
浮浪の時代は町の子が少なくなる夜に歩くことが多かったのだが、養育所に入ってからは夜歩きが朝駆けに変わる日々を送って居た。散歩に子供たちの目が輝いていた。

Posted on 2015/01/27 Tue. 04:01 [edit]

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janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第65話 板挟み(その10)】 

 ドジョウ屋を出た二人、今なら二人とも木戸が締まる前に家に戻れるのだが、足は東の押上でも西の下谷でもなく南に向いていた。
「鳥羽さん、これから色々と金が掛かります。これまでに働いて頂いた賃金に少し乗せたものを持参しましたので受け取って下さい」
紙に包んだものを受け取った鳥羽が目を瞬(しばた)かせた。

 浅草平右衛門町の浮橋に入った二人は、先ず、来た経緯(いきさつ)を山中碁四郎に話した。
鳥羽の想いを聞き取った碁四郎が、
「先ず、寝床を下谷から浮橋に移して下さい。鳥羽さんの事は私が富士の湯の主・仙吉さんに、鳥羽さんが藩邸に入り鐘巻さんの所に居る奥村先生の帰参が許されるように働き、それが終わったら戻って来ると話します」
「分かりました。宜しくお願いします」
「下谷を出る時、大家に部屋は空けておくように言って下さい」
「はい。江田さんが置いて行った物はそのままにします」
「あとは剣術修業が目的ですから、通う道場が霞塵流や地天流それと火水流では下屋敷の用人が首をかしげてしまいます。そこで団野道場なら屋敷から近いので良いと思うのですが、それだけでは上達は望めません。押上の道場を一日中開くようにしますので、碁四郎さん半刻でも良いので、時間が空いたら頼みます」
「分かりました。静も万丸(まんまる)も共に元気ですから、その程度の時間は空けられます」
「名は万丸ですか」
「万(よろず)の船を従えると云う親の願いが込められているのですが」
「良い名です。親よりはるかに大きい名ですね」
碁四郎の名の由来は父・源太夫が五十四の時に生まれたことに由来する。
こうして、話が鳥羽の事から外れていった。

 五日の朝を浮橋で迎えた兵庫は、暗いうちに一人押上に駆け戻り、妻の志津に鳥羽の想いと、これからの事を話した。
「鳥羽様は人様の為に尽くしました。今度は鳥羽様の為に出来るだけのことはして差し上げねば・・・」
「そうですね」
 志津に一晩泊まった間の事を話し終えた兵庫は雨戸を開け、剣術の道具を廊下に並べ、身支度を済ませ庭に出た。

 夜が明ける前から始まる稽古には、本所の石原町に住む高倉健四郎と菅原文次郎が地の利を生かし先ずやって来る。少し遅れてやって来るのが養育所から独立させられた常吉だった。
「常吉さん。今の寝床はどこですか」
「お仙の住む入谷です」
「鳥羽さんが下谷坂本裏町を出るのですが、入谷では変わりませんね」
「入谷には時折り、あの衣紋掛け野郎が顔を見せるらしいので、下谷が空くのでしたら引っ越したいです」
「今日明日の内にも引っ越します。置いて在る荷物は使って下さい」
「分かりました」

 四人の稽古が明け六つを挟み四半刻ほど続けられた頃、常吉が、
「これから、駿河台の御旗本に鯛を届けに行きますんで失礼いたします」
「鯛とは言い客を見つけましたね」
「犬も歩けば棒に当たるでした。それじゃ、行ってきます」
 その後、兵庫は二人を相手に稽古を続け、実力の差を相手と新発田から来た侍たちに見せつけていたが、駒形から子供たちがやって来ると「駒形へ行きますので」と云い稽古を止めた。
着替え直した兵庫が心次郎、八重たちと駒形へ向かうのを、朝日が照らしていた。

Posted on 2015/01/26 Mon. 04:01 [edit]

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janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第65話 板挟み(その9)】 

