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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第99話 標的(その26)】 

 三本の寄進柱が道場から姿を消し残るは一本に成った。
「四番隊位置に付け」と兵庫が叫んだ。
千夏と小夜を先頭に男の子十五人が続きその後に五人の大人が姿を見せた。
四番隊は他の隊とは全く違って居た。構成の多くが子供で隊長が女の子であること、大人は喜重を除いて武士であることだ。
「支え方用意」と千夏が叫ぶと、兵庫、碁四郎、虎之助が刺股を構え柱の上方に当てがった。
そして寝かし方の小夜も反対方向から刺股を柱に当てがった。
「縄を緩めて」の千夏の声で寝かし方の相棒・喜重が柱と鳥居支柱を結んである縄の結び目を解き緩めていった。
ここまではこれまでと同じだったが、縄が緩められたのを見て小夜は刺す股に力を籠め柱を押した。が柱は動かなかった。
小夜は何度か押し直したが柱に変化は起こらなかった。
「みんな、力を貸して」と一人では無理と思った小夜が叫んだ。
小夜の背後に集まった男の子たちが口をとがらせて柱に向かい息を掛ける仕草を見せた。
すると不思議なことに柱が傾き始めたのだ。
動かなかったのは小夜が柱を押したのに支え方の兵庫が倒されない様に支えたからだが、小さい子供たちの中にはそれが分からない者も居る。
兵庫はこの場を使い、小さな力でも皆が力を合わせれば大きな力に成るという、養育所における助け合いを実践させたのだった。

 横に寝かされた柱はその顔である寄進者の名、“浅草 新門辰五郎”と書かれた面を客人に見せ、兵庫を除く大人たちに担がれ、子供たちには手を添えられ、他の三本と同じ場所に一旦安置するため運ばれていった。

一人残った兵庫が、
「これで立って居た寄進柱四本を無事休ませることが出来ました。次はこの四本を賑やかに中之郷まで運ぶのですが、準備に少しばかり時を要しますので、その間に先ほどから匂って居ます蕎麦を皆様に振る舞わせていただきます。蕎麦を打ったのは常吉さん、乙次郎さん、仙吉さんの三人です。なお、汁は仙吉さんの奥さんのお仙さんです。この蕎麦は旨いですよ。浅草は了源寺門前町の茶店で、川向こうの押上の十軒店の飯屋と茶店で食べられます。お近くにお越しの折りにはお立ち寄りください。私は着替えて参りますので失礼いたします」

 兵庫と碁四郎は裏から継志堂に入り、持参した挟み箱から稽古着や草鞋を取り出し、代わりに脱いだ堅苦しい礼服を納めた。そして、その挟み箱を三五郎と万吉に託した。
そして裏に出て、運んできた蓮台を確かめた。
「先生、楔は抜いておきましたので、上物を外せます。外しますか」とこの蓮台を作った彦次郎が聞いて来た。
「お願いします。これから柱を乗せたいので、ただ乗せた後にまた取り付けたいですね。子供たちが柱に花を飾ったのですから」
「柱を乗せにる作業に子供たちも参加させますね」
「勿論です」
それでは、屋根だけではなく、こちらも四本柱を抜きましょう。
 この蓮台は大怪我をした中川彦四郎を八丁堀から運ぶために急遽作られたもので、寝ている彦四郎を布団ごと乗せ、かつその様子が分からない様に簡素な小屋仕立てになっているのだ。その小屋が在ると長物でかつ重い物を乗せる方法が限られるため、外せるのなら外したいと頼んでおいたのだ。
 そして、彦次郎の指示で兵庫等が動き蓮台に取り付けられていた上物が取り除かれた。
「柱を乗せたら転がり止めを取り付け、小屋を乗せますので呼んで下さい」

蓮台は、兵庫、碁四郎、甚八郎、近藤、山口、浜中そして喜重により裏庭の中央に運ばれた。子供たちは出来上がった蕎麦を客に運び、そして片付ける作業をしていたが、兵庫等と様子の変わった蓮台を見て、男の子たちがやって来た。それを客たちが見ていた。
「これから柱を蓮台に乗せるため、みんなで運びましょう」
男の子十五人と大人七人が、先程運んだ巽柱の所へやって来た。

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Posted on 2017/07/24 Mon. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

この記事に対するコメント

さゆうさん さんへ

>> 一週間分を読むのが大変でしたが、面白かったですよ。

素直に 喜んでいます。
有り難うございます。
今後とも宜しくお願い致します


時の釣人 #- | URL
07/25 06:17 | edit

こんばんは。
一週間分を読むのが大変でしたが、面白かったですよ。

さゆうさん #- | URL
07/24 16:35 | edit

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