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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第111話 落し所(その1)】 

 月が替わって嘉永六年十二月一日(1853-12-30)、が明け、押上の養育所には向島から男の子達が朝稽古にやって来て庭道場で気合を上げた。
同じように男の子たちの朝稽古は中之郷元町の養育所、駒形の養育所、高田寺昇龍院でも行われた。
 この時、女の子は押上で芸事や作法の稽古をしていた。

 稽古、食事を済ませた兵庫は妻の志津に
「昨日の墓参りの時、碁四郎さんから、内藤さんの要請で竜泉寺町の成田屋に明日集まるように頼まれました。行ってきます」
「お帰りは?」
「昼に一旦戻ることにします」

 兵庫は一人、押上を出て成田屋へ向かった。
表口は閉められており、裏から入ると勘三郎に迎えられた。
「山中先生、内藤先生が奥でお待ちです」
兵庫が二人が待つ執務部屋に行くと、
「呼び出して申し訳ありません」と内藤が詫びた。
「月も改まりました。急ぎたいことを片付けて参りましょう」
呼んだ内藤を扇の要として向かい合った。
「与兵衛が残した、人・物・金の帳簿に目を通しました。その中で人の帳簿の中に、吉原に売られた娘が珊瑚の他に二十五人居ました。この者たちをこのままに置いて居ては第二の珊瑚が現れないとも限りません」と内藤が集まった訳を言った。
第二の珊瑚とは、年季が明けて吉原を出た珊瑚が成田屋にやって来て、己を騙して吉原に売った与兵衛を刺殺した事件が起きた。また起こりかねないと云う事だ。

 なお与兵衛は殺されこの世にはいないのだが、公には殺されたことには成って居らず、西国遍路の旅に出たことに成って居る。
もし狙われる者が居るとすれば与兵衛に似ているための留守番に選ばれた勘三郎だろう。

「二十五人を放って置けないと云う事は、年季が明ける前に身請けでもしようと云う事ですか。欲深い楼主に足元を見られたら、与兵衛の残した金が無くなってしまいますよ。それとも年季が明ける者を選んで引き取るつもりですか」と碁四郎が言い、兵庫を見た。
「年季明けを待たずに二十五人全員を引き取らねばだめだ」
「話は分かるが、そうするためには問題が多すぎる。金もその一つだが、二十五人を引き取り暮らしが出来るように世話をするのは、子供たちとは違い大変だが、何か思案でも在るのですか」と内藤が尋ねた。
「何とか身請けの金は払わずに済ませることは出来ないだろうか。そもそも吉原に売られた娘たちが与兵衛の持ち物だったという証文はない筈ですから。また、かどわかされた娘を買う事も許されてはいないはず」
「そうかもしれないが、そのためには奉行所の裁可が必要だが、そうすると与兵衛殺しの事件が明るみに出る恐れが有るのでは」と内藤が云い。
「それは久坂さんに迷惑を掛ける」と碁四郎が首を横に振った。
実は与兵衛殺しを無かったことにしたのは南町奉行所定廻り同心の久坂啓介だったからだ。

「それではその辺のことを伏線しながら、吉原の個々の店と話し合って身請け話を進めるのではなく吉原側の代表と内々で話を進め、吉原の利益にもなることを悟らせ、吉原の個々の店への説得をお願いしたらどうでしょうか」
「それは兵さんと吉原会所の四郎兵衛さんと腹を割って話し合わねばだめだな」と碁四郎が話し相手をきめれば
「それもそうだが、話だけではなく吉原を出た娘たちが路頭に迷う事のない確かな受け入れ先が在ることを四郎兵衛さんに確かめて貰う必要があるぞ」と内藤が迎える側がその支度をしていることを見せる提案した。
「取り敢えずの受け入れ先は成田屋だが、ここは娘たちにとっては悪い記憶が残って居るので、見た目の改装をした方が良いだろうな。読めるか否かは別として成田屋の看板は外し、外の塀の造作も変えた方が良いだろうな」と兵庫がより具体的な話をした。
「直す前の様子は四郎兵衛さんに見て貰っておいた方が、こちらの本気度も伝わり良いだろうな」
「来てもらって、帳簿を見て貰った方が話も伝わりやすい」
「分かった。ここの話が一段落したら四郎兵衛さんを呼びに行って来ます」

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Posted on 2018/07/21 Sat. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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