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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第111話 落し所(その18)】 

 入谷の竜三郎の店に入った兵庫は、竜三郎・おとき夫妻と対座した。
ここには他に養育所から手伝いに来ている千夏と小夜の他に浮浪の子供たち十六人と浮浪から与兵衛の妾となった乙女、与兵衛に騙され吉原に売られ年季奉公を終え吉原を出た珊瑚が分け合って住んで居る。
 この時浮浪の子供たちは二階で主に集団生活における協力、譲り合いなどの指導を千夏や小夜から受けていた。これは近々養育所に加わるための準備だった。

「皆さんは、二階で勉強中ですか」
「はい、まもなく養育所に移れると思い真剣に取り組んで居ます」
「そうした中、また忙しい中、申し訳ないのですが千夏と小夜を来客対応のため数日借りることに成ります。と云うのは私たち夫婦は昨日竜泉寺町に引越しをしました。そこに二十人を超える客を招き、こちらも加えると三十人ほどに成ります。迎える客は吉原の楼主たちで、成田屋に騙されて吉原に売られた娘たちを引き取る相談です。こちらの要望通りに行けば二十一人の娘たちを引き取ることに成ります」
「その娘たちをと云っても娘を過ぎた者も居るでしょうから、子供たちの様には行かないでしょう。そのご苦労を思うと私たちも甘えてはおられません。千夏と小夜はお返ししますので先日来ていたもも、そで、そのの三人をお願いできませんか」
「午後に新しく押上の主となった根津さんの奥さんが参りますので、話してみます。千夏と小夜の引き取りには誰か人を寄越しますのでお願いします」
「分かりました」

 入谷を出た兵庫は昼が迫る駒形に入った。
案の定、内藤は二階で行っていた講義を止め、子供たちは昼食の手伝いを始めていた。
兵庫は顔を出した内藤に、
「早ければ五日、竜泉寺町に吉原の客・二十人以上を招きます。出席をお願いします。山中さんにも伝えておいて下さい」
「分かりました」
「それと、この家の二階・北西の部屋に置いてある・・」
「奥様の調度品ですね。竜泉寺町に運ぶのですね。上等な品物ですから業者に任せた方が宜しいですね」
「その件で、花川戸の大黒屋に頼んでおきますので、宜しくお願いします」
「分かりました」
「今日の昼も鰯の煮物ですか・・・」
「五日の日を楽しみにしましょう」

 駒形を出た兵庫は花川戸で運送業を営む大黒屋に入った。
「鐘巻先生、お待ちください。お爺ちゃんを呼びますから」
「今日は仕事をお願いに参りましたので又五郎さんではなく道太郎さんをお願いします」
「主人は出かけておりますので、私が伺っておきますが」と道太郎の妻・おしまが言った。
「志津が駒形に入る時、こちらにお願いし持ち込んだ荷がまだ駒形に置いてあります。その荷をこんどは竜泉寺町の元成田屋へ、今日明日の内に運んで欲しいので、留守居の内藤さんに話して下さい」
「承りました」

 兵庫は志津に頼まれたことを取りあえず済ませ竜泉寺町まで戻って来ると、外の塀はほぼ出来上がっており、外に働く者姿は見られなかった。
表口から入ると何よりも先に、駒形にも漂っていた鰯の煮物の匂いに包まれた。そして帳場だった所には模様替えした神田庵の看板が立てかけられていた。
そして兵庫が匂いに誘われて行くと、自室に多くの人が居るのが見られた。
「皆さん遅れて済みません」
「先生は滅多なことで食事に遅れることはないのでお待ちして居ました」
そして昼を告げる正午の鐘が鳴った。
「ほんとだ」に続き笑い声が起こり食事が始まった。
そこには彦次郎、総三郎、浜吉、水野賢太郎・粟吉の大工衆と文吉、観太、大助、佐助、梅次郎のこの家に息吹を呼び戻すために呼んだ子供たち、そしてこの家で暮らすことに成った佐吉、志乃、勘三郎、兵庫と志津さらに寝ている千丸が居た。

 食事が終わり兵庫が
「早ければ五日になりますが、客人・二十数人をこの部屋に招きます。ここに居る倍の人数が食事をします。奥の部屋を使えば何とか入りそうです。当日は訳ありの客ですので、こちらから顔を出すのは志津の他養育所の三役に留めます。皆さんはこの家にやって来る者たちのために、新しい仲間のために、この家の補修を続けて下さい」

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Posted on 2018/08/07 Tue. 05:31 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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