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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第110話 お蔭参り(その21)】 

 子供たちの話に新藤は感心し、
「歌丸を探すためには、カツオはワカメとタラの二人とここで別れることに成るがそれで良いか」
「ワカメ、タラ、歌丸さんのためだ。お姉ちゃんたちと先に竜三郎さんの家に行きなさい。用が済んだら直ぐに行くからな」とカツオが幼い子を説得した。
「分かった」
「新藤先生、猿若町は私と勘八がカツオに付き添います」と観太が言った
「先生、観太の方があの辺りのことを知っています。観太の観の字は観音から貰ったものです」
「分かった。折角だから聖天町にも寄り、サザエにカツオ、ワカメ、タラを合わせ、安心させてやろう」
 向かう先は入谷と猿若町と違うが、聖天町を通ることにしたため一行は日光街道に出て同じ道を通り、山谷堀を渡り聖天町まで一緒に歩いた。
ここで勘八一人が様子を見るため乙姫の家に入っていったが直ぐに出て来て手招いた。
「カツオ、ワカメ、タラ、行ってこい。ただし長居はするな」と新藤が促し、注意も付け加えた。
三人は家の中でサザエに合えたことだけで満足し、入谷の竜三郎の所で暮らすことになったことを伝えた。
そして勘八は、「行くぞ」と名残を惜しむ三人に言い、表に出た。
それに三人も従い新道の元に戻って行き、外に出たサザエと乙女が見送り、新藤に頭を下げた。
「入谷に行くぞ」
猿若町に行く観太、勘八、カツオを残し、新藤は西の入谷へ向かった。

猿若町は聖天町と隣接して居る。
三人は芝居小屋が立ち並び混雑する通りを、歌丸を探しながら往復した。
何往復したかは分からないが、ハネ太鼓がデテケ・デテケと打ち鳴らされた時背後から
「カツオ」と呼ぶ声に振り向くと子供が笑っていた
「歌丸、探して居たんだ。良い話が有る」と呼ばれたカツオが応じた。
「教えてくれ」
「入谷に竜三郎さんの店が在り、その日の店仕舞いの時に残って居る食べ物を分けてくれるそうだ」
「悪くない話だけど、残り物だけで何人の腹が膨れるのか、俺だけなら行くが・・」
「こちらは観太さんに勘八さんです。私の仲間で出て行ったサザエ姉さんから、俺とワカメ、タラの困って居ることを聞き、侍二人を入れた大きな仲間をたくさん連れて俺たちが隠れていた百姓屋までこの着替えや藁草履そして飯まで持って来て助けてくれた。ここに来る前にはサザエ姉ちゃんが居る家に連れて行ってくれた。今まで嘘はついていないよ」
「カツオが良い物着て居るのは分かった。観太さんに勘八さんは仲間とは思えないけど何で世話をするんだ」
「私は昨年暮れ、勘八は今年の冬に成って、鐘巻様、山中様、内藤様が願い出て開いた養育所に入り、浮浪暮らしから抜け出しました。いま養育所に入った者の数は約八十人居ます。ただこの養育所は額賀様や多くの方々の遺志を継いだもので、その額賀様の命日が二十八日なのです。私たちは二十九日に墓参りに行くのですが、一人でも多く子供たちが浮浪から抜け出せたのは額賀様のお蔭ですとお参りすることで、亡くなった方々の霊を慰めたいからです。そのためには残り物を食べさせるという噂を流し困って居る子供たちを集め、そこで、養育所に入れば食事と住いの心配がなくなり、さらに将来に備える勉強が出来ることも話されると思います」と観太が説明した。
「浅草から多くの仲間が消え何かが起こって居るとは感じ、用心のためチビたちは夜歩かさないようにしているんだ」
「もし消えている仲間が居るのなら、養育所に居るかもしれません。もし姿を消した者の中に名前を知って居る者が居たら教えてくれませんか」
「顔は知っているけれど“おい”、“お前”で呼び合って居るので・・・」
「今回、寺組で竜三郎さんの店に居るのは平七、命助、新助、河川、在吉の組長格の五人ですが、聞き覚えの在る名は在りませんか」と観太は名を並べてみた。
「在った。在吉がいた」
「養育所に入る入らないは本人次第ですから、様子を見るだけでもどうですか」
「行くことにするけど、ちょっと待ってくれ。晩飯を届けなければならないので。カツオ、その上等な物を脱いで芝居小屋から出て来る客の下げている折りをの物乞いを手伝ってくれ」
「分かった」
着ていた物を勘八に預けたカツオが歌丸に従い、ハネ太鼓の鳴る芝居小屋から出て来る客を選びながら物乞いを始めた。

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Posted on 2018/06/29 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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