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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第109話 肥し(その20)】 

 暫くして外から碁四郎の声が聞こえて来た。
腰を掛けて待って居た兵庫は腰を上げると外に出た。
やって来たのは待って居た音吉とその付き添いの山中碁四郎と保安方の浜中松之助で荷物を積んだ大八車を牽いていた。
「音吉、随分と財産を持って居ますね」
「半分は薬研堀と深川への土産です。私の物だけでしたら着込んだ上に背負えば済む量です」
「昇龍寺に残っていた折り畳み文机が七卓在ったのを積んできました。兵さん、折り畳みの文机は使い勝手が良いのと他の様にも使えそうですから売ったらいかがですか」
と、碁四郎が大荷物の種明かしをした。
「調度屋ですか、彦次郎さんと相談してみます」

 一旦養育所の前に停まった大八車がそこでは何も下ろさず動き始めた。
大八を牽くのは二本差しの碁四郎で、兵庫と笑い話を交わしながら平右衛門町の船宿浮橋までやって来た。
碁四郎は己が営んでいる店の前で大八を停め、
「兵さん深川へ運ぶ荷が在ります。幸吉さんから貰って下さい。薬研堀まで先に行っています」
「分かった」
大八車が動き始めたのを見て兵庫は、暖簾を手で分け店の中に入った。
 大八車が柳橋を渡り始めた時、浮橋の暖簾が分れ米俵が出て来た。少し遅れて俵の横に兵庫の顔が現れた。
二本差しが牽く大八車の後を、米俵を担ぐ二本差しが追っていった。

 町中で大八車が走ることはない。万が一にも人を轢き死に至らしめれば殺人となるからだ。
そう云うこともあり、兵庫は碁四郎にお付いた。
その奇妙な侍が、混雑する両国橋に通じる広小路の流れを横切るように薬研堀に向かうのを行き交う者が物珍しそうに見ていた。

 薬研堀の子供預かり所に着くと、事前に碁四郎から話を聞いて居た猪瀬阿佐と家の持ち主であると同時に賄い、時には子供たちと遊ぶ浪江、それと預かってい居る幼い子供たちが出迎えた。
此処では積んできた折り畳み文机を三卓下ろし、代わりに兵庫の肩の荷、米俵が乗せられた。
ここで碁四郎と別れることに成ったが、
「浜中さん、深川の預かり所の様子を見て来て下さい。兵さん宜しくお願いします。大八は預かり所に預けて下さい。明日にでも文吉らを連れ見分活動し引き取ります」
「助かります」

 薬研堀を出た兵庫は音吉に、
「道案内を頼みます。佐助らを探索しに深川を歩き回った時のことを思い出しながら歩きなさい。間違っても構わないよ」
こうして文吉を先頭に兵庫が大八を牽き、浜中は大八の後方を歩きながら、深川への道を覚えていった。
文吉は道を間違えることもなく永代寺門前町にたどり着き、そして涛屋に着いた。
入口に継志館子供預かり所の看板が掛けられているのを浜中は見た。

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Posted on 2018/05/25 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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