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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第109話 肥し(その23)】 

 昼食後、兵庫は志津に調度屋の件をどこまで進めるか、内藤と話し合うため駒形に出かけることを告げた。
「また、内藤さんとですか」
「実は今朝駒形に行きましたが、その時、内藤さんは講義に入っており話すどころか会っても居ません。そうした中、折り畳み文机を大八に積んだ碁四郎さんが来て、その評判が良いので売ったらどうだと云ったのです。先ほど彦次郎さんから、かさ張る調度品の売り場について尋ねられました。いま考えられるのは駒形しかないのですが、そのためには駒形の主の意見は欠かせませんので・・」
「前回は貧乏侍相手の余り値の張らない軽装具足でした。今は金持ち相手の経師屋でしょうか。次は幅広く九尺二間も相手に加えて下さい。例えば折り畳み式、引き出し付き文机を丈夫に作り踏み台にも、調理台にもなる役立つ物にした十徳台というのは如何ですか。実はその様な物が欲しかった昔を思い出しました」
「十徳台は別に考えるとして、金持ち相手の華美な物は注文として、より実用的な物を安く売れば、客が増えると思います。何を作って売るかは大事なので別途考えたいと思います」

 思い付きで始められた調度屋の商い話だが、思い付きを話す相手が変わるたびに新しい返事が兵庫に帰って来た。もとはと云えば碁四郎が見つけた種だが、兵庫が蒔き人の知恵を肥しにして芽を出そうとしている。
兵庫は調度品自体には然程の関心はないが、色々な知恵が盛り込まれる余地が多々あることを知り、駒形へ向かう足取りは軽かった。

 駒形の養育所、その帳場では経師屋の為吉と建具師の建吉が話をしていた。
「先生、和歌を散らした衝立の件ですが、如何でしょうか」
「今日の午前中に見たのは古今和歌集・春の巻から十首を選び、長紙に書いてありました。残りの夏、秋、冬も用が無ければ今日中には出来ると思いますが、衝立よりは額に仕立てた方が良さそうです。近日中に持参しますのでその時決めましょう」
 兵庫の話声が聞こえたのか、奥から内藤が出て来た。
「内藤さん良い所に、皆さんに話が有って参りました」と兵庫が言った。
「何でしょうか。立ち話もなんですから上がって下さい」
土間に立って話をしていた兵庫が帳場に上がり四人が車座に向かい合った。
「今朝、山中さんから、子供たちのために作った折り畳み式文机の使い勝手が良いので売ったらどうだと云われ、これまでに文机をお願いしました彦次郎さんや志津と調度屋開業について話し、ここに相談に参りました」
「調度屋というと、仏壇屋の様に、出来上がった箪笥などを並べて売ろうと云うのですか」と建吉が確かめてきた。
「それも一つのやり方ですが、海の物とも山の物とも定かではない調度屋稼業に大金は使えません。並べる物はそれぞれ一品とし、無駄に成らぬように養育所や関係者が必要な物にします。また新しい店は持てませんので・・・」
「ここ養育所を調度屋にしようと云う訳ですね」と内藤が続けた。
「言い辛いことを言って頂き感謝します。お礼に帳場格子、帳場机を新品と交換させて貰います」
笑いが起きた
話は続けられた。
調度屋稼業を始めることに誰も異を唱えなかった。
それどころか積極的な話が建吉から出た。
「もう一度、道場を建てたらどうでしょうか。そうすれば展示場も作業場が確保できますよ」
「それは先の話に成りますが多目的に使えそうですね」
話は続けられた。

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Posted on 2018/05/28 Mon. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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