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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第96話 鬼の居ぬ間に(その5)】 

 兵庫は北村徳三郎が兵庫の誘いに乗り、口入屋から用心棒の職を求めて来た浪人を演じた柔軟さを好ましく思った。
「先生が仰ることは尤もです。私はお二人さんを何処に呼びに行けばよいのですか」
「了源寺の茶店だよ。十人居るから皆が出払うことは無い。必要なら頭数を揃えて来られるぞ」
「それは良いですね。ただ了源寺?・・・」
「ここから近い阿部川町だよ」
「分かりました。先生お聞きの通りです。今月は先生に用心棒をお願いしますが、来月からはこちらの方、えーと・・・」
「東都組の伊佐次だ、こいつは忠治だ」
「東都組と云うことは組の頭が居るのですね」
「ああ、半蔵親分だよ」
「それでは近々挨拶に行くことにしましょう」
「ちょっと、伊佐次さんに忠治さん、話が有る」と北村がこいつらと呼んだ二人をさん付けで呼び、話し掛けた。
「なんだ」
「そう怒らんでくれ、食うためにやったことだ。お主ら半蔵親分に、わしを雇って貰うように頼んで貰えぬか」
「断る、顔の腫れが引かぬ事にはその気にならねぇ」
「先生。ここの仕事が終わるまで未だ二十日以上ありますから、腫れも引きますよ。手当てを貯めて、土産を買い、半蔵親分に頼みに行ったら如何ですか。もしかするとここより手当てが良いかもしれませんよ」
「なるほど、ところで伊佐次さんに忠治さん、お手当は幾らだか教えてくれ」
「ごつい顔をして、女みてぇにさん付けで呼ばねぇでくれ。気持ち悪い。それより話が済んだのなら縄を解いてくれ」
北村が兵庫を見た。
「縄は解きますが、この辺りで悪いことをして嫌われ者にならないで下さいよ。来月頼みづらく成りますから」
「分かった」
縄を解かれたやくざ者二人は、継志堂を出ていった。 
それを見送った兵庫は、継志堂の者たちに、
「今帰ったやくざ者は東都組の者でした。駒形の町家にどの程度被害が出ているのか確かめ、放って置けないようなら、流れ星が押し込み東都組をつぶすことにします。数日中に出番が在るかもしれませんので心得ておいて下さい」
「分かりました」
「尚、また東都組の者が来るといけませんので、暫く北村殿を隣に控えて貰いますので、皆さんは無理はせぬようにして下さい」
「おお、私の御役目が決まりましたか」と嬉しそうな北村だった。
「応援をもう一人付けますので、無理はしないで下さい」
「分かって居る。ところで流れ星とは何だ」
「それは、内藤さんに聞いてください。それと昼飯も頼んでください。私は彦四郎屋敷と押上に戻り、人の手配をしてきます」

 継志堂を出た北村は養育所へ、兵庫は川向こうの本所へと戻って行った。
彦四郎屋敷に入った兵庫は広間に、彦四郎、矢五郎と手隙の庭番方を集めた。
「本日駒形の継志堂に、東都組のやくざ者二人が用心棒代をせびりに参りました。それを、北村徳三郎殿がこぶしでもって倒しました。なかなかの武辺者のようですがその話は後ほどとします。東都組をこのままにして置けませんので、その大義名分を確かめた上、押し込み、二度と悪事が働けぬように晒なりして恥をかかせたいと思って居ます。その話し合いを駒形で行いますので、昼食後、矢五郎殿と庭番方から一人、集まるようにお願いします」
「二人で良いのか」
「先ずは調査と警備ですが、相手方も十人は居るとの情報も在りますので、押し込むときはそれに負けない人数で押し込む予定です。押上にも話さねばなりませんのでこれで・・」

 押上に戻ると、広間に根津甚八郎、近藤小六、常吉そして志津を集めた。そして、彦四郎屋敷と同じ話をしたうえで、
「被害状況を確かめたいので、昼飯を食べたら乙次郎さんを駒形の養育所へ行かせてください。志津は前回の流れ星以後に養育所に入った方々の覆面を頼みます」
「旦那様、駒形が手薄になった様ですが、東都組を退治した後、如何するのですか」
「困って居ます」
「戻りませんか」
「そうですね。でもそれは退治した時にもう一度話し合いましょう」

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Posted on 2017/03/24 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学