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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第112話 一抜けた(その18)】 

 兵庫と勘三郎が訪れたのは中之郷元町の養育所で、今夕・深川での悪党退治の話がどのように進展したのかを聞くためだった。
留守居役の中川彦四郎が
「親父の云う事が確かなら、やってくる二十人ほどの者たちには乱暴は働けない。後々いがみ合う事になるのを避けたいからだ。永代橋の人の流れは東西の橋詰に在る花街を賑わせる源と言っても過言ではないためです」
「それで・・・」
「狼藉を働く二十人の者たちが何処から来るか確かめに親父たちは永代橋の西詰を岡っ引きの手も借り見張りに出かけました。その状況は東詰めにも知らせ、どの程度手加減をするのか決めたいと。二十人ほどが橋を渡り始めたら吾らで背後を閉ざすとも言っていました」
「何となく矢五郎さんの考えが分かりました。その考え方は東詰めの者たちにも徹底させます」
「私は西詰の情報を持って定刻までに涛屋に参ります」

 中之郷元町の養育所を出た兵庫と勘三郎は駒形の養育所に入った。
出て来た内藤に
「先にお願いしておきます。出かける前に握り飯一つ頼みます」
「それで良いのですか」
「志津に、男たちを神田庵に招いてくれと言われて居るのです。そこで酒食が出るようなので・・」
「なるほど、一組でもまとまれば結構な話に成りますな。わざわざ草加、越谷まで声を掛けた狙いはそこに?」
「何となくですが、志津が神田庵に招くことを口にしてくれたので決まったのです」
「勘三郎さん、狙いを付けた女は居るのかな」と内藤が尋ねた。
「目の前にちらついていてとても狙いなど付けられませんよ」
笑いが起こり、そして止んだ。
そして話が暫く女たちの話になっていった。
「いま、十畳間に四人住まわせています。何か仕切りを置いてあげたいのですが、何か在りますかね」
「洒落た几帳でも置けば良いのでしょうが、そうですね直ぐに用意出来るのは衣桁ですかね」
「衣桁なら一人に一基ですが渡してありますが、その様に使って居るのか、二階に上がって居ないので分かりません」
「廊下からの目を気にするのなら、夏炉冬扇と云われるかもしれませんが、簾を入口に行き来する大人の肩の高さ辺りまで垂らせば済みそうですね」
「なるほど」
調度屋を始めた養育所にとって取り扱う調度について語らいは七つの鐘が鳴っても続いていた。

 外に足音がして戸が開き入って来たのは入谷の竜三郎、喜重、島吉そして圭次の四人だった。
「皆さんいらっしゃい。細かい話は聖天町と昇龍院の者たちが揃ったら話します」
そして昇龍院から浜中松之助と団吉がやって来た。
「聖天町の者、忘れているんじゃねぇだろうな」
「神田庵で大工仕事をしているからですよ」
「女たちの姿が目に入って、手の方が動かないからじゃないですか」
「否定は出来ませんが、荒っぽい仕事を見逃すとも思えませんが」
「ちがいねぇ」
 噂をすれば影、走り寄る音がして戸が開いた。
待って居た聖天町の者で留守居の富五郎を先頭に賄いの栄十郎、髪結いの六助、そして大工の総三郎と浜吉の五人だった。
「新藤さん、揃いましたよ」と兵庫が二階に向け叫んだ。
その声で先ず台所から駒形の賄い役の卯吉と岩五郎が、少し遅れて二階からここで学んでいる子供たちが下りて来た。
「いらっしゃいませ」と兵庫等に挨拶をしながら台所へ消えていった。
そして、刀を手にした保安方の新藤栄二が下りて来た。
「浅草側には、ここに揃った者の他に草加宿と越谷宿に使いに出している夏吉さんと熊吉さんが居ますが、戻るのに時を要しますので、これからの話を始めます」
皆が座り直した。
「本日昼前に深川・涛屋の重吉さんから伺った話です。永代橋を渡り深川の花街に来る者を選び金をせびるなどの嫌がらせをする者が凡そ二十人ほど居る。この二十人は仲間のようで邪魔をする者が現れると集団でその者に立ち向かうので手強い。以前は永代の重吉と恐れられた重吉さんもやくざの足を洗った現在、人を集めて立ち向かう訳にはいかないようです。湊屋には預かり所の件で日々お世話になって居ますので、代わりに悪党退治をすることにしたのです。ただし、必要以上に相手を痛めつけないように、こちらは相手の倍の人数で迎え討ちます。相手が刃物を出した時は逃げて下さい。その時は養育所の侍衆が相手の刃物を打ち落とすのを見ていて下さい」
「お話は分かりましたが、何か物足りないのですが、なにか訳ありですか」

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Posted on 2018/09/08 Sat. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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