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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第110話 お蔭参り(その18)】 

 一呼吸置いた兵庫が話し始めた。
「浮浪の子供たちが頼ろうとする対象が養育所とは別にありました。それが竜泉寺町の成田屋与兵衛の家です。成田屋与兵衛の名はある子供たちにとっては救いの神に似た響きがあるようです。それは飢えと寝床の心配が無く、そして行く末には嫁に出して貰えるという夢のような話が伝えられているからです。もも、お前が聞いて居る成田屋与兵衛とはどのような者ですか」 
「今の話は約束を守る女の子だけに伝えられている話です。内容は兄上様の言葉通りですが、成田屋に行くのは十四歳に成ってからで、その歳になるまでは弱い仲間の世話をして、後に続く者が居なくならないように言われています」
「後の続く者が絶えないようにという言い伝えが在るから幼い子も生き続けられるのかな」
「はい、食事を弱い者に回すことが出来ないと上に立てませんでした」
「これまでの話だけでは、女の子が成田屋を頼って行くのは当たり前に聞こえますが、中川殿に調べを頼んだと云う事は何か在るのですね」と碁四郎が核心をついて来た。
「はい、乙女の話では与兵衛を頼った子供たちは選別されているという事実があるようです。選別とは嫁に行かせる者と嫁がせるのは無理と判断される者です。嫁は無理と判断された者は妓楼などに売られるらしいと云って居ました。これを中川殿に調べるよう、お願いしました」
「腹を空かし凍えている子供たちを探すことより、成田屋に閉じ込められ売り飛ばされるのを待つ子供たちを救い出す方が先ですね」碁四郎が今何をすべきかを言った。
「そのことは、乙女さんが押上の養育所を見て成田屋より養育所の方が良いと感じ、成田屋より救い出して欲しいとのことでした」
「中川殿の調べを助ける必要が在りそうだな」
「今日は矢五郎さんと弥一さんで調べると云って居ましたが、南町同心の久坂さんの力を借りることも話して居ました」
「成田屋の名は浮浪の娘たちに口伝えで広がり、労せずして子供たちを集め、その子たちを嫁に成れるように教育して、余裕の在る者へ嫁の世話をして多額の礼金を貰う流れを作って居る、養育所としては成田屋に準じた方法で子供たちの方から集まって来るような手立てを考え出したいですね」
「もう一度私たちが浮浪暮らしに戻り、飯が食えて眠れる所があることを教えたらどうですか」と鯛吉が云った。
「以前、入谷に子供たちを集める時に似たような手を使い上手く行きましたね」
「なぜその手を続けなかったのですか」と新藤が尋ねた。
「子供たちが集まり過ぎて、世話が出来なくなる恐れが有ったからです。今は養育所の仕来りに順応できた子が八十人ほど居ます。少しぐらい事情を知らない者が加わっても乱されないでしょう」
「収容する場所も入谷の他に昇龍院も使えますね」と碁四郎が補足した。
「いつからやりますか」
「支度をして今夜から始めましょう。二十五、二十六、二十七日の三日間行い、二十八日は支度を整え二十九日の墓参りに間に合わせましょう」
「私は深川組の子を少し借り、涛屋を拠点に動くことにします」
碁四郎は駒形を出て深川へ向かった。

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Posted on 2018/06/26 Tue. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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