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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第110話 お蔭参り(その30)】 

 佐助、梅次郎 松助が探した腹を空かせた子供は、一枝の話では男の子が二人いた。しかし涛屋で暮らすことはせず、ねぐらへ戻って行く。その時食べ物を手土産に貰っていくのは、ねぐらにその土産の食べ物を待って居る者、恐らく女が居るのではないかとのことだった。
「音吉、佐助等が連れて来た子供が二人居たと、涛屋の奥さんが云って居ましたが、会いましたか」
「はい、朝昼晩に来ます。そして食べ終わると食べ物を貰って帰って行きます。持ち帰る量はそれぞれ一人分ぐらいです」
 兵庫と音吉が話し始めた所に、佐助等が戻って来た。
話の通り二人の子供が付いて来ていた。
「ご飯よ、炬燵を隅に片付けて」一枝が叫んだ。
兵庫と音吉で炬燵を片付けると、空いた場所に並ぶように預かり所の子供たちと佐吉らに付いて来た子供が座に着いた。その子供たちの前に一枝、網吉、音吉、佐助、梅次郎 松助が奥から運んできた折敷膳を置いていった。
そして今度は自分たち膳を取りに奥に消えても、膳を前に座った子供たちは膳に箸をつけることなく皆が揃うのを待った。
網吉が二人分の膳を持って来て一つを兵庫に渡し、己は兵庫の隣に座った。
「皆、私の隣に座って居るお侍さんは、皆の味方です。何か困ったことが在れば、食べ終わった後に話しなさい」と網吉が二人の男の子を見ながら言った。
「それでは、頂きます」
「頂きます」が唱和され昼ご飯が始まった。
二人の男の子は預かって居る子供たちより大きいが、昨日、入谷で見た子供たちより落ち着いて居て浮浪には見えなかった。特に髪の乱れが少ないことは誰か子供に気を配る者が居る証だった。
食後膳が片付けられる中、一枝が
「永吉と富吉、お弁当は一つずつでいい?」と尋ねると二人は頷いて応えた。
一枝が姿を消した所で兵庫が
「永吉と富吉、私はお医者様を知って居るが困って居るのなら呼んであげますよ。お金は要りません」と唐突に打診してみた。
打診は子供たちの置かれている境遇の厳しさの根源を打ったのだろう。
幼い二人の子の顔が崩れ、涙がこぼれ落ちた。
「心配するな。直ぐ助けてあげます。案内して下さい。網吉さん、佐助、梅次郎 松助は付いてくるように、音吉は子供たちの世話を家の中か、ここの近くで遊びなさい」
 永吉と富吉は一枝から竹の皮で包んだ握り飯を受け取ると兵庫を案内する役を果たすため兵庫の少し前を歩いた。
その二人に
「お医者様に見て貰いたいのは母さんか」と尋ねると、二人は振り返り頷いた」
「近くにいる母さんからにする。どっちだ」
「永吉が手を上げた」
永吉は町中を歩いて居て、路地に入ろうとした。
「待ちなさい。母さんは店で働いて居るのか」
「永吉は頷いた」
「侍は商家の裏からは入らない。永吉お前は私の供だから私と一緒に表から入りなさい」
 案内された花街の一角の料理屋・扇屋だった。
「母さんの名前を教えて貰えますか」
「みよです」

 兵庫は永吉と二人で店内に入った。
「いらっしゃいませ」と身なりの良い男が出て来た。
「私は鐘巻兵庫と申し、客として参ったのでは在りません。吾が弟たちの友、こちらの永吉が申すにはこちらで働いて居る母・みよの加減が悪く心配とのこと。医者に診せると永吉に約束致しました。忙しいところ申し訳ありませんが療養のため出来れば引き取りたいので相談に参りました」
兵庫の申し出は扇屋にとって願ってもないことだった。
と云うのは深川の料理屋は景気がよく、仲居などの取り合いがある反面、使われ過ぎてみよの様に身体を悪くする者が出たのだ。本音は働けなくなった者は追い出したいのだが、そうすると悪評が立ち、良い仲居が集まらなくなるほか、辞められる恐れも在ったのだ。
それを防いだ兵庫の申し出が願ってもないことだった訳だ。

兵庫は丁重に奥に通され暫く待って居ると身繕いしたみよが先ほどの男と部屋に入ってきた。化粧をして顔色を良く見せてはいるが、衰えは隠しようもないものだった。
「鐘巻様、働き者のおみよさんが頑張って居るので気が付かず申し訳ないことを致しました。主・的吉は用が御座いましてご挨拶できませんが、これを養生の足しにお使いくださいとのことで御座います」と紙に包んだ物を兵庫の前に置いた」
「無理をお聞き入れ下さいましてありがとうございます」
兵庫は、みよが扇屋から出られることに満足し、多くを語らず、目の前の金を受け取り,それをおみよに渡し、三人で店の外に出た。
 
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Posted on 2018/07/08 Sun. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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