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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第111話 落し所(その15)】 

 神田庵で一夜を過ごした兵庫等が朝食を済ませ、それぞれの居場所へと分かれて動き出した十二月三日の五つ過ぎ、夜の遅かった四郎兵衛はようやく目覚めた。
 寝床から出た四郎兵衛は身繕いすると通りに出た。
そして一軒の引手茶屋に入っていった。
朝飯を食べるためだが、客と各楼の花魁との仲立ちをする茶屋の者たちとの話は、会所で待って居ては得られない話を聞くことが出来るからでもあった。
しかし、腹を満たす用件は果たしたが、これといった話は聞けずに会所に戻った。

 四郎兵衛は昨日までの調べで吉原の郭内に居ることが確かめられた者二十一人について、吉原に来た日からの経歴を一人一枚の紙に改めて書き上げていった。
四郎兵衛は書き上げた物を、娘たちを預かる楼閣の主に渡すつもりだったが、渡す前に十分な段取りを済ませておかねば纏まらないことが判っていた。
四郎兵衛はその段取りで先ず理解者であり協力を頼める者を作ることにした。

 会所を出た四郎兵衛はこれから賑やかになる郭内の通りを歩き、京町の松葉屋まで来て楼の中に入った。
「惣吉さんは居ますか」
「奥です。どうぞ上がって下さい」
四郎兵衛は二十一人と話し合う前に協力者として選んだのは妓楼松葉屋の主・惣吉だった。
選んだ訳は??

「何ですか、四郎兵衛さん」と惣吉が尋ねた。
四郎兵衛は兵庫と話したことを内緒話を除き、時間を掛けて話した。
「そうでしたか。死んだほたるも与兵衛さんに騙された娘でしたか。与兵衛さんの話では連れて来た親が娘を形に置いていき、引き取りに来なかった聞いて居ます。」
「それは与兵衛が連れて来た他の娘を買った妓楼の主もおなじ話をしていたそうです。与兵衛が娘たちを同じ妓楼に売らなかった訳は、騙した娘を売る方便を思いつかなかったからでしょうな」
「ほたるが亡くなり赤子を残した時は引き取って貰う相談に行ったのですが、そんなことが在りましたか。忘れましたでしたよ・・でした」
「死ぬとは想定してなかったのでしょうね」
「亡くなったほたるの話は済んだ話でした。げんに吉原に居る娘たちの引き取り先では、鐘巻様の奥様がやりて婆を買って居ると云うのでしたら、娘たちの引き取り先に文句は出ませんね。ただそれだけでは半分しかただで返す話を受け売れないでしょう」
「ただ、それだけでは駄目なら、あと何が必要ですか」
「ただ返すのは損した感じが否めませんので、何か金ではなくてもよいので見返りを提示する必要が在りますね」
「何かとはなんですか」
「何かとは、娘を出す方と娘を受け入れる側の双方が受け入れられるものでなければなりませんね」
「理屈は分かりましたが、何ですか」
「私には分かりませんよ。しかし分かる方が居られます。四郎兵衛さんならわかるでしょ?」
「分かりますよ」
「それではそのお方に会いに行き、見返りが必要なことを伝えて下さい。二十一人の楼主が受け入れてくれそうな見返りが、この話の落し所です」
「舞台は引手茶では狭すぎますから、揚屋に成りますが」
「だいぶ前から大仰な揚屋は使われ亡くなって居ますが、揚屋町に舞台は残って居ますので主に話しておきます」
「それでは、これから竜泉寺町に行って奥様が居られれば、お願いして参ります。引き受けて頂けたら、来て頂ける日取りを決めて参ります」
「私は、その段取りで揚屋の舞台を再度お願いしますので、四郎兵衛さんは二十一人に声を掛けて下さい」
「そうなるように、行って来ます」

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Posted on 2018/08/04 Sat. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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