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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第97話 前へ(その13)】 

 昼飯の席は彦四郎屋敷から来ていた男の子たちも加わり大盛況だった。その割に食事は整然と始まり終った。後片付けも終わったのか、女の子に邪魔とでも言われたのか男の子たちが広間に戻って来た。
「兄上、午後は何をなされますか」と観太が代表して訪ねて来た。
「道場の移築で邪魔になる植木を抜き、向島に運びます。向島では穴を掘って植えます。一人では出来ないな~」と誘いをかけた。
「手伝います」「させて下さい」「やりたい」と思い思いの返事が戻ってきた。
「それでは、特に用の無い者は、先ずは彦四郎屋敷の庭に行き、佐吉さんの指示で動いてください。他に彦次郎さんが傷つけられた柱の修理をしています。興味の有る者は見て下さい。それでいいかな」
「はい」と多くの者が同意したが不満げなものが一人いた。
「又四郎、今日は千賀さんの構図の違った下絵を三枚描き、先日の峰吉さんのように奥様に選んで貰いなさい。その仕事が終わったら、茶店で待って居なさい。前を私が通るので加わって下さい。それでいいかな」
「はい」と嬉しそうに返事をした。

 暫くして彦四郎屋敷に多くの子供たちが戻ると、兵庫は表大門と裏門を閉めさせた。
抜かねばならない比較的大きな木が在るため庭番の手を借りる必要が在ったのだ。
 人が集まった所で兵庫が、私はこれから子供たちに道具の使い方を教えますので、庭番の皆さんは植木を運べるように掘り上げて下さい。

 兵庫は子供たちを大人たちの仕事の邪魔にならない所まで移動させた。
「これが鍬(くわ)でこちらが鋤(すき)です。回しますので、見て下さい」
道具が一巡して兵庫に戻って来た。
「子供には重いと思いますが、いざという時のために百姓仕事を覚えておくのは有用です。ただ、道具を使う時には人や自分に怪我をさせない様に気を付けるように。先ず鍬の使い方を見せます」
と云い、使わない鋤を地に置いた。
「佐吉さん、この木ですが、どの辺りに鍬を入れますか」
「幹から一尺の所をぐるっとお願いします」
「この木の周りは踏み固められているから、畑とは違い掘り起こすのは大変です。ですから柔らかくするために地面に鍬で傷を沢山つけることにします」
 兵庫は鍬を真上まで振り上げると、振り下ろした。ザクッと音がして鍬の刃先が深々と突き刺さった。
これで子供たちは兵庫から一歩退いた。
兵庫は鍬を傷めない様に抜き取り、再び振り上げると五寸ほど先に鍬を振り下ろし、また鍬を傷めない様に抜き、結局五寸刻みで大地に傷をつけ木の周りを大した時間を掛けずに一周した。
「まだ十分柔らかく成って居ませんので、鍬を入れる向きを今までと直角にし、大地に十字の傷をつけてみます」
兵庫はこれまでとは違い木に向かって立つと鍬を、地面に出来ている鍬の跡に振り下ろした。
土塊(つちくれ)が飛んだ。同じように木の周りを一周した。
「鍬には大地を切り裂く仕事の他に、すくい上げる仕事も出来ます」と云い
兵庫は鍬の刃を柔らかくした地面に対し斜めに打ち込み、鍬を持ち上げると鍬の腹に土が乗って居た。その土を傍らに捨て、また鍬を打ち込みすくい上げて行くと溝が出来ていった
「それではやって貰うので並んで下さい」
「呼ばれたら鍬を持ち、溝の中に振り下ろして、溝の中の土をすくい上げ溝の外に捨ててから鍬を私に戻し、離れた所から見て下さい。鍬の刃を自分の足に振り下ろさない様に注意して下さい。先ず大助やってみなさい」
 子供たちは鍬の重さと、慣れない作業に苦戦して終わった。
「お百姓は、これらの道具を巧みに使い、私たちが日々食べる青物を作ってくれているのです。私たちもお百姓に負けない様に、食べて、身体を鍛え、学問をし、将来、世の中の役に立つことが出来るようにしましょう。又四郎が茶店で待っています。鋤の使い方は向島でしましょう」
そう云うと、兵庫は庭番の方に行った。
「佐吉さん、向島へ持っていく植木が用意できましたか」
「多くは在りませんが大八に積んであります」
「それでは、子供たちと向島に行ってきます」

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Posted on 2017/04/19 Wed. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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