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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第98話 残月(その16)】 

 東都組の者とそれを狙った刺客が兵庫と話し合うにつれて打ち解けていき、最後には相手を気遣う助言までした。
不思議に思った兵庫が、
「竜三郎さんは勘三郎さんを恨まないのですか」
「恨むのなら勘三郎さんではなく私を狙わせた張本人を恨みますよ。しかし、それは教えては貰えないでしょう。もしかすると勘三郎さんも知らないのでは」
「図星です。私も富五郎も知らされているのは、東都組の者たちが船宿・浦島に泊まって居るから、その中から竜三郎を探し出し始末して来いと言われただけですよ。しかし、そこに十数人もの鐘巻様たちがやって来るとは思っても居ませんでした」
「それは偶然ですが、半蔵の死後、逃げ去ったと思って居た東都組の者たちが浅草に舞い戻った話しを聞き、何か悪さをされては困るので見張っていたのです。浅草西仲町の飯屋では懐具合が良さそうだったと聞き、何か悪さをしたなと思ったのです。半蔵の死で弱体化した東都組をこのまま居据わらせるほど、やくざの世界は甘くないと、放って置けば血が流れると云う者が居たのです。一方で十人が知り合いの船宿・浦島に酔っぱらって入ったと聞き、十人纏めて拉致し、匿うことにしたのです。その浦島に私たちより先に忍び込む者の姿を見て、刺客だと思い、飛び込んだのですよ」
「こちらは一か八か飛び降りたが案の定、この始末。やくざは使い捨てですから死ねば安心してくれるでしょうが行方不明では目の色を変えて探し回るでしょうね。逃げたとあっては、もうやくざはお払い箱、傷が治った後、どうしたものか思案しておかないと・・」
「養育所にはやくざの身から抜け出した者たちが居ます。もし皆さんがやくざ稼業から足を洗う気が在れば、養育所で受け入れる余地は在りますよ。傷が治るまでに、また悪事の返済が済むまで時間が有りますので、出て行くか残るか考えて下さい」
「有難い話ですが、私や富五郎は追われる身になると思いますのでご迷惑を掛けることに成ります。傷が癒えましたら追い出して下さい」
「ここにお連れした時から、こちらの心は決まって居ます。悪党に臆する道は選びませんので共に戦いましょう」

 男たちが兵庫の話に感激していると、中之郷からまた子供たちがやって来た。
「これから東都組の皆さんには、保安方に化けて頂き中之郷に移って頂きます。走りますのでしびれを取っておいて下さい。着替えの稽古着を用意してきます」
 外に出た兵庫は先ず、甚八郎と子供たちを集めた。
「深川組はいつものように手習い、学問をして下さい。浅草組には東都組の皆さんを中之郷まで送る手伝いをしてもらいますので待って居て下さい。私と常吉さんで送り届けますので甚八郎は広間で彦四郎さんの戻りを待っていてください」
「分かりました」
兵庫は道場口に入り置かれている予備の稽古着二組と草鞋二足を持って広間に戻った。
「二人ずつ移って貰いますので、稽古着に着替えて下さい」
こうして東都組の者たちの中之郷養育所への移動が始まった。
先頭を兵庫その背後に竜三郎、子供たちが続き、久八、常吉が一列になって中之郷まで走り続け、開いていた門内に飛び込んでいった。
「竜三郎さんに久八さん来て下さい」と呼び、玄関の板木を二度叩いた。
出て来た中川彦四郎の妻・雅代が「お待ちしておりました」と迎え入れる用意が出来ていることを暗に示した。
十人を五回に分けて移動させます。用心のため保安方に化けさせました。持参の服に着替えさせ稽古着を戻して下さい。
「分かりました」
二人は屋敷の中に入り、暫くして戻って来て稽古着を包んだ風呂敷包を兵庫に渡した。
「外出は限られますので、ここで汗を流し、戦いの日を待って下さい」
「そうします」
 押上と中之郷の間を五往復している間に時が流れ、兵庫が押上に戻った時には四つ半を過ぎていた。
そして広間では浦島から戻って来た中川彦四郎が甚八郎と話をしていて、その様子を怪我をして歩けない勘三郎と富五郎が見ていた。

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Posted on 2017/05/18 Thu. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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