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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第62話 花冷え(その5)】 

 昼飯が終わり、子供たちが膳が片付けられている最中、料理屋志のぶを見張っていた常吉、乙次郎、仙吉の三人が駆け戻ってきた。
「先生、中間が戻った屋敷が分かりました」
「誰の屋敷でしたか」
「昌平橋を渡り、太田姫稲荷の近くの屋敷に入ったんで、辻番に聞いたんですが早川江雲と云う奥医師で番医師のお役だそうです」
「奥医師と薬屋の番頭、つながりますね。奥医師と、山形屋に入札を入れた喜久屋の皆殺しがどうつながるかは・・謎ですね」
「死人に口なしですからね」
「死人に口なしと奥医師が考えたとすれば、喜久屋は奥医師の手先だったと考えられなくも在りませんね。都合が悪くなったので始末したと考えられませんか」
「もしそうだとすれば、喜久屋の者を皆殺しにした者と奥医師がつながっていると考えられますよ」と話を聞いていた奥村が確信を突きはじめた。
喜久屋を皆殺しにしたのは、兵庫が密命を受け斬った南町定廻り同心の笠井だが、仮の話にしても、もうこれ以上口にするのは憚られた。
「この話はこの辺にして、御三方、見張りをもう少し続けて下さい。それと甚八郎と源次郎、今晩継志堂に泊まって貰えますか」と兵庫は話を変えた。
「分かりました」
「桜田さん、世帯道具を揃える用立ては内藤さんに言って下さい」
「有難う御座います。道具類は早苗が来てからにします。それより、私は常八に顔を知られていませんので料理屋に酒を飲みに来る浪人の役と云うのは如何でしょうか」
「悪くないですね。ただ、常八の顔を知らなくてはいけませんので、一緒に見張りをして教えて貰って下さい」
「分かりました」
「最後に、明日、伝馬町に山形屋の使用人五人を引き取りに私一人で行きますが、何か起こるといけませんので、常吉さん、乙次郎さん、仙吉さんは離れて同道して下さい」
「逃げたら捕まえろと云うことですか」
「いいえ、面倒を見ると声をかけてあるので、五人を無事継志堂まで連れて行きたいだけです。ただ、行きたくないと云う者は引きとめません」

「お昼の用意が出来ました。台所で食べて下さい」
母屋の廊下に出て来た小夜から道場に居る常吉等三人に声が掛かった。
「それじゃ、食ってきます」
そして、間をおかず、今度は千夏が道場にやって来て座り、
「兄上様、久坂様が帳場にお見えになりました」 
「分かった」
兵庫が帳場に行くと定廻り同心の久坂と岡っ引きの勇三が居た。
「鐘巻さん。外で話したいことが在る。ちょっと付き合って貰いたい」
「分かりました」

 外に出ると、
「鐘巻さん、常八のこと調べているようだが止めて貰いたい」
「やはり奉行所は常八を泳がせていたのですか」
「そうだとして、あの三人の目が光っていては泳げねぇだろう」
「私の方は継志堂に何か災いが起こるのを気遣ったのです」
「その気遣いは尤もだ。用心してくれ」
「用心するとして相手は何人ですか」
「常八が動かぬことには分からん」
「相手は・・・奥医者ですか」
兵庫は仕入れたばかりの情報を使ってみた
「何故知って居る。奥医者の誰かも知って居るか」
「教えますが、お返しお願いしますよ」
「分かっている」
「見張っていた志のぶにやって来た中間が太田姫稲荷の近くの早川江雲の屋敷に戻ったのを見届けて居ます」
「早川江雲だな、恩にきるぜ」

Posted on 2014/09/29 Mon. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学