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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第49話 騙り(その5)】 

 久坂は兵庫が十手をお上から受けた訳を聞いて、仲間意識でも湧いたのか
「ところで鐘巻さん。御三家を騙った者たちの話だが、分かったことがある」
「出来れば教えて下さい」
「三人組の二人の斬殺死体が浅草田圃近くの長国寺の外生垣と畑の間で見付かった。どうやら仲間割れのようだ」
「どうしてその二人が仲間と分かったのですか」
「死んだ侍と小者の近くに捨てられていた鋏箱に葵紋が、それで金貸屋に仏を拝ませて分かったのだ」
「残った一人は金を独り占めしてどこかにもぐり込んでしまったとうことですね」
「ああ、殺された者の懐に財布などは無かった。ほとぼりが冷めるまで目立たず暮らすこったろう」
「それでは、もう木戸番は宜しいのですね」
「それは、わしが決めることではない。十手を寄越したお方に聞いてくれ」

 久坂が帰った後、兵庫は帳場から奥の部屋に行ったが、そこは女たちの針仕事の場になっていた。
「旦那様。昼まで少々間があります。お休みになられたら如何ですか」
「眠気覚ましの話を聞かされました。確かめに行ってきます」
「どちらまで」
「浅草田圃近くの長国寺ですが、道が分からないので大黒屋の道太郎さんに教わります」
「そのお持ちの物は?」
「これ、十手です。夜に使いますので仕舞っておいて下さい」
兵庫が出かけようとするのを見て
「その格好で行かれるのですか。お刀を・・」
「要りません、侍姿になると逃げている騙り者と似た格好になり、奉行所の目が集まりますので」
話を聞いていたお道、お琴、さえの三人娘が笑った。

 着流しの無腰で出かけた兵庫は、途中、花川戸の大黒屋で長国寺の場所を尋ねた。
「長国寺は箕輪へ行く途中、吉原の西にあります。絵図で確かめますか」
「お願いします」
待っていると、店先に絵図が広げられた。
「鐘巻様。此処ですよ」
「なるほど、馬車道を北へ、浅草寺の北の道を西へ突き当りまで、そして北へ田圃の中を行けば良さそうですね」
「そんな按配ですが、この時期見るべき物はありませんよ」
「それが良いのです」
「なぜ?」
「探し物は、気を散らすような物が無い方が、都合が良いからです」
「なるほど。浅草寺さんで人を探すより、長国寺で探すほうが楽ですな」
「はい、田圃の中の寺、直ぐ探せます。行ってきます」

Posted on 2013/06/28 Fri. 04:28 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

この記事に対するコメント

変換ミスです。


カテンベさん、コメント有難う御座います
「昼間で」は「昼まで」の変換ミスでした。

志津さんから兵庫への投げかけですが、ご指摘の通りでも良いと思いますが、これまたご指摘の通り兵庫が昼飯を抜くと云うことは滅多にないことです。変換ミスの訂正に留めます。

時の釣人 #- | URL
06/28 10:08 | edit

「旦那様。昼間で少々間があります。お休みになられたら如何ですか」の「昼間で」は「昼まで」の誤変換ではないのでしょうか?
そうだとしても、昼間寝て夜起きる日を過ごしている兵庫さんに寝る時間まで休んでいたらいかがかと尋ねるなら、もう寝ておいたらどうかと言ってもよさそうにも思いました。
お昼ご飯まで時間がある、ということなのでしょうか?

カテンベ #- | URL
06/28 08:20 | edit

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