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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第105話 ぬくもり(その4)】 

 兵庫は二人を案内しながら外廊下まで来た。
「奥様は晴れ着の方へ、加戸殿は会いたいでしょうが広間の方へお願いします」

 その広間の上座には座布団が六枚並べられていた。
「兄上様、お客様、奥にお座りください。中央が平田様と須磨さまです」
と廊下に座るお竹が伝えた。
「分かりました」
上座に来た兵庫が、「ご夫妻で新郎・新婦を挟んで座わりましょう」
上座に向かって左端に兵庫、その隣に加戸が座ると、部屋外の廊下で様子を見ていたお竹が、廊下に吊るされている板木を打った。
これが女たちの段取りだったのだろう、それまで子供たちは何処に潜んでいたのか、廊下下の庭に姿を見せ、廊下を見上げるように並んだ。
準備よしと、花嫁が居る部屋の外にいたお松が中に声を掛けた。
 障子が開き姿を見せ、出て来たのは志津を先頭に平田が、そして母・麻に手を取られた須磨が出て来て、広間まで廊下を歩み始めた。
ゆっくりと廊下を進む花嫁道中を、子供たちが見上げた。
 花嫁の姿が広間に入ると、庭に下りていた子供たちの姿が消え暫くすると、選ばれた女の子が昼の膳を持って部屋に入り、上座の六人の前に膳を置き部屋から出て行った。
 
 それほど間を置かず、膳を持った子供たちが入って来て、片側に詰め十五人が座った。
そして次の十五人はもう片方に、その次の十五人が最初に入り並んだ子に面するように座り、最後の十五人が二番目に入った子に面するように座った。
 そしてこの屋に住む年寄りが、花嫁と面するように下座に座り、障子が締められた。
「今日は、以前の皆と同じ、天涯孤独だった平田殿と須磨殿の祝言が行われます。新郎新婦の隣に座られて居るのが須磨殿のご両親様です。婚礼は食後一時ほどしたところで始めることにします。尚、婚礼の式典には入谷の竜三郎さんの所にいる二十三人の子供と出向いて居る三人も加わります。他にもお客様が来られますので、行儀よくして下さい。それでは、頂きます」
「頂きます」が唱和された。
そして、食事はあまり食べない須磨が箸を置いて暫くすると、兵庫が
「ご馳走様でした」といい、食事は終わった。
膳が子供たちに依り下げられると、
「何かと疲れたでしょう。あんなに沢山の目で見られたのですからね」
「あの憧れの目を傷つけられませんからね」
「この先、いろいろ・・その話は部屋に戻って致しましょう」
志津、須磨と麻が部屋を出て行った。
「平田さん、色々在ると思うが、よろしく頼みます」と加戸が頼んだ。
「はい、父上」
「それと鐘巻さん、倅と娘をよろしく頼みます」
「頼むのはこちらですよ。先ほどみたでしょう。子供たちは増え続けて居るのです。自立出来るようになるまで育てるのは苦労の連続ですからね」
 そこに歓声が上がった。
兵庫、平田、加戸が廊下に出てみると、竜三郎に連れられた子供たちだった。
「子供たち、話が有るので特に用の無い子は上がりなさい。竜三郎さん、夕方には子供たちを届けますのでお戻りください」
 再び広間が子供たちで埋まった。
「人が増えて居るので、向島に建てたような家を建てなければなりません。ここに居ない子が未だ浅草や深川にどのくらい居るのか、教えて下さい」
子供たちの間で、名が飛び交い、その度に安否が話し合われた。
そして、文吉が
「兄上、出た名前が十人ほど在ります。ほとんどが群れるのを嫌う者たちで、やくざ者の下働きをしているようです。浅草や深川では助け合いながら暮らしている子供たちの集まりは少ないようです」
「そうですか、参考に成りました。ありがとう。婚礼が始まるまで自由にしなさい」
子供たちが、部屋から出て行った。
「私は仲人を呼びに行って来ますのでしつれいします」
兵庫も部屋から出て行き、広い部屋に平田と加戸が残された。

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Posted on 2018/02/01 Thu. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学