 兵庫の足は駒形に向い、入った店は、何時もの事だがドジョウ屋だった。
門前の賑わいが、五つを回っても店を未だ閉めさせないのだ。
戸を開け入って来る兵庫をいち早く見た女中のお登世がやって来て、
「何時もの大盛りを二つですね」
「いや、私は食べたので普通でお願いします」
登世は奥に向って歩きながら
「どじょう鍋二つ、ご飯は大盛りと並盛」と叫び、食べ終わった客の膳を下げに行った。

 兵庫は押上を出てから鳥羽の悩みの元が何か、思いついたことを確かめるように尋ね始めた
「もし、国に戻らないと実家はどうなりますか」
「江戸の江田さんの墓参りに奥さんを案内することは言ってありますが、戻らなければ脱藩として扱われ、迷惑を掛けるかもしれません」
「それは、避けたいですね。どうでしょうか鳥羽さんは国に剣術修業すると便りを送ると同時に下屋敷に入ったら如何ですか。鳥羽さんの顔を覚えている方は多いと思うので、脱藩の嫌疑は無くなるでしょう。金の心配はしないで下さい」
「それは試してみます」
「次の質問ですが、後ろ髪を引く人は居るのですね」
「はい、富士の湯のおよしさんです」
「相手は知っているのですか」
鳥羽は頷いた。
「確か、およしさんは一人っ子と聞いて居ますので養子に入る覚悟が在るのですか」
「その辺の話ですが、およしさんは山中さんと同じで構わないと言って居ました」
「そこまで話が出来ているので、国に帰るべきか、江戸に留まるべきかの板挟みになり、悩んだのですね」
「侍としては悩むところでは無いのですが、山中さんや鐘巻さんの暮らしを間近で見て、羨ましく思うようになってしまったのです」
「それでは、侍の尻尾を残すつもりでしたら、改めてお願いです」
「何でしょうか」
「今以上に剣術稽古をして、屋敷内に鳥羽さんの腕前が知られるほどに高めて欲しいのです」
「何か狙いがあるのですか」
「はい、鳥羽殿の剣術の師は奥村先生、その帰参が狙いです。それとご子息が江川太郎左衛門殿の所で蘭学の修業をしていますので、異国船が来た時にはそれに対する勉強をした者が必要になります。奥村親子ならその任に応えられるでしょう。しかし、奥村先生は世渡りが下手ですから、手助けして頂きたいのです」
「分かりました。先ずは私の剣術の腕前を上げないと・・・どこの道場に通いましょうか」
「下屋敷から近い本所亀沢町の団野道場で直新陰流を学んで下さい。更に、藩邸内の道場にも毎日顔を出し、腕前の序列を上げて行って下さい。他に武者修行のため高倉さん、菅原さん、山中さん、私に叩かれて頂き、奥野先生に仕上げて頂きます」
「剣術の方は分かりました。奥村先生が帰参できるように機会ある度に働きかけます。その後・・・」
「およしさんの事は碁四郎さんに確かめてもらい、二人の気持ちが合えば、約束事をして頂きます」
「有難う御座います。その辺りの事をおいおい国の両親にも知らせながら、晴れて浪人となる日を待ちます」

 湯気が立ち上るドジョウ鍋が二人の前に置かれた。
脱藩して親に迷惑を掛けるか、国に戻り好いた女を泣かせるかの板挟みに悩んで居た鳥羽だったが、兵庫との話で微かな光明を見、気が晴れたのか、小腹がすいて来た兵庫と鍋をつつき始めた。

「それにしても、いつ、およしさんと、隅に置けませんね」
「浮橋で過ごして居た頃に山中さんに富士の湯に連れて行かれ、三・四度行った時におよしさんから声を掛けられたのが始まりです。その後、渡辺家で起きた事件の御沙汰を国に伝えるため一旦新発田に帰ったのですが、それが済むと江戸に戻りたくなりました。江田さんの奥さんに江田さんが桜田と名を変え生きていることを教え、墓参り名目で江戸に戻って来たのです」
「道場鍋をつつく時間では語り切れない物語が在るのですね」

