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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第109話 肥し(その21)】 

 涛屋の戸が開き、男の子が首を出し、そして引っ込めた。
入れ替わるように戸が大きく開き、網吉が姿を見せ、その後ろに隠れるように幼い子供たちが、やって来た兵庫たちを見た。
「音吉、お前が来てくれたか、頼むぞ。先生、今日来られると思い待って居ました」
「色々あって、放って置いたからな。その前に、子供たちに音吉を引き合わせましょう」
 預かり所の子供たちは皆、音吉より明らかに幼く、男の子が三人、女の子は二人の五人が網吉の前に並び、音吉が対面する形で立った。
「私の名は音吉です。私はここ涛屋に住み込みます。皆が朝、ここに来てから家に戻る時まで一緒に暮らします。私はまだ勉強中ですが、易しい字は読み書きが出来ます。他に品物の売り買いの時に必要な計算も出来ます。一緒に勉強をやりに来ました」と自己紹介をした。
それに続いて、兵庫が
「浜中さん、こちらがここの保安方をお願いしている網吉さんです」
「網吉です。宜しくお願いします」
「浜中です。昇龍院で保安方を任されています」
「わざわざご苦労様です」
「それでは荷物を下ろすので置き場所を頼みます」
「米俵は奥の台所、音吉の私物は二階、その他は、取り敢えず帳場に置いて下さい」
 暫くして大八車の荷が無くなったところで
「皆様、お茶が入りました」と湯飲み茶わんを乗せたお盆を持って一枝が出て来た。
兵庫は湯飲みを取りながら
「浜中さん、こちらはここの主・重吉さんの奥様です」
「浜中様、一枝で御座います。宜しくお願い致します」
「こちらこそ、お世話になると思いますので宜しくお願いします」
「忘れる所でした。今日、こちらにも一つ土産を持って来ました。これを使い文字に馴染ませるようにして下さい」と云い、持参したかるたを渡した。
「一枝殿が忙しい時は音吉に渡し使わせて下さい。それと折り畳みの文机を四台持って来ましたので手習いなどに使わせて下さい」
「有り難うございます。子供たちはご覧の様に粗末なものを着ているだけで、外で遊ばせても陽が出ていないと直ぐに体が冷えてしまいます。子供は風の子とは申しますが、温めてやらねばなりませんが、火鉢で手を温める程度しか出来ません。足も温めてやりたいので、あの文机を四つ合わせた大きさの炬燵櫓を造って頂けませんか」
「分かりました。それと子供たちに着せる綿入れと足袋を用意しますので、与えて下さい」
「有り難うございます。皆喜ぶと思います」

 兵庫は深川の子供預かり所を出る時、
「網吉さん、子供たちの綿入れと足袋を用意しますので、やなぎやまで付き合って下さい」
「ありがてぇ、音吉が来てくれたお陰で出歩ける。音吉、すぐ戻って来るから後を頼むよ」
「はい、カルタをしながら待って居ます」

 涛屋を出た兵庫、浜中、網吉の三人は堅川沿いの柳原町に在る古着屋・やなぎやに入り子供たちの綿入れと足袋を買い求めた。
この時、帳場に居たのは久美だった。
「少し大きいかも知れませんが・・」と云い、久美は五着用意した。
「いつものように、内藤さんにお願いします」
やなぎやを出た三人はそこで、押上、深川そして昇龍院へと分かれていった。

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Posted on 2018/05/26 Sat. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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