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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第112話 一抜けた(その24)】 

 碁四郎の所に向かっていた兵庫は途中、駒形の内藤虎之助を尋ねた。
一刻前に永代橋での出来事を話したばかりなのだが、それ以上の出来事を解放した十人が引き起こしたことを知らせておく必要があったからだった。
 内藤に矢五郎から聞いた事件の話と、生き残って中之郷元町の屋敷内に匿った林蔵が居ることもはなした。
「分かりました。浅草の定廻りが姿を見せるかもしれませんが林蔵のことは身内にも話さないようにします」

 そして同じ話が、平右衛門町の山中碁四郎にも話された。
「分かりました。林蔵のことは除き明日にでも白子屋事件が起きたことは隠さず坂牧さんに話しておきます。尤も奉行所経由でも伝わるでしょうが、・・・」
「冗談かもしれませんが、林蔵については浪人・間寺林蔵と風体を変えさせるようなことを言って居ました」
「兵さん、冗談ではないでしょう。冗談は町人・林蔵に化けていたほうですよ。匕首を突き出すのもかなりの者でしたから出は侍だと思って居ました」
「そう言えば東都組を率いていた半蔵も侍でしたね。侍姿のままでは悪事を働きづらいのでしょうね」
「私たちが侍姿を隠してやることと云えば、駕籠かきですね」
冗談が出たところで兵庫は浮橋を出て、神田庵に戻って来た。

 宴席は二箇所に設けられていた。
それは余りにも多くの男たちが集まったからだった。永代橋に出かけた独り者の男だけでも三十九人、その他に薬屋・継志堂から六人と経師屋為吉、建具屋建吉、大工の亀吉、たちも招かれていたからだ。 
 部屋割りは基本的な修行をすでに終えている者たちが多く選ばれた。ただその中には既婚者も含まれどちらかと云えば地味な集まりだった。
具体的には独り者の侍が五人、継志堂の六人、大工、建具、経師屋の三人のほか草加、越谷宿から来た者たち総勢二十四人だった。 
別室には、独り者で修行期間の短い者たちが三十人ほど入っていた。

 面白いのは、部屋に入った男たちはいくつかの島に分かれて座って居たのだ。
そうなった訳を少し時間を遡って見てみる。
神田庵にやって来た男たちは一旦別室に入れら茶などを飲んで一服して居ると、神田庵の女主・志津が部屋にやって来た。
「お待たせしました。お招きしたのは皆様にお願いしたいことがあったからです。それはこの家に住む女たちに修行させたいからです。今日は中居の修行です。皆様は神田庵にお越しの品の良いお客様として振る舞って下さい。こちらに居ますのは本日の中居頭のおみよとおしゅんで御座います。他に本日皆様に膳などを運ぶ仲居見習が二十人ほど居ますので宜しくお願いします」
 志津の説明で男たちは品の良い客として振る舞う役割を演じなければならなくなった。
そして志津が懐から取り出した書付を見ながら数人ずつ選んだ。
「部屋に案内させますので廊下に出て下さい。配膳が終わったら始めて下さい」
若い仲居が「ご案内致します」と客に挨拶した。その胸元には“このは”と書いた短冊状の布が留められていた。
そして先頭に立ち宴席の部屋に案内していった。
部屋にはすでに座布団が点在する島の様に置かれていた。
若い仲居見習の女は島の一つを選び、
「こちらでお待ちください」と云い残し部屋から出て行った。
女は隣の部屋に入ると部屋仲間の“はな”が待って居た。
事前に用意しておいた箸と猪口を乗せた宗和膳を二人が重ね持ち、宴席に戻り男たちの前に置いていった。
「料理とお酒を運びますのでお待ちください」と部屋から出ていった。
そして入れ替わるように次の客を“もみじ”が案内して来た。
この様子を仲居頭のおみよが見ていた。
料理や酒の入った岡持を持ったすすき、めじろ、はな、このは、四人の部屋仲間が入って来て配膳していった。
「お待たせしました。お召し上がりください」                  
最初の客を迎え終えた四人は、次の客を迎えるため再び志津の所へ一人を送り、残りは空になった岡持を台所へ運び循環の流れが滞らないように回していった。
こうして、二か所の宴席が数組の客の集まりで町の居酒屋の様になっていったのだ。

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Posted on 2018/09/14 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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