FC2ブログ

10 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.» 12

洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カレンダー

【鐘巻兵庫 第112話 一抜けた(その28)】 

 神田庵を出た兵庫は駒形の養育所に内藤をたずねた。
その養育所の前には大八車が置かれていた。
これは神田庵に居る海吉(十一歳)、勝男(十歳)、歌丸(十歳)、波吉(十歳)、米吉(十歳)を迎えに行くためだった。
 中に入り声を掛けると直ぐに内藤が顔を見せた。
「何でしょうか」
「今日の段取りを少し変えました。外の車にこちらに居る霧丸(十二歳)、雲丸(十二歳)、在吉(十一歳 )、勘八(十一歳)の荷を積んで神田庵に移してください。戻りに神田庵からは予定通り五人を引き取って下さい。その他に観太を組長として駒形に派遣します。それとこちらに居る虎次郎(九歳)、熊五郎(九歳)を呼んで貰えますか」
「皆、出て来なさい」と内藤が奥に向かって呼ぶと、皆が出て来た。
「今の話、聞こえましたか」と兵庫が尋ねた。
虎次郎と熊五郎が「はい」と応えると他の者も頷いた。
虎次郎と熊五郎には中之郷に行き、年少組の組長になって下さい。
「はい、有り難うございます」
「内藤さん六人出して六人受け入れですから、商いに支障は無いでしょう」
「はい、入谷の子供たちが五人来ることは分かって居たので為吉さんにお願いし、帳場番は引き受けることで帳場脇の部屋を空けて貰い、仕事は二階の自室でお願いして、了解して頂きました」
「それは良かったですね」
「もう一つ良いことが重なったために不都合が・・」
「何ですか、謎解きですか」
「実は調度屋が繁盛し始めたのです。折り畳み文机だけなら良いのですが折り畳み式膳台を作り置いたら、その日の内に注文が四台入り、建吉さんが置き場所が無いとまとめて作れないので値が上がってしまうというので、為吉さんが空けてくれた部屋を使う事にしたのです」
「その折り畳み式膳台とは如何なる物ですか」
「新しい注文が来ると待たせることに成るので、見せないようにして欲しいと云われ、障子を閉めて在ります」と云い、その障子を開けた。
そこには文机を大きくした物が置かれ、さらにその上には同じ物が畳み重ね置きされて居た。
「結構な話ですね。来年には作業場兼庫を建てましょう」
「お願いします」
「それと、坂崎道場の金子さんと反町さんが江戸で仕事をしたいと云うので、学門方として雇い入れることにしました。数日中にここに参ります。駒形は保安方しか居ませんので一人如何ですか」
「それは助かります」

 駒形を出た兵庫が次に向かったのは向島の円通寺だった。
庫裏に和尚の浮雲を尋ねた兵庫に
「引き取りに来たか」と先手を打った。
「はい、二人にとっては短い修行でしたが、戻って時の移り変わりを感じることだと思います」
「久蔵や繁蔵にはここに居ても時が止まったままだった。子分どもは変わったか」
「はい、今は夢を見ることを覚えました」
「そうか、それなら連れていっても良いだろう」
「有り難うございます。引き取らせて頂きます」

 墓場への入口に建つ小屋に入ると坊主頭の二人が将棋を指していた。
「先生でしたか。婆さんだったら叱られるところでした」
「先ほど和尚にお二人を引き取るお許しを頂きましたので、支度をして下さい」
「迎えに来てくれたのか。それで何処に行くのだ」
「入谷と芝です」
「良いのか」と繁蔵が確かめるように言った。
「良いのですが、私のところに来て下さい。お話ししますので・・・」
二人は風呂敷一つの荷をまとめると小屋を出て、和尚に挨拶をして寺を出た。
 この後兵庫は押上で根津甚八郎に、中之郷元町で中川彦四郎に、押上で内藤虎之助に挨拶をさせ外に出た。
「先生・・・どちらにお住まいですか」
「しいて言えば竜宮です」
「娑婆に出たと思ったら次は竜宮か・・・」 
 そして賑やかな町中を抜け、下谷の外れの竜泉寺町にやって来た。
「ここ神田庵が私の新しい住まいです」
開いていた家の木戸を入り、目隠しの網代塀の裏に回ると表口の格子戸がある。
開けてはいると男が出て来た。
「勘三郎」と久蔵が嬉しそうに呼んだ。
「これは久蔵様に繫蔵様、ようこそお越しくださいました」
「お二人は数日ここに泊まります。部屋は佐吉爺さんと相部屋しますので用意をお願いします」
「分かりました」

 ←ボタンを押して頂ければ励みになります。

Posted on 2018/09/18 Tue. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

この記事に対するコメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://tokinotsuribito.blog79.fc2.com/tb.php/3620-e8a84c31
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)