Posted on 2015/01/25 Sun. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

【鐘巻兵庫 第65話 板挟み(その8)】 

 駒形の用を済ませた兵庫、心次郎、粟吉そして八重が押上の寮に戻ると子犬の泣き声で迎えられた。
以前、寮に女だけで暮らさざるを得なかった時に、犬を飼う話が留守番役の茂吉から出され、子犬を探して貰っていたのだ。
戸を開け、土間に入ると見知らぬ者が来たと四人の足元にまとわりつき八重に悲鳴をあげさせ、それを内職や大工仕事の稽古をしていた者たちが見て笑った。
その笑いの伝播が止むと、
「鐘巻殿、今日の商いは如何でしたか」
「良かったです。明日品切れに成らなければ良いのですが」
と背負って来た、具足金具の入った葛籠を床に下ろした。
駒形の商いが順調なのは、その利益により押上の寮が運営されていることを知る者たちにとって朗報だった。
「心次郎、朝の棒手振りの方はどうだ」
「養育所と継志堂の客を常吉さんから引き継いたので売れ残りが在りません。ただ、お琴さんの根切がきついのです。そんなに高い物を食べさせられないと言われています。もっと安く仕入れないと、くたびれもうけに成ってしまいます」
「そうか、始めたばかりだ。頑張れ」
「はい」

 兵庫が熱のこもる部屋から身重の志津が待つ奥の部屋に入った。
戻って来たのが表から聞こえてくる声で分かったのだろう、志津は茶を入れていた。
そして、着替えている兵庫に、
「鳥羽様、お昼は食べましたが夕飯には戻って来ませんでした。お琴の話では、なにか悩まれている感じがしたとか」
「鳥羽さんには申し訳ないことをしてしまいました。新発田の者たちを呼び寄せた陰の立役者でした。桜田さんの奥さん、新発田から来た十五人が江戸に来られたのも鳥羽さんの働きでした。鳥羽さんは新発田藩士の倅ですから、何時までも江戸には居られません。新発田に戻らねばならないのですが、何を悩んで居るのか、これから下谷に行ってきます」
「今からですと戻れなく成るかも知れませんね」
「そうなるかも知れませんので、茂吉さんには戸締りするように言っておきます」
 兵庫はまた着替え直すと、
「幾らか持ち合わせがありますか」
「とりあえず十両で宜しいでしょうか」
「それで構いません」

 兵庫が表の板の間で仕事をしている者たちに、「用事が出来たので」と言い、押上を出たのは五つ少し前だった。
人通りの無い暗い北十間川沿いの夜道を提灯の灯りが西へと、中之郷の街、大川に架かる吾妻橋と進むにつれ街行く者が増え浅草寺門前の賑わいは、急ぐ兵庫の足運びを遅らせた。
夜の街を歩いた兵庫が下谷坂本裏町の鳥羽が住む裏店に着き、鳥羽の戸口まで来たが灯りが漏れていない。
外から名を名乗り、声を掛けると微かな物音が聞こえて来た。
戸が開き寝ていたのか少々だらしのない鳥羽が現れた。
「夜分済みません。飯でも食いに行きませんか」
「そう云えば、腹が空きました。待ってください」
着崩れを直し両刀を腰にした鳥羽が出て来た。
兵庫は歩きながら、
「新発田に帰りたくないのですか」
「不思議なものですね。新発田を追われるように出て来た者たちと押上で働いていると、彼らの目が明るい未来を見ているのです。それに反し私は自分の未来を築くために働いて居ないことに気が付いたのです。ただ、己の未来のために働くとすれば新発田に戻っては駄目なような気がするのです」
「その気持ちは、理解できます。私自身が家を飛び出したのですからね。ところで、新発田に戻りたくない訳はそれだけですか」
「後ろ髪を引かれる思いは在ります」
「女ですか」
「はい。国に戻ったら、まず妻は持てないでしょうからね」

Posted on 2015/01/24 Sat. 05:10 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

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