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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第105話 ぬくもり(その16)】 

 兵庫は表口から入ると、母屋の入口に足を踏み入れた。
そこには土間に続き、作業が出来る板の間が在る。
蔵が無いため、米俵が積まれて居るのが、少々違和感が在るが、作業場であることには変わりはない。
そこでは彦次郎と水野賢太郎そして数人の男の子が文机の組み立てを行っていた。
「皆さんご苦労様です。あれ? いつものとは違いますね」
「はい、運びやすいように足を畳めるようにしました。白木のままでしたら今日中に出来ますが、どうしますか」
「そのままで、糠袋を渡し磨かせましょう」
「分かりました」

 奥の自室に入った兵庫は志津に
「これから、入谷の子供たちを見てきます」
「お願いします」

 兵庫はどこにも寄らず高田寺を尋ねた。
門を潜ったが子供たちの姿も、子供たちを見守る保安方の姿も見当たらなかった。
兵庫は庫裏に雲海和尚を尋ねたが返事が無いので、昇龍院に回ると、弁財天への参道の天道の姿を見た。
 兵庫は来たことを知らせるために、一旦お祀りして居る弁財天を拝み、昇龍院の表口からは入らずに、脇に回った。
「ご苦労様です。子供たちは中ですか」
「はい、庭内の掃除をしています。脇から入れます」
「話が有りますので、天道さんも中へ」
閉められている柴の戸を開け二人は中に入った。
庭では男の子が落ち葉を掃き集め、焚き付け用の小枝を拾い、人が住む庭へと変えていった。
その様子を見守る新藤が歩み寄って来た。
「掃除以上のことをしないと折角の庭が泣きますね」
「前の住人が追い出されたというのも分かります」と別の事情が在ったことを知らない相槌を打った。
家に近づくと、女の子が家の中を掃除して居た。
廊下沿いを歩き奥まで行くと、部屋の中で和尚と須磨が話していた。
「和尚様、お話があり参りました」
「なんですか、ここを使わないという話は困りますよ」
「そんな勿体無いことはしませんよ。明日から子供たちの手習い道具とその留守番を兼ね大人を入れたいと思って居ます」
「大人、私が知っている方ですか」
「いいえ、庭師と宮大工です。ずぼらな弁天様と思われて居るかもしれないので、まずはお住まいから小奇麗にするためです」
「結構な話ですが、前の主がずぼらだったから放置して来たわけではないでしょう」
「もし、お金の話でしたら心配しないで下さい。養育所の者がしますので手間賃は無料です。ただ弁天堂は傷んでいますので、直すとなると手間だけで済みませんので御金が掛かります。ですから高い新材を使っての修理は出来ません。雨漏りを直したのち、弁天堂の天井の浸み抜きを考えます」
「手間賃抜きなら、多少の買い物は話に乗るので云うように言ってくれ」
「分かりました。ただ手間賃を取らないのは昇龍院だけですよ。本堂を直すには養育所の者や知り合いだけでは手が足らないでしょうから」
「分かった。他に賄いも入れるのか」
「いいえ、弁当を作って運ばせ温かいものを食べさせます」
 兵庫は明日のことを伝えると、押上に戻って行った。

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Posted on 2018/02/13 Tue. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学