09 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.» 11

洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カレンダー

【鐘巻兵庫 第62話 花冷え(その37)】 

 継志堂から駒形へ駆け戻った甚八郎、源次郎、常吉、乙次郎、仙吉の五人は燭台の火が一つ点る道場で、兵庫、奥村、山中碁四郎、内藤と面していた。
「狙いは私では無く、継志堂かそこに居る者たちか」と話を聞かされた兵庫がつぶやいた。
「鳥羽殿はわざわざ継志堂に芝居を打ちに来て、提灯を掛け買いしてその支払いに明後日、ここに来るとだけ強調していました。駒形の事は一切語らず帰りましたので、十中八九押し込み先は継志堂だと思います」
と店の中で鳥羽の話を聞いていた甚八郎が語った。
「分かった。これまでの話を整理するので聞いて下さい」
と云い、兵庫は虚空をにらみ話すことをまとめていたが、話し始めた。
「先ず、奥医師の使いの松屋仁吉が継志堂を買いに来て、私に断られました。この時点では奥医師の欲しかった物は、継志堂です。次に奥医師は口入屋に浪人を集めさせました。それを知り私は、私が狙われていると思いました。この時点で奥医者の狙いは邪魔な私を殺し継志堂を手に入れるのではないかと私は思いました。しかし、雇った浪人を継志堂に押し込ませるとしたら奥医者の狙いは継志堂でも雇人の命でもなくなります。もちろん金でもありません」
「先生、狙いが継志堂でも雇人の命でも金でもないことを、もう少し易しくお願いします」と常吉が催促した。
「継志堂に押し込んだところで、私が生きている間は継志堂は手に入りません。雇人を殺すためならわざわざ継志堂を二百両も払い、事前に私から買う必要はないでしょう。また押し入っても今の継志堂から奪える金はあの浪人を雇う金より少ないでしょう。奥医者の狙いは他に在ると私は思うのですが」
話を聞かされた源次郎が、
「先生、私もその様に思えてきました。だとすれば、狙いの物は殺された山形屋が奉行所にも探せない所に隠してあり、それを知って居る者が居るとすれば番頭の常八でしょうか」
「その読みで良いでしょう。押込みには常八が加わる筈ですから、これからも常吉を見張る必要がありますね」
「それは、あっしら三人に任せて下さい」
「お願いします」
「先生、狙いの物は二百両以上の価値が在ると云うことですよね。明日一日かけて探しませんか」
「甚八郎、奥医師にとっては二百両の価値があっても、我々にとっては価値の無いものかもしれませんが探してみましょう。見つからない場合は押し込む者たちに探して貰いましょう」
「先生、探して貰うとはどういうことですか」
「私は押し込む者たちの狙いが何か知りたいのです。押し込んだ者が何もしない内に捕えてしまっては、二百両以上価値のあるお宝が何なのか分からず仕舞いに成ってしまう恐れが有り、お宝を残したままではまた襲われかねません。ですから空き巣に入って貰い思う存分探させ、出来る事ならそのお宝が奥医師に渡される所を一網打尽にして、山形屋事件以来の曇りを晴らしたいのです」
「兵さんそれには奥医師を屋敷からおびき出さねば叶わぬぞ」

Posted on 2014/10/31 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学