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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第112話 一抜けた(その14)】 

 浅草平右衛門町の船宿・浮橋に山中碁四郎を尋ねた兵庫はちょっと付き合ってくれと、船を仕立てて碁四郎を加え深川に向かった。
その船中で、兵庫は話し始めた。
「竜三郎さんから入谷の店を繁蔵さんに返したいと云われた」
「その顔つきから推察すると受け入れたのですね」
「ああ、だが繁蔵さん一人では済まないからな」
「神明町の久蔵さんの家も返すことに成りますね。いいじゃないですか」
「久蔵さんが大事にしていた船箪笥はどうする」
「あれを空けるのがお蔦婆さんの生きがいの一つになって居るな。返すのは良いとして、開けるまで待つように頼みます。ところで竜三郎さんが急に繁蔵さんに店を返す気持ちになった訳は?」
「ご存知の通り、竜三郎さんの所では旅籠もやろうと三人を修行に出しました。今日寄ったらその三人が修行を終え戻って来ていました。言われて気が付いたのですがその三人は皆、元繁蔵一家だったのです」
「それは、遠慮したくなるのも分かるな。竜三郎さんの命を狙った者たちに囲まれるのは・・・それで何故深川へ行くのだ」
「深川に行くのは、涛屋で療養して居る中居の経験者・二人に働く意思が在るか否かを確かめ、在るのなら一旦、神田庵に引き取ります。また繁蔵さんにも話し、店を継続することを確かめたうえで、中居の仕事をお願いするつもりです」
「繁蔵さんにしても仲居さんにしても断る理由は無いような、ただ、竜三郎さんの行き先を決めておかないと繁蔵さんが断わる可能性は在るような気がする」
「あの二人なら見放しても暮らしを建てて行けると思いますが、今考えて居るのは聖天町の仕舞屋を任せようかと思って居ます」
「あの仕舞屋で飯屋から再出発ですか。人通りは圧倒的に多いのでやりがいは在るでしょうね」
「飯屋より料理屋を目指して貰うつもりです。什器などは神田庵の物を使って貰い、手助けも付け、酒も出し、営業時間も昼と夕にして稼いで貰うよう頼みます」
「ところで私は何のために深川へ行くのですか」
「一番はこの船代を只にするためだ」
「二番目はいいので三番目はなんですか」
「昇龍院は引き払うことにしようと考えていますので、しばらく深川を見ていて下さい」
「分かりました。それで昇龍院に居る者たちは?」
「全て雲海和尚との話の上で決めることに成りますが、太白さんと又四郎は神田庵に、賄いの団吉さんは聖天町へ、浜中さんは中之郷で彦四郎さんの補佐をお願いしようかと、思って居ます」
「直ぐに引き払うのは無理ですよ。太白さんと又四郎は襖絵の注文を受けていますから」
「そうでしたか。でも昇龍院は私が引き受けますので、碁四郎さんは深川を頼みます」

 引き潮の流れに乗った船は大川を下り永代橋を潜り、江戸湾に出る前に深川の南の掘割に入っていった。そして永代寺門前町の涛屋の裏に船を着けた。
「銀太さん、船を回して待って居て下さい」と碁四郎が言い、陸に上がった。

 表に回り涛屋に入って行くと、幼い子たちとカルタをして遊んでいるおしゅんとおみよが、その様子を、主の重吉が見ていた。その重吉が、
「鐘巻様、山中様それに佐助・・いらっしゃい。お揃いで来られたと云う事は、悪党どもを懲らしめにですか。もっとも奴らが出没するのは夕刻からだが・・・」
「何ですか。気に成る話ですが」
重吉に先手を取られた兵庫が聞き返した。
「小悪党が新年を迎えるための小遣い稼ぎのためか、永代橋を渡って来る者からせびって居ると云う話です」
「碁四郎さん、この話を聞いておいて下さい。私はおみよさんとおしゅんさんにここに来た用件を話します」

 兵庫のの言葉を聞いていた、おみよとおしゅんは
「どうぞ奥へ」とおみよが誘い
「永吉に富吉、仲良く遊んで居なさい」とおしゅんが云い、兵庫を座敷に入れ、二人は更に奥へと入っていった。

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Posted on 2018/09/04 Tue. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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