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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第111話 落し所(その21)】 

 兵庫と碁四郎が話して居ると彦次郎がやって来た
「先生、雨戸の開け閉めはの方は直しました。この家の使い方が変わるとのことなので、直したい所は色々在るでしょうが、大物が在れば準備しなければなりませんので、何か在りますか」
「あります。今後この家には多くの娘たちを迎え十人も増えますので、二階に物干しと裏に洗い場の増設をお願いします。それと志津の話も聞いて下さい」
「分かりました」
彦次郎が居なくなると、庭仕事をしていた佐吉がやって来た。
「兵庫様、中庭ですが、色々と手伝って頂いたのですが、荒れすぎたため四方から見て安らぎの場には成りそうも在りません。思いっきり娘たちの道場にしたら如何ですか」
「異存は在りませんが、女の館のことなので志津に確かめ連絡します」
「分かりました。それまでは器量を良くしながら焚き付けを作っています」
 そうした中、四郎兵衛が来たとの知らせに、兵庫と志津そして碁四郎が出迎えに表口まで行くと四郎兵衛の他にもう一人、身なりの良い見知らぬ壮年の男が付いていた。
「あら、三浦屋の・・・仙太郎さん」と志津が呼んだ。
「ご無沙汰しております。四代目を継ぎ助左衛門で御座います」
「それは御目出とう御座います。お上がりください」
 家の中は午後に成って交代でやって来た子供たちが、古株の文吉、観太、佐助、梅次郎の指示で割り当てられた部屋、廊下などを糠袋を使い磨いていた。
「お客様、いらっしゃいませ」
「みんな、静かにね」
「はい、母上」
 部屋に入った客が
「よく躾けられていますね」
「みな、普通の子に成りたいので、一生懸命なのです」
「養育所を開かれて居るそうですが、何人居られるのですか」
「既に届け出して居る者が八十三人とこれから出す者が十六人居ます」
「約百人も・・大変ですね」
「始めた時は確かに骨が折れましたがその者たちの中に養子に行った者、これから行く者などが出始めています。後から来た者たちは自分たちと同じ浮浪の者たちが養子に行くことが出来ると同時に、その者たちが自分たちを虐める町の子たちより優れていることを目にするのです。努力をすれば読み書きが出来るようになる。事実、仮名が読めるようになり、簡単な暗算もできるようになりました。更には箸の持ち方から、町の子には縁の無いもの、男の子は剣術、女の子には箏なども教えます。みな何事にも一生懸命に取り組んでくれます」
そこに茶を運んで来る者が居た
「千夏、小夜、来ていたのか」
「はい、兄上様。もも、そで、そのさんが私たちの代わりに入谷に来られましたので、私たちはこちらに参りました」
茶を客人や兵庫等の前に置いた二人は戻って行った。

「お越し頂きました御用向きをお聞かせください」と兵庫が本題を尋ねた。
「先日、鐘巻様より成田屋与兵衛に騙され吉原に売られた娘たちの取り扱いについて揚屋にて話し合う予定でしたが、奥様より外の者が揚屋に呼ばれることは遠慮したいとの申し出が御座いました。頭を突き合わせ、あーだ、こーだ、と話し合うことで、手前どもが奥様を揚屋に呼ぶことで舞い上がっていたことが解かりました。揚屋はやはり花魁のために残すことに致しました。きょうはその知らせと、話の場をこちらにお願いして良いものかを、私以外の目でも確かめて貰うため、助左衛門さんと参ったのです」
「こちらは養育所の三役と志津を加えた四人でお迎えしようと考えています。使う部屋はここと奥座敷合わせて二十畳と広くはありません。ここで御客様に将来の娘たちが作る食事をお出ししますので、ご賞味ください」
この話に四郎兵衛と助左衛門が興味を示した。もはや部屋の狭さは問題ではなくなった。
「話し合いの場所はこちらで結構です。手前どもはいつでも良いのですが・・・」
兵庫が志津を見た。
「明後日の六日でしたら用意が出来ます」
「分かりました」
四郎兵衛と助左衛門はそれだけ確かめると帰っていった。

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Posted on 2018/08/10 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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