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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第57話 親子(その36)】 

「わしは添え物か。確かに知らぬうちに役に立っていたもなら、そんなところだな。ところで此度の事では益次郎とその周りの者に奉行として褒美を与えたが、お主ら五人に表だって褒美を与えることが出来なかった。だが手柄を立てた者を放っておいては、今後、危ない思いをしてまで力添えをするものが居なくなる。それは困る故、此度お主ら五人にはわしが身銭を切り、礼をする。これは奉行所内の者が手柄を上げた時、わしの一存にて遣わす褒賞だ。久坂には昨日渡してある。少ないかもしれぬが、お主らには一人一両の他、兵庫には研ぎ代として金二分を出すので受け取って貰いたい」
「有難く頂戴いたします」
伴の侍が三方を兵庫の前に置いた。
乗せられていた紙に包まれていた物を兵庫は押し頂き、懐に納めた。

 儀式めいたものが終わり、これでお仕舞かと思っていたが、播磨守は席を立とうとしなかった。
兵庫は、これを好機と考え、
「恐れながら、お願いの儀が在るのですが・・・」と切り出した。
「願い? 叶うとは限らぬがそれでも良ければ聞かせてくれ」
「有難う御座います。山形屋ですが闕所(けっしょ)になったと伺いました。その店の入れ札に今回手柄の在った益次郎を加えて欲しいのです」
「なんだ、そのようなことなら、わしに頼むこともなかろう。魂胆を申せ」
「恐れ入ります。入り札に際し、益次郎が落札出来ますようにお願いしたいのです」
「最も高額の入れ札の者が落とす決まりだ、それを破れと申すのか」
「いいえ、その様なことは申しません。一番高い札に十両ほど上乗せした札を益次郎が入れたように・・・工夫をお願いしたいのです」
「如何様(いかさま)をやれと申すのか」
「如何様では御座いません。益次郎夫妻のこと色々とお調べになりお分かりと存じますが、更なる御上の温情を施して欲しいのです」
「既に恩賞は与えた。更に温情を与える訳は・・・」
「此度の恩賞はお返しに過ぎず、御上に対し感謝の念が生じません。あの二人に生きる道を与えれば、感謝し、必ず多くの者たちが二人から生きる道を与えられると思うからです」
播磨の守は暫く黙していたが、
「竹林、兵庫が申したことは可能か?」
「容易でございます。最高入り札に更に十両の上乗せとなれば、乗って良い話かと存じます」
「さて、この話受けたとして、いくらになるか分からぬ金を、あの益次郎が用意できるとは思えぬ。鐘巻、お前が用意するのか」
「いいえ、養育所の金を出そうかと思っています。幸い、養育所設立願いには“運用金の内五割までは低利での貸し出しが出来るものとする”と成って居ますので」
「低利といっても、利息は馬鹿にならぬであろう。益次郎に返せるのか」

Posted on 2014/03/31 Mon. 04:02 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学