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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第十九話 親善試合(その7)】 

 兵庫は縁側に座り佐那子が来るのを待った。
「突然お邪魔して済みません」
佐那子は昨日会った時とは違い、振袖姿でやってきた。
「何か先生から言付けでしょうか」
「いいえ、敵情偵察です。冗談です。本当に奥様が居られるか見に来たのです」
「そうでしたか。納得いたしましたか」
「はい、でもせっかく来ましたのでやはり敵情偵察して帰ります」
「どうぞ、気が済むまで」
そこへ平九郎がいぶかしげな顔をしてやってきた。
「どうした平九郎」
「その方は千葉先生の娘さんではありませんか」
「そうだ、わざわざ見に来てくれた」
「良いのですか。見せて」
「今の平九郎を見せれば、佐那殿が安心して帰られてしまうからか」
兵庫の言葉をまともに受け取ったのか平九郎
「健次郎、もう一度相手をしてくれ。心配させて帰してやる」
兵庫は笑いながら、佐那子も部屋から廊下に出、兵庫の傍らに座り見ていた。
二人が暫し打ち合ってからまたやってきた。
「佐那子殿如何でした」
佐那子は平九郎の顔に残る青あざを見ながら
「平九郎様は癖が強よう御座います。それでは千葉の中目録者には及びませんよ」
「どうだ、平九郎。人の教えは素直に受けなさい。平九郎の癖が直れば、健次郎も更に工夫をせねばならなくなる。こうして互いに術(じゅつ)を高める。これが切磋琢磨というものです。己のため、皆のためです」
強情な平九郎だが、佐那子にまで己の癖を咎められては我を押し通す気力もめげたようで、その後、慣れない打ち方でぎこちなくなったが、言われたことを直し始めた。

 佐那子は座敷に戻り幸となにやら話し、時には笑い声を外に聞かせていた。
庭の道場では四人が稽古を通して互いに気づいたことを教え合い半刻が過ぎ、疲れを見せ始めると、兵庫が加わり一人抜けの稽古に切り替わった。
佐那子は兵庫の足の早さ、竹刀の速さと正確さに目を見張って見ていた。
他のものとの立会いなら打たれる数も然程で無い栄次郎が嫌と言うほど打たれた後、やっと一人抜けの権利を得て廊下に腰を下ろした。
肩で呼吸をする栄次郎に佐那子が
「いつもあのように打たれるのですか」
「今までは一日二刻の稽古でしたが、今日から住み込みましたので三刻は覚悟しないと・・」
荒い息をしながら応えていた。

Posted on 2012/03/03 Sat. 05:29 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学