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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第98話 残月(その6)】 

 茶店の奥座敷、兵庫の前に東都組の者の顔を知る仁吉、心太、三五郎の三人と中川矢五郎と常吉が集まった。
「常吉さん、阿部川町の半蔵の母親が住んでいた裏店はどうなっていましたか」
「先ず、大家の話では荒らされた跡は無いそうです。それと家の清めは済ませたそうですが、訳を言ったうえで年内は唯で貸すそうですが、未だ誰も来ないそうです」
「来ないと言えば、碁四郎さんが来て居るはずですが、一緒ではなかったのですか」
「山中様は和尚に話しが在ると云い寺に行ったきりで戻って来ていません」と心太が応えた。
「随分と長い話ですね。折角薪割の仕事から解放させてあげたのに・・・」
「来るか来ないか分からない相手の番をするより、薪割の方が性に合っているのではありませんか」と常吉が・・
「そうかもしれませんが、碁四郎さんは坊さんを餌にする悪い癖が在るのです。和尚に後で叱られなければ良いのですが」
「坊さんを餌にして、何をするのですか」
「賭け碁です。碁四郎さんは負け碁を何とか勝ったように思わせるのが上手いのです。負けた気がしない相手は、もう一番となるのです。いかさまサイコロのようなものです」
「そんなに強いのですか」
「常人では勝てませんよ。本所相生町の坊様と一刻打って打ち掛けの勝負をしたという噂ですからね」(【湯上り侍無頼控え 七話 水商売(その3)】参照)
「相生町と言えば本因坊家の屋敷が在る所ではないか」
「矢五郎殿、あくまでも噂です」
 噂話をしていると、碁四郎が戻って来た。
「済みません、快延和尚が放してくれないもので」
「それで、幾らふんだくったのですか」
「ふんだくったなんて口が悪いですね。あちらが賭けないと強く成れないと云うものですから、なけなしの一朱を賭けただけですよ」
「それで、幾らふんだくったのですか」と繰り返した。
「一朱が二朱に成り、二朱が一分に成り、一分が二分に成り、二分が一両になったところで私が白石を持ちましょうかと云ったら、今日は調子が悪いと、解放してくれたのです。ところで東都組の者は現れましたか」
「そちら様はご満悦な顔ですが、こちらの顔も満足している顔に見えますか」
「待ち人来たらずですか。急な話で手配したのですから相手の思惑とずれて居るのかも知れませんね。今日は仕方ないでしょう。明日から策を変えてみたら如何ですか」
「何か思い当たるような策が在るのですか」
「私が考えられることは坊さんを騙すことぐらいです。ここは矢五郎殿のご経験から相手の動き方を推測して頂くのは如何ですか」

 中川矢五郎の家は代々奉行所同心だったが、跡を継いだ彦四郎が両替商宮古屋への手入れで重傷を負い、お役を辞したのが七月の末だったのだ。

「餅屋は餅屋ですね。矢五郎殿何か良い手立てはありませんか」と兵庫も碁四郎に同調した。
「鐘巻さんが半蔵を斬った後、手下は蜘蛛の子を散らして逃げたようだが、悪党が取り敢えず身を隠す所と云えば深川だ。東都組の手下もそれに倣ったとして考えると、浅草に姿を見せたと云うことは必ずどこかの橋を渡ることに成る。探すには大川に架かる橋、あるいは神田川に架かる橋を見張れば良いことになる。だが、手下どもの顔を知る者は三人しか居らぬので神田川に二人、もう一人は用心のためここ茶店に配置すべきだろう。他に大川から浅草に入るとなると、吾妻橋も見張らねばならぬが、そちらは継志堂に来た手下二人の顔を知る鐘巻さんか継志堂の者に頼むと云うのはどうかな」
「流石ですね。矢五郎殿の方策の方が早く東都組の者を探し出せるでしょう。早く探し、東都組の意図を確かめ、それが悪なら流れ星が断念させることで、我々以外の人たちが受ける被害も減らせます。他に策がなければ矢五郎さんの策を実行する役割分担を決めることにします」
「兵さん。役割を決めましょう」碁四郎が促した。
それには皆が同意する様子を見せた。

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Posted on 2017/05/08 Mon. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学