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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第99話 標的(その33)】 

 客人たちを見送った兵庫等は再び道場を移築するために整備した広場に集まった。
「先ず、皆さん本日は寄進柱運搬での働きにつきましてお礼申し上げます。特に仙吉さんには無理を快く引き受けて頂いたことを感謝いたします。富沢町を留守にさせ申し訳ございませんでした。なお、ご覧の様にこれだけ人が増えますので、何か手不足が生じるようなことが起きましたら、遠慮なく声を掛けて下さい。これでお引き取り頂いて結構です。有り難うございました」と兵庫が頭を下げ、居並ぶ者たちも倣った。
「今日は、楽しませていただきました。お礼を言うのはこちらの方です。日頃より娘・鶴を薬研堀で預かって頂き、山中様には色々とお世話頂いて居ります。それでは失礼いたします」
「碁四郎さんと一緒に戻って下さい」
碁四郎と仙吉の二人が我が家へと帰っていった。

 二人の姿が広場から消えると、兵庫が話を始めた。
「了源寺門前町、入谷、芝・神明町から来られた皆さんへ申します。皆さんに養育所に残って頂く条件として日当一朱、飯付き、寝床付きを約束いたしました。それと今、身に付けている物など既にかなりの金が養育所から出て行っています。それは皆様に期待するから出来たことだと思って下さい。それでは皆さんに期待することを云います。当面の仕事としては解体した道場の再建です。これについては元宮大工の彦次郎さん、大工の亀吉さん、大工修行中の水野親子の指示に従って下さい。大工修行をするつもりで取り組んでください。当面の仕事として他には使い、草鞋作り、薪割、水汲み、時には魚釣り、己の着ている物の洗濯、人の手助けなど雑多なことです。その雑多な仕事については剣術しか能がない私のしていることです。次に先の仕事のために子供たちにもさせていることですが、剣術の稽古です。稽古着を着ている時の移動は出来るだけ走るように心がけて下さい」
「鐘巻さん、暫くここは移築を行うので使えなくなります。これだけ人が増えると、押上での剣術の稽古も分けなければと思うのですが、お考えが在りますか」と剣術方の坂崎が聞いて来た。
「先ほど柱を運んできた四隊を一番隊から三隊を骨格にして組み直して下さい。ただし山口殿は押上詰めに成って居ますので除いてください。三隊は交代で道場建設、剣術稽古、その他の仕事を担うようにし、午前と午後で仕事を変えましょう。例えば第一隊が午前は建設、午後は剣術、翌日の午前はその他の仕事、午後は建設と云った塩梅です。彦四郎さん、皆さんが慣れるまで各隊の当番表をお願いします」
「分かりました」
「それと矢五郎さんに一人付けてあげたいので、適任者を探して下さい」
「有り難い話ですが、狙いは何でしょうか」
「黒船来航以後浅草、了源寺門前町に半蔵が東都組を繁蔵が入谷に一家を構えました。それが容易に出来た訳を知りたいのです。何方か知っていますか」
「それは・・」と元東都組の久八が言い、口をつぐんだ。
「久八さん、教えて下さい」
「内緒だと兄さんに・・・」と口走ったことを後悔していた。
「兄さんとは竜三郎さんですか」
「そんな所で」
「それでは二人の約束は守って下さい。私が直に、皆さんに聞いたように聞いてみます」
「第三、第四の新興やくざ者が根付くことが心配なのですね」と彦四郎推察した。
「はい、ですから、訳を知り、そうならない様に手を打ちたいのです」
「分かりました。父上と息の合いそうな者を選びます」
「お願いします。私はこれから、女子供たちと押上に戻ります」
子供たち、そして千丸を抱く志津、お仙を守る男たちが押上に戻っていった。

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Posted on 2017/07/31 Mon. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学