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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第105話 ぬくもり(その15)】 

 浮浪の子の二十三人の他に世話をする者たちまでの食事の世話をしながら、飯屋としての商いもしなければならない竜三郎の妻・おときの忙しさは察するに余りあった。
その手助けに千夏と小夜を行かせる話を取り付けた兵庫に、志津が
「これから向島へ行き、千夏の引き取りと、その代わりにかえで、あやめ、すみれ三人を連れて行き受け入れをお願いして頂けませんか」
「そうですね。向島もかなりの人数を抱えている割には女の手が足りませんからね。任せて下さい」

 部屋に連れて行くかえで、あやめ、すみれの三人が呼ばれ、志津から呼ばれた経緯が話された。
三人は嫌な顔一つ見せずに話を受け入れた。
それは向島には知り合いの男の子が多いこと、また主の村上茂三郎の妻・縫が預かっている孫娘の蝶に女友達が必要なことも知っていた。さらに、選ばれることは日ごろの努力が認められたことに他ならなかったこともあった。

 向島の養育所に着くと、低い生垣の中で手拭いで頬被りして働く村上の姿っだ。
「茂三郎さん、ご相談があり参りました」
「助っ人でしたら大歓迎ですよ」と後ろについて来た娘・三人を見ていった。
「そんな所ですが、事情も聞いて頂きたいので暫く付き合って下さい」
「分かりました。手を洗ってから行きますので、入って待って居て下さい」

母屋入った兵庫が見たものは、囲炉裏の近くで留守番をしながら繕い物を片付けている縫と、子猫と遊ぶ孫娘の蝶の姿だった。
客が来たことにいち早く気付き、手仕事を止めた縫が、
「鐘巻様、いらっしゃいませ、お上がりください」
「お願いがあり参りました。済みませんが、千夏を呼んで頂けますか」
座をたった縫が連れて来たのは千夏と先程まで押上に居た須磨だった。
そして、汚れを落とした村上がやって来て話す相手が揃った。
「やって来た訳は・・」と入谷の竜三郎の飯屋で二十三人もの子供たちが暮らし始めたことをいい、その子たちや客のための賄い仕事が間に合わなくなっている事情を説明した。
「事情は分かりましたので、私どもで何をすればよいのでしょうか」
「賄いの手助けと養育所のことを教えるために千夏と小夜の二人を送ることにしました。こちらから千夏が抜けますので、その代わりと負担を少しでも減らすために、こちらのかえで、あやめ、すみれの三人を預けたいと、ご相談に参りました」
「鐘巻様、有り難うございます。千夏さん、小夜さんと頑張って下さい」と縫が同意した。
「二十三人も増えるのですか。男と女、それぞれの人数はどう成りますか」と村上が尋ねた。
「全員で八十五人に成ります。確か男が五十二 人、女が三十三人です」
「八十五人となると今ある養育所だけでは収容が難しそうですね」
「はい、理由を着けて迎い入れないのは、その点の事情も在ります」
「しかし、飯屋にいつまでも閉じ込めて置くのは難しいでしょう」
「はい、なんとか高田寺内にある塔頭の昇龍院を丸ごと借りられるようになりましたので、行き来、あるいは泊らせることも考えています」
「何かお手伝いできることがあれば、良いのですが」
「有り難うございます。その時は、またお願いに参ります。かえで、あやめ、すみれ、明日の予行演習です。迎えに来るまで手伝って下さい」
「はい」と三人が応えた。
「千夏、明日、朝食後迎えに来ますので荷造りしておきなさい」
兵庫は急ぎ押上に戻った。

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Posted on 2018/02/12 Mon. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学