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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第110話 お蔭参り(その33)】 

 ゆっくりと頭を上げた乙女と珊瑚が脇座に座って居る勘三郎と富五郎を見て驚き
「ひぇ~」と息を飲み逃げようとした。
「どうした、珊瑚」
「与兵衛さんが・・・」
「よく見なさい。歳が違う」
二人は見直し、息を吐いた。
「誰が与兵衛に似ているのだ」と矢五郎が問いただした。
「あちらの方です」と勘三郎を指し珊瑚はまた息を吐いた
「どの様に似て居るのですか」と兵庫が尋ねた
「十年前に会った与兵衛によく似て居るのです。昨日会った与兵衛は変わって居たので、与兵衛さんに会いに来たのでと云ったら、私が与兵衛だと云われて分かったのです」
「それは、珊瑚さんの云われる通りです。昔の与兵衛はたくましかったのに・・・」
と乙女が与兵衛の衰えを語った。
「西国に遍路旅に出た与兵衛から頼まれ、遍路旅から戻るまで倅の勘三郎さんが成田屋の留守をするようになったという筋書きでは如何ですか」と碁四郎が案を提示した。
「それ頂きましょう。勘三郎さん事情は後で説明します。乙女さん、富五郎さんが聖天町で暮らすことに成ったら何か不都合がありますか」
「ありません。私はここで修行をして今度こそお嫁さんになる」
「私も」と珊瑚もその気になった。
「その調子だ。己の将来は人に託すのではなく、己自身に託すことです。暫くこちらで修行をして下さい」

 入谷を出た五人は歩きながら、話し始めた。
「勘三郎さん、あなたは四国遍路の旅に出た成田屋与兵衛の倅ですよ。尋ねて来る者が居ると思うので役柄を覚えて下さい」
「それは分かりましたが、父。与兵衛とはどのような者だったのですか」
「全く知らないという境遇を自分で考えて下さい。遍路へ出かける父・与兵衛が元妻の家により倅の勘三郎に成田屋の留守番を頼んだとか・・真実を一つ教えておきます。与兵衛は四国遍路ではなく殺されましたので戻ることはありません。恨まれることをしていたと云う事です」
「それで珊瑚さんは私を見て幽霊と思ったのですね」
「顔がかなり似て居ると云う事ですから、与兵衛の倅に成りきって下さい」

 五人は聖天町にやってきた。
「この家です、矢五郎さん富五郎さんに裏からの入り方を教えてください。次の成田屋の所在も覚えて貰いたいので戻って下さい」

 やって来た竜泉寺町の成田屋でも矢五郎が勘三郎を案内した。
戻って来て五人が揃うと。兵庫が二人に一朱銀で一分を与え、
「明るい内に夕食を済ませ戻り、布団、行灯など夜の準備をして下さい」
二人は顔を見合わせ目で語り、そして「分かりました」と応えた。
 養育所内では滅多に酒が出ることはない。
絶好の機会と飲み代まで貰ったと思って居る二人に
「二軒の家は養育所の運営資金を稼ぐために使う予定ですから何か気付くことが在れば教えて下さい。何かが起きたら駒形に知らせて下さい」と告げ別れた。

 歩きながら兵庫が、
「矢五郎さん。あの二人に一人暮らしは無理でしょう。交代で留守番が出来るように誰か人を入れて下さい」
「分かった。羽を伸ばしたがっている者は幾らでも居るから交代で行かせるよ」

 吾妻橋西詰で矢五郎が分れ、兵庫と碁四郎は駒形の養育所に入った。
「早かったですね」と帳場番をしながら書付仕事をしていた内藤が先手を取った。
「思いもよらぬことがあり、迷っていた竜泉寺町の成田屋に人を入れる筋書きを碁四郎さんがさらさらと書いてくれたのです」
「何ですか。思いもよらぬこととは」
「幽霊が出たのです」と碁四郎が割って入った。
「益々、分からなくなりました」
「勘三郎さんを見た珊瑚が悲鳴をあげたのです。訳を聞くと勘三郎さんが殺された与兵衛の若い時によく似ていからだとわかりました。そこで碁四郎さんが与兵衛は四国遍路に旅立ち、その留守の間を倅の勘三郎に頼んだとい筋書きを・・・」
「冬に幽霊話を聞くとは思いませんでした。これで成田屋も手に入ったようなものですね」
「そう成った時、宝の持ち腐れにならないように使えるかですね。こちらからは以上ですが、何かありますか」
「草加宿から戻って来た棒手振りの弥三郎からですが、二十九日の墓参に来るお松とお竹は坂崎さんが連れて来るので、鐘巻さんのご足労には及ばないとの知らせが届きました」
「分かりました」

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Posted on 2018/07/11 Wed. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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