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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第110話 お蔭参り(その17)】 

 兵庫の後に三人の娘が一列に並び押上を出、遠ざかるのを残された女の子たちは見送った。
その様子は日ごろ躾けられて居ることの実践だからだ。先日まで浮浪暮らしだった三人の娘にとっては、武家風に装い歩くことは晴れがましさが在った。
先日は向島の養育所の地蔵や稲荷のお参りだったが集団であったため、出会う少ない他人の目が分散したが、今回は人目も多い中を歩く三人の娘は緊張していた。

 兵庫は途中、中之郷の養育所に入った。
客間に通され、留守居役中川彦四郎と矢五郎が来るのを待った。
二人が部屋に入って来た。兵庫が頭を下げると娘たちも倣った。
「急に何でしょうか」と彦四郎が尋ねた。
「浮浪の子探しで有力な知らせがもたらされましたので、調べをお願いに参りました」
「有り難うございます。どのような」
「知らせをもたらした者は、先日浅草にて収容した田舎組の勘八を六年前まで世話をしていた乙姫、今は名を乙女と改めた者です。その身は竜泉寺町の成田屋与兵衛の妾で、聖天町の仕舞屋に住んでいます」
「六年前浮浪の娘が与兵衛の妾に出世し持ち込んだ有力な知らせを聞かせてくれ」と矢五郎が急(せ)かした。
「与兵衛は巧妙な仕組みを浮浪の娘に流布させ、それに乗って来た娘を嫁入りさせると云う蔭の商いをしているようです。嫁として引き取って貰えそうな者は聖天町の乙女の所で仕上げ、時を待つことになり、嫁として引き取り手が無いと与兵衛に思われた者は飢え地獄から生き地獄へ売られているのではないかということです。乙女の願いは竜泉寺町の与兵衛の家に閉じ込められている娘たちが地獄を見ないようにしたいのです」
「話の内容では与兵衛の所には娘たちを手に入れた正式な証文は無い。それを売ることは許されない。だが証文を偽造することは考えられるが証文が偽物であることは直ぐに分かる。わしと弥一で探りを入れる。簡単に子供たちが売られないように必要なら久坂にも頼むことも考える。荒事に成る時は彦四郎、お前の出番だ」
「知り得たことは、内藤さんには必ず知らせておきますので、そちらも内藤さんに知らせておいて下さい」
「分かった」
「その子たちも子供探しに関わらせるのか」と矢五郎が不安げに確かめてきた」
「探しには参加させませんが、子供たちの棲みかを探しだしたら説得に参加させる予定です」
「それはそうだな。鐘巻さんや彦四郎の顔を見せたら、大人でも怖がるからな」と生まれつきの怖い顔の兵庫とこめかみを斬られ耳を飛ばされた彦四郎を見ながら矢五郎が云った。
「もう、兄上様のことは怖くは在りません」と畏まっていたももが応えた。

 中之郷の養育所をでた兵庫等四人はゆっくり歩き、駒形の養育所に入った。
「皆さん、二階に揃って居ますよ」と帳場番を兼ね仕事をしていた為吉が教えてくれた。
 四人が二階に上がると、山中碁四郎、内藤、新藤、浜中の侍衆の他に朝方、子供探しに散っていった子供たちも戻っていた。
「兵さん、乙女さんが内藤さんに話したことなどは伺いましたので、押上で出た話を頼みます」
「分かりました。その前に乙女さんが聖天町に戻ったことは大助から聞いて居ると思いますが、聖天町には昨日来た女の子が一人居ます。その子が浅草の何処に潜んでいたかを聞き出して貰うことに成って居ます。潜んでいた所には弱い子たちが残って居ると思います。その子たちを出来るだけ早く養育所の管理下に置きたいので、勘八、今から乙女さんの所に行き住処の場所を聞いてきてください。文吉、観太、家の近くまで同道しなさい」

 勘八を先頭に文吉と観太が従い養育所を出て行った。
「それでは、乙女さんから聞き出した成田屋与兵衛が行っている女の子集めについて話します。これについてはここに来る途中中之郷により中川彦四郎殿と矢五郎殿に話し、成田屋与兵衛を調べることを頼んであります。調べたことは内藤さんに知らせるように頼んであります」

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Posted on 2018/06/25 Mon. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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