FC2ブログ

10 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.» 12

洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カレンダー

【鐘巻兵庫 第112話 一抜けた(その15)】 

 おみよが茶を淹れ部屋に入って来た。そして碁四郎と重吉に茶を淹れたおしゅんも部屋に入って来た。
「お二人とも、顔色もよく安心しました」
「これも、みな、皆様方のお陰です。有り難うございました」
 二人は深川の別々の料理屋で仲居として働いて居たが、台場造成景気で働きづめとなり身体を壊し寝込むことが多くなっていた。その母親のために食事を子供預かり所から運ぶ子供が居た。
そのことを知った兵庫が、料理屋に住み込みで暮らす女を引き取り涛屋に移し療養させたのだ。(110話 その30~)

「早速ですが用件はお二人の働き口が見付かりましたので働く意思が在るか確かめに参りました。仕事は今、入谷で飯屋を開いて居る所が旅籠もやることになりました。その立ち上げに力添えをお願いしたいのです。ただ、段取りが出来るまでは私が今住んでいる竜泉寺町の神田庵に住み指導して貰います」
「何の指導ですか」
「神田庵には近々働かなければならない娘たちが大勢いますので、客への接し方など、何でも良いのです。お子さんのことでしたら養育所に預け勉強させることもできますよ」
己のことより子供のことを考えている二人に迷いはなかった。
「お願いします」と頭を下げた。
「それでは支度をして下さい」
「えっ、今ですか」
「はい、神田庵には何年もの間、世間のことを教えられずに過ごして来た娘たちが居るのです。もう無駄にする時は無いのです。頼みます」
「分かりました」
「おくさ~ん」と兵庫が叫んだ。
直ぐに重吉の妻・一枝がやって来た。
「奥さん、お二人と子供さんを本日こちらで引き取らせて頂きます」
「今日ですか」
「はい、忙しそうな用が出来たようなので・・・明日は別の用が有りますので、今しかないのです」
「何ですか。“出来たようなので”とは」
「それは、御主人から聞いて下さい」と帳場の方を見た。
「ああ、永代橋の東詰めで起きている上客へのせびりと店への嫌がらせですね」
「はい、その者たちを今夕根絶やしにします。」
「傷つけることに成りますよ」
「出来るだけ、そうならないようにします。碁四郎さんこっちは纏まりました。そっちは?」
「話は聞きました。兵さん、草加と越谷の手勢を集めて下さい。私は坂牧(本所・深川辺を受け持つ南町定廻り同心)さんに話しをつけておきます」
「段取りは船の中で」

 船の人に成った兵庫は、上り船の艪を握った碁四郎に話し掛けた。
「相手は何人ですか」
「確かではないのですが網吉さんの話では二十人ほどらしいです」
「こちらは元東都組十人、元繁蔵一家四人、元久蔵一家十三人、平田組が五人、他に未だ十人は居るから相手の倍程にはなりますから、大怪我はさせずに済むでしょう」
「ただ、その二十人ほどを束ねる者が判らないそうです」
「二十人も居れば弱い者も居るでしょう。涛屋に押し込め一人一人攻めれば名前が出て来るでしょう」
「怖いので任せます。集合場所は深川の涛屋に六つ(六時頃)にしましょう」
「分かった」
 船が本流を横切る時、兵庫も竿を握り船は銀太、碁四郎、兵庫の三人に操られ大川を横切り神田川に入り浮橋に着いた。
「兵さん、こちらの二家族は浮橋で昼を摂って貰います。取りあえず急ぎの草加・越谷への使いを出して下さい」
「分かった。佐助、お前はこれから昇龍院に行き、浜中さんと団吉さんに、深川で悪党退治をするので七つ半(五時頃)に駒形に集まるように告げ、神田庵に戻り昼を食べなさい。それと入谷の竜三郎さんと修行から戻って来ている三人にもな。分かったら、出かけなさい」
「分かりました」とひと声のこし、嬉しそうに浮橋を飛び出していった。
「皆さん、私はこれから手配を済ませ、食事を済ませたらこちらに迎えに参ります。それまでお待ちください」
「宜しくお願い致します」

 ←ボタンを押して頂ければ励みになります。

Posted on 2018/09/05 Wed. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

この記事に対するコメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://tokinotsuribito.blog79.fc2.com/tb.php/3607-3087ba07
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)