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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第98話 残月(その28)】 

 神田川沿い浅草平右衛門町に在る船宿・浮橋に山中碁四郎を訪ねた。
「先ほど、元東都組の者を中之郷より駒形の継志堂に移し終えました。餌に食らいついた者が居たような気がしています。山場はやはり十八日の茶会と決め、その日の段取りについて相談に参りました」
「先ず兵さんの腹積もりを聞かせて下さい」
「守る場所、攻める場所が合わせて五か所あります。その五か所に剣術方を一人ずつ配置することにしたいのです。押上の守りには近藤さん、中之郷の守りには坂崎さん、駒形は甚八郎に任せたい」
「守るべき所の割り当てが済んだと云う事は残るのは守りではなく攻めですね」
「碁四郎さん、刺客を依頼した繁蔵と引き受けた久蔵、どちらがお望みですか」
「どっちもどっちですね。残り物に福が在りそうです」
「そうですか。それでは遠慮なく私は芝神明の久蔵を懲らしめに行きますので、碁四郎さんは入谷の繁蔵を頼みます」
「分かりましたと云いたいのですが、面識がないのです。間違った男を懲らしめたくありません」
「それでは先日拉致した喜重さんに親分さんの首実検をお願いしてみます」
「そうして下さい。それともう一点、万が一ですが親分自らも駒形に出向き留守の場合どうしますか」
「茶会にかなりの費用が掛かると思いますので、親分が居ても居なくても少し家探しをして下さい」
「と云う事は、悪党から金を巻き上げる、流れ星の仕業にするのですね」
「芝の久蔵の家にも流れ星として押し込むことにします。その辺の段取りは今、潜む所を探しに行っている保安方の鬼吉さんが戻りましたら、こちらに来させますので話し合うなり下見をしておいて下さい」
「待って居ます」

 浮橋を出た兵庫は駒形に戻らずに両国橋を渡り押上に戻った。
部屋には、十八日に中之郷養育所で催される女たちのための茶会のことで相談に来る女たちが居た。
兵庫が戻って来たことで話に水を差されたようで、話が止んだ。
「皆さんやって居ますね。そのままで結構です。男たちとの打ち合わせに戻って来ただけです」と顔を見せただけで済ませ、庭に下り、近藤小六と根津甚八郎に声を掛け、暇を持て余しているだろう勘三郎と富五郎の部屋に入った。
「そのままで結構です。小六さんと甚八郎が来ますので話を聞いてください」とお起き上がろうとする二人を寝かせた。
 甚八郎と近藤がやって来て寝ている二人を挟むように兵庫と向かい合い座った。
「先ほど山中さんと十八日に向けての役割を話し合いました。剣術方の私、碁四郎さん、坂崎さん、近藤さん、甚八郎の五人の役割を話しますので、今日から動き始めて下さい。近藤さんはここ押上の担当です。今日・明日から保安方も居なくなりますのでその分大変ですが宜しくお願いします」
「分かりました」
「甚八郎は駒形の指揮を取ってください。後で決めてきたことを話しますので今日にでも行って下さい」
「分かりました」
「坂崎さんは中之郷の保安を仕切ります。碁四郎さんは入谷の繫蔵宅に押し入る予定です。私は芝神明の久蔵宅に押し入る予定です。他に保安方の常吉さんは私付きの密偵を、鬼吉さんは山中さん付きの密偵です。乙次郎さんは甚八郎付きです」
「鐘巻様、東都組の者を守る者は根津様と乙次郎さんだけですか」と勘三郎が尋ねた。
「戦闘力が確かめられているのはそうですが、東都組の十人には自己防御力を高める稽古を今始めています。それと他に実戦で捕縛を経験させた六人が居ます。頭数は居るのですが駄目ですか」
「私が出て来る時、浪人二人が来て居ました。あれから久蔵は四人を失って居ます。私ら三人が船宿浦島に押し入ったのは小遣い稼ぎでした。酔った者を斬るのに久蔵は高い金は払う男ではないのです。しかし、今は話が変わって居ます。腕の良い者が高額で雇われて居るはずです」
 話をしていると部屋の外を裏庭に向かう常吉と鬼吉が通りながら部屋の中を見た。

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Posted on 2017/05/30 Tue. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学