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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第43話 江戸の水(その12)】 

 ただ、一人島田にはその場の事情が分からず、
「わしも刀が欲しいが二日までではあのように竹刀を突き抜くことは出来そうもないな」
「島田殿。物事の順が違いますよ。私は二人、いや三人に足らざるを補う努力とその気構えに刀を与えたのです。今日は千葉道場での稽古ですが立ち会う者全てから何かを得る努力をして下さい」
「なるほど。私に足らないものは、どうやらその心のようですね」
「この世に師足らざるは無しが当流の気構えです。私も猫に学び、悪党に教えられました」
「良いことを教えていただきました」
その後も二人が話を続けていると、奥から声が聞こえてきた。
「島田様。食事の用意が整いました」
「えっ? 私だけですか」
「ここでは、その日の都合で食べる順が決まります。遠慮せずに食べ千葉道場へお出かけ下さい」
「それでは、お言葉に甘えて」
島田は朝飯を食べ終わると、昼の握り飯弁当を貰い、勝手口から長屋へ戻っていった。

 そして島田が出てから一刻ほど経って、呉服商野州屋の主・六左衛門が兵庫を尋ねてきた。
戸惑いを見せる六左衛門の様子を感じた兵庫は二階の座敷に招き入れた。
「何か御座いましたか」
「本日、栗橋関所の島田益次郎様が手前どもの店に参られまして、惣吉が相手をしていたのですが、含みある話になり私が出たのです」
「その、含みある話とはなんですか」
「あの日、襲った賊の片割れのやくざ者三人を捕らえ、調べていたら妙な話しがということです」
「妙な話ですか」
「相手の狙いはお金なので、鐘巻様の用心棒代と同じ五両を出したのですが、お気に召さず十両とられてしまいました」
「実は島田殿は一昨日ここへ剣術修業のため来られまして、今日はこのように雨ですので、桶町の千葉先生の道場へ出かけてもらったのです」
「そうでしたか。確かに剣術の道具を持っておられましたが、十両渡すと道具を置いたまま、桶町とは反対方向へ行かれました。道具を置いていったということは又来ると云うことでしょう。あのような方にまた参られては迷惑ですので、ご相談に参ったのです」
「分かりました。道具は引き取りますので、もしそちらに取りに行きましたら私が引き取ったと伝えて下さい。それと、もう金は払わないようにして下さい」
「剣術の道具にはお名前が付いておりました。剣術修業に来られた方が、大事な道具を置いていかれるとは、江戸の毒にでも中(あた)ったのですかね」
「そうは思いたくありませんが、直ぐに分かることです」

Posted on 2013/03/31 Sun. 04:30 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学