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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第110話 お蔭参り(その19)】 

 暫くして、聖天町に出かけていた勘八らが駆け戻って来た。
「兄上、乙女さんの所に居る娘・さざえさんが浮浪時代に隠れて居た所は仕置場の西の百姓家の納屋で、そこにはかつおと云う名の男一人とわかめとたらと云う名の女二人が残って居るそうです。男一人で女二人分の食料を確保するのは無理だから、貯めた中から二百文置いて来たそうですが、一緒に食料探しに町に出て、出来るだけ使わないように言ってあるそうです」
「内藤さん、これから救いに出かけるので三人分の食料、着替え、藁草履などを用意して下さい」
内藤が支度のために立ち上がると兵庫が
「行くのはもも、そで、その、勘八、文吉、観太、浜中さん、新藤さん、お願いします」
「兄上、明るい内に納屋への出入りは出来ませんよ。農家の人に叱られてしまいます」
「それでは、他の子も竹刀を持って行き、庭で稽古を始め、女の子は納屋に入り着替えさせ、出て来なさい。三人増えても分かりませんよ」
「面白い、やろう」「やろう」「やろう」
「子供たちを救い出したら入谷の竜三郎さんの店に行って貰いますが、その途中では今晩から人集めに行うこと、“竜三郎さんの店が閉まる頃行けば残って居る食い物が貰える話”をしながら行って下さい」
真剣に兵庫の話を聞く子供たちに対し、それに付き合うことに成る浜中と新藤は苦笑いをしていた。
「私は入谷に行き受け入れを頼んできますので、新藤さん、浜中さん頼みますよ」
「分かりました」
「下に絵図を用意しますので、聖天町、竜泉寺町を経由して百姓家に向かって下さい。

 駒形から潮が引くように人の影が消えていった。
潜んでいる子供が居る農家に向かった者たちは今後のこともあり聖天町の乙女の家、竜泉寺町の成田屋の在所を互いに確認しながら歩いた。
そしてさざえから聞き出した棲みかの特徴を思い出しながら小塚原仕置場の西に建つ一軒の百姓家に勘八が的を絞った。
「あの家です」と指さした。
「私、観太、勘八、鯛吉の四人で様子を見てきますので待って居て下さい」
と文吉が云い、四人は走った。

 四人は直ぐに戻って来た。
「納屋の前に莚(むしろ)を敷きその上に座り仕事をしています。芝居を打って目を納屋から逸らしましょう」と文吉が云った。
「それでは先ず水を貰いに入る。その礼として莚の前で文吉と観太が稽古を見せ、納屋に背を向けさせるようにする。残りの者は百姓の後ろ立ち納屋の戸口を隠す。娘たちはその間に納屋に入り用を済ませ出て来る。これでどうかな」と浜中が芝居の筋書きを話した。
「それで良いでしょう。水を飲みに行く者を選ぶ。本当に飲みたい者は手を上げろ」
新藤が配役を決めようとすると、三人の手が上がり配役が決まった。

 一団は芝居を打つ百姓家に向かい、暫くして門らしき出入口に姿を見せた。
気が付いた百姓が立ち上がろうとするのを見て、浜中が
「そのままで結構です」と歩み寄り
「子供たちの鍛錬のため遠足(とおあし)を行って居るのですが、水を欲しがる者が居るのと少し休ませたい者が居るので暫し庭先をお貸し願えませんか。また元気な者も居ますので稽古をお見せ致します」
「どうぞ、井戸は母屋の裏に御座いますのでご利用ください。お子さんの稽古ですか拝見させて頂きます」
「お許しを頂いた。入りなさい。井戸は母屋の裏です。早く戻りなさい。それと稽古をお見せするので文吉と観太は前へ、残りは邪魔にならないようにお百姓の後ろに回りなさい」
母屋裏へ三人が走り、竹刀を持った二人が莚の前に残りは百姓の後ろに回った。
少し間を置き、水を飲みに行った三人が戻ると、浜中が向かい合って立つ二人に
「稽古、始め」の声を掛けた。
この声で文吉と観太の稽古が始まり、これに見入る莚に座る百姓の後ろに隠れるように居たもも、その、そでの三人が納屋に向かって歩き吸い込まれていった。

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Posted on 2018/06/27 Wed. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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