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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第105話 ぬくもり(その14)】 

 台所とつながった座敷で、大人たちが今後どのように昇龍院を使うか話が始められた。
その冒頭に、兵庫が、
「子供たちを日中、この家に只居るだけのままに置かないように居て下さい。浮浪時代は動くと腹が空くため動くのを減らしていたため、虚弱です。先ずは体力を養わせてください」
「子供たちのことを考えるのに異論はありません。ただそうして上げ、続けられるのも大人たちに物心の恵みがあればこそです。この店の朝・昼・晩の手助けは必要に思えますが」
「そうですね、手助けについては、押上で一通りの修行をした娘を入れる様考えて貰います。それまで都合付けながらお願い致します」
「先生、道具類が揃って居ませんので、立ち居振舞い、作法、言葉遣いなどを志乃殿にお願いし、我らは男の子と汗を流すことに致します」
「そうして下さい。私は一旦押上の戻り、用を済ませたら寺の方に参ります」

 押上への帰り道兵庫は再び駒形に寄った。
「内藤さん、高田寺内の塔頭・昇龍院を借りられることに成りました。今まで居たものは全員追い出したので留守番を兼ね泊まることも許されました。住み込む者が決まったら寝具なども用意しないといけません」
「昇龍院の住人のことでしたら、大神田太白さんにお願いしたら如何ですか。落ち着かない様子でしたから」
「中之郷の離れを使わせてあげれば良いのでしょうが、甚八郎と北村殿の夫婦者に貸し与えていますからね。太白さんは・・・」
「未だ、戸澤屋に詰めています」
「戻ったら、話をしてみます」
「そうして下さい。手習いの道具の方は今日中に揃う段取りに成りました」
「それを見たら子供たちも喜ぶでしょう」

 兵庫は昼前に押上に戻ることが出来た。
部屋に入ると加戸彦六郎・麻夫妻が居た。
「須磨殿を子供たちに奪われてしまいましたか」
「そんなところです。でも奪われてよかったよ。須磨を生まれ変わらせてくれたからな」
 須磨は明け六つ前後の短い時間に飯を食べに押しかける男たちへの配膳を済ませると、向島に戻り、住人や朝稽古を終えて帰って来る子供たちに出す朝食作りに参加する。
そして、また押上に来て子供たちの指導に関わるのだ。
平田と所帯を持ち、住まいを押上から向島に変えたことで、朝は以前より忙しく成って居た。
親にとって須磨のその姿は、抱いていた心配事を無用にしていた。
 鐘が鳴り、昼飯を広間で一緒に食べた加戸夫妻が番衆町の屋敷に帰えるのを、子供たちと見送る須磨と平田だった。
そして、文吉と巳之吉も八丁堀へと帰って行った。

 押上の養育所から婚姻の余韻が消えた。
部屋に戻った兵庫が、志津に
「竜三郎の店が繁盛しています。今は子供たちの中に店で働いて居た者が居るので手伝わせていますが、手助けが出来るだけに歳も高いです。集中して学ばせたいので、代わりの者・一人で良いので誰か送り込み者を選んで下さい」
「分かりました。向島の千夏とここに居る小夜の二人を明日にでも送り込み、勘八とわかめは呼び戻しましょう」
「最初に来た女の子で残るのはお玉だけになりますね」
「そうですね。出来れば、駒形、芝・神明町にも送る者を育てなければいけませんね」

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Posted on 2018/02/11 Sun. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学