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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第111話 落し所(その10)】 

 兵庫等が竜泉寺町の成田屋の看板を下ろした通りに姿を見せると、塀の仕立て直しを指揮していた彦次郎が気付いた。
「先生と奥様が戻られた。お迎えしろ」と仕事を止めさせた。
「皆さん、ご苦労様です。だいぶ変わりましたね」と兵庫が模様替え途中の塀を見て云った。
「傷んで使えない板がかなり在りましたので、細い竹を板状に束ね、それと使えそうな板を千鳥に配置してみました」
「間もなく家の中でも千鳥の鳴き声が聞こえるように成りますよ」と志津が応じた。
「それは楽しみですな」

 短い立ち話が終わり荷車は未だ看板のない神田庵の表口に着いた。
それを待って居たかのように千丸を抱いた勘三郎が出て来た。
「奥様、お返しいたします」
「有り難うございました。助かりました。千丸が満足しているようなのでだいぶ活躍したのでしょうね」
「はい、活躍しました。障子を夏向きに模様替えしてくれました」
「済みません、親の躾が悪いものですから」
 千丸を受け取った志津は千丸のおしめの代えが置いてある部屋へと向かった。
「荷は一旦帳場の方に持ち主毎にまとめて下ろして下さい」
二台の荷車に積まれた荷は大工衆の手も借り時を要さず、帳場に下ろされた。
空荷になった荷車が戻る時には千丸のおしめを換えた志津も出て来て、戻って行く常吉と空太に礼を云い、見送った。

 荷物が積まれた帳場に入った者たちに兵庫が
「これから部屋割りをします。先ず、勘三郎さんは表口を入って右側の最初の部屋にします。表の来客応対、保安をお願いします」
「分かりました」
「次に私たちの部屋は向かい正面の続き部屋とし、両隣の台所側を志乃殿、反対側を佐吉さんに割り当てます」
「兵庫様、続き部屋は要りません」
「私も」
佐吉と志乃が辞退した。
「寝起きするだけでなく、何か指導もして頂きますので、奥はあくまでも私的に使い、前の部屋は仕事に使って下さい」
「分かりました」
 こうして皆が助け合い、荷をそれぞれの部屋に運び込んでいった。
そして運び込みが終わると兵庫の部屋に皆が集められた。
「勘三郎さん、この家に住んだのはあなただけです。この広い家に五人しか居ませんので手際良くしないといけないと思います。何か気付かれたことが御座いますか」
「はい、この家を与兵衛と少ない女だけで維持できたのは、少ない女に教えやらせたことが雨戸を開け布団を干し、洗濯をし、取り込み、雑巾がけ・・・ここには雨戸だけでも一階と二階合わせれば五十枚を超えます。それは良いのですが動きの悪いことときたら私以上です。私が文句を云うのですから。この家は床磨きより生気を入れる方が良いと思います」
「言われてみれば、ここの畳ですが見た目はさほど古くは見えません。と云う事は長い間雨戸が閉めきられていた証かもしれませんね」
「それは近々ここにやって来る娘たちに聞けば分かりますが、手入れされて居なかったことは明白です。ここは女の園と成る所ですが、仕方ありません、明日より交代で男の子たちを住まわせ、生気を取り戻しましょう」
「勘三郎さん干した布団は何組ぐらいありましたか。その分だけでも男の子を呼び入れようかと思うのですが」
「ここは料理屋で旅籠ではなかった。残って居た布団はここに住みこんでいた者たちが使ったボロ布団で、冬場としては三・四人分です」
「与兵衛の布団は?」
「それは、私が使って居ますが、膝を抱えて寝ています」
「よし、私はこれから昇龍院に行き子供たちに今晩から来てもらうように頼んできます。五人居ますが今晩と明朝の食材の融通を付けますか」
「恐らく夕食は既に動いて居ると思いますので、昇龍院で摂って貰い、明朝の食材は貰って来て頂けませんか」

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Posted on 2018/07/30 Mon. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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