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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第112話 一抜けた(その16)】 

 浮橋を出えた兵庫は足を速め駒形に立ち寄った。
呼び出した内藤虎之助に
「本日夕刻深川で商いの邪魔をする悪党二十人ほどを一網打尽にすることにしました。そのために草加や越谷にも声を掛けます。ここに七つ半頃人が集まりますのでご承知おきください。詳しい話は後ほど」
「急ぎを済ませて来て下さい」

 駒形を出た兵庫は聖天町の仕舞屋(しもたや)に入った。
「夏吉さん、熊吉さん」と声を掛けた。
兵庫の声に敏感に反応した男たちが呼ばれた二人の他、賄いの栄十郎と髪結い六助の四人出て来た。
「草加宿の道場と仙吉さん、越谷宿の乙次郎さんへ、急ぎの使いをお願いします」
「分かりました。どのような使いでしょうか」
「今夕深川で商いの邪魔をする二十人ほどの悪党を懲らしめるので見物にお越し頂きたい。出来れば本日暮れ六つ深川の涛屋に参集頂ければ幸いです。尚、既に相手を上回る者が居り勝算はありますので、不参にても御懸念には及びません。以上です」
「要するに悪党二十人を懲らしめるので深川の涛屋に来てもらいたいと云う事ですね」
「暮れ六つとなると急いだ方がいい、おいらも見物したいからな」
夏吉と熊吉は昼飯のために炊きあがっていた飯で握り飯を作ると飛び出していった。

 急ぎの用を済ませた兵庫は竜泉寺町の神田庵に戻った。
既に昼食は始まって居たが、先に戻っていた佐助の話を聞いたのか兵庫の膳も妻・志津の脇に置かれて居た。
 兵庫は座に着き、箸を置いた十六人の子供たちを見た。
「よく来てくれました。一年間みっちり就業すれば、神田庵に居る千夏や小夜のように、男の子は文吉、観太、大助の様に成れます。張って下さい。それでは頂きます」

 昼食後、子供たちは片付けのため膳を台所へ運び、部屋から子供たちの姿が消えた。
「佐助から話を聞きました。深川の方が無事片付きましたら、皆様方をこちらにお招きしたら如何ですか」
「構いませんか」
「養育所には男たちが大勢ると云ったことが嘘ではない事を見せておくのも良いのではありませんか。男にとっても・・」
「それでは、子連れですが未だ若い人を二人浮橋に預けて居ますので迎えに行って来ます」

 兵庫は稽古着に着替えると、勘三郎、佐助そして梅次郎を連れ、神田庵を出た。
浮橋に行くためだったが、
「先に中之郷に寄ることにします」と云い、吾妻橋へと道を変えた。

 中之郷元町の養育所に入った兵庫は勘三郎と留守居の彦四郎と広間に入った。
間を置かずこの屋敷に居る男たちが集まって来た。
「集まって頂きましたのは、永代を渡り深川に来る客から小銭をせびる凡そ二十人の者たちを本日夕刻一網打尽に捕らえるためです。人手が必要なので深川永代寺門前町の涛屋に暮六つに御参集をお願いします。この話は草加宿や越谷宿にもお願いに行って貰って居ます。問題は悪党を束ねて居る者がその中に居ないようなのです。何とか吐かせて、その家に押し込み捕らえたいと思って居ます。その後のことは相手の出方次第です。なお、私たちの動きは本所・深川の定廻り坂牧殿に山中さんから伝えることに成って居ます」
「深川に迷惑を掛ける者たちは深川の者ではないだろう」と矢五郎が確かめてきた。
「その様です」
「鐘巻さん、これは古い手口のような気がする」
「何ですか、古い手口とは」
「永代橋の西も東も花街だよ。店の前を素通りされて深川に行く者が多くては腹が立つわけだ。だから深川へ遊びに行く者に嫌な思いをさせ、大川端、浜町辺りに引き戻そうとしているのではないか。これが古い手口だ」
「古い手口は分かりましたが、客は何故深川へ行くのですか」
「それは大川を境に取り締まりに違いが在るからだよ。楽しく遊べる方に客が行くのは自然の流れだよ」
「話をまとめますと、二十人の後ろに居るのは西詰の料理屋の主たちと云う事ですか」
「わしの読みが当たって居ればの話だがね」
「分かりました。この話の続きは後ほどします。私はこれから碁四郎さんの所に預けた
女性(にょしょう)を迎えに行かねばなりません。申し訳ないのですが、深川の件、押上と向島にも知らせておいて下さい」
「任せてくれ」

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Posted on 2018/09/06 Thu. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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