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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第112話 一抜けた(その19)】 

「二つあります。一つは、私も皆さんも養育所で働いて居ます。ですから子供たちの育成に悪いと思われる行動は極力控えるのが努めです。二つ目は、中川矢五郎さんの読みですが、今回の悪事は大川を挟んで東の深川と西の浜町の客の奪い合いで、浜町側の客が深川へ流れているために、浜町側が荒っぽい手段を選んだのではないかということです。同業の争いで橋の行き来が滞るように成れば双方にとって損。ここは穏やかに治めるのが得策ということで、禍根を残すような怪我人を出さないでくれと頼まれて居ます」
「それは在りうる話です。私も以前先生に斬られて亡くなった半蔵親分と浜町の店に雇われ同じようなことをしたことが在ります」と竜三郎が吐露した。
「矢五郎さんの話では、これは古い手口だと云って居ました」

 子供たちが握り飯を運んできた。
「軽い食事をして下さい。本日は志津が神田庵で一席を設けて待って居ますので、早めに片付けて戻りましょう」
「どうりで、握り飯の一つな訳が分かりました」
 その握飯を食べ終わり、茶をすすって居ると 戸が開き入って来たのは草加宿で淀流の剣術看板を掛ける坂崎新之丞と道場に寄宿しながら問屋場で働く金子鉄太郎、反町半四郎さらに宿場外れの萬古物商に婿養子に入った矢田部林太郎さらに台場造成で口入屋を相手に騒動を起こし江戸所払いになった三助の聰太の五人だった。
「坂崎さん、仙吉さんは?」
「越谷の乙次郎を待って一緒に来ると云っていた。わしら侍は無暗に走れぬので先に出たわけだが、足の達者な乙次郎らは間を置かずに来るだろう」
「分かりました。それまで私と待ちましょう」と云い兵庫は見回した。そして、
「浜中さん。私は宿場から来る方々と行きますので、皆さんを深川永代寺門前町の涛屋まで案内して下さい」
「分かりました。皆、出かけるぞ」と立ち上がった。
そして、集まっていた浜中以下十四人が駒形の養育所を出て行った。

 帳場に上がった坂崎らに握り飯が出された。
「少ないですが、用が済んだ後、新しく手に入れた神田庵に一席もうける支度をしています」
「神田庵については、こちらからやって来る棒手振りの熊吉から聞いて居る。わしと林太郎、仙吉、乙次郎等に見合い話は不要だ」
「そうですが、神田庵は見てから戻って下さい。そうすれば宿場にも神田庵に入れ、再起の夢を叶えさせてやりたい女が見付かるはずです」
「なるほど、今後も同じような境遇の女のために使うと云う事か。それなら・・」

 乙次郎と仙吉たちは呼びに行った夏吉と熊吉に加え、乙次郎の子飼いとなった好太郎と波平を、十兵衛から引き継ぎ仙吉の子飼いとなった猪之吉、昇太、弥次郎を伴い、総勢九人で走り通しやって来た。
 休息しながら腹ごしらえを急がせられながら、兵庫の話も聞かされた。
兵庫の云う事は友に暮らして来た仙吉や乙次郎には分かる。しかし、連れて来た子飼いの者たちには分かりづらいことが在った。
「先生の云う勝ちとは喧嘩に勝っただけではなく、けんか相手が仲間になってくれるかの方が大切なのだ。そのためには勝ち方が大事なんだよ。倍以上の相手に負けても恥ではない。負けたにもかかわらず大勢に袋たたきに遭わない。相手が仲間に加わるか否かは相手次第だが、負けたことを根には持たないだろう」と仙吉は十兵衛から引き継いで子飼いにした三人に言った。
 こうして一休みした、兵庫以下十五人は駒形を出て深川へ向かった。

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Posted on 2018/09/09 Sun. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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09/09 05:32 | edit

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