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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第112話 一抜けた(その30)】 

 昼を知らせる板木が打たれた。
「今日は子供たちの出入りが在りました。私たちは子供たちと昼を食べることに成って居ますので、久蔵さん、繁蔵さん、大人たちの部屋で食事をお願いします。佐吉さん、お願いします」
 障子が開けられ佐吉らが出て行き暫くすると、先程、茶を運んできた五人の女が膳を掲げて廊下にさしかかり三人は通り過ぎ、二人が兵庫の部屋に入って来た。
通り過ぎた三人が珊瑚、乙女、ススキの三人で、隣の佐吉の部屋に入っていった。
兵庫の部屋に入って来たのはかすみとおこまで二人とも共同生活する五部屋の年長だった。
 子供たちが自分の膳を持って部屋に入って来た。入谷から来た十六人の子供たちの内で神田庵に残り修行することに成ったサザエ(十六歳)、アマモ(十五歳)、アラメ(十四歳)の三人と、押上からやって来た来年十一歳以上になる、もも(十四歳)、そで(十三歳)、その(十三歳)、桔梗(十一歳)、萩代(十一歳)、お吉(十一歳)かえで(十歳)、まゆ(十歳)の八人、そして養育所修行が一年に成る千夏(十一歳)の子供十二人だった。
「いまここに集まって居る子供たちは養育所の中では年齢の上の者たちばかりです。しかしその年齢に見合ったことが出来るかと云えばまだまだです。ここ神田庵が学びの場としては最後に成ります。これまでのことは何も恥じる必要はありませんが、これからは別です。分からないことは聞き、出来ないことは繰り返しおこない、身に付けて下さい」

 昼食後、兵庫は志津に、
「碁四郎さんの所に行き、何も無いようでしたら昇龍院、入谷に寄ってきます」
「お願いします」

 碁四郎が営む船宿・浮橋に入るとそこには矢五郎が居た。
「兵さん、坂牧さんの話では深川の方は平穏だそうです」
「恐らく、岡っ引きの百吉がわしの名を出さなかったのではないかな」
「それは良かった」
「兵さん、久蔵さんを引き取ったことを矢五郎さんから伺いました」
「その件、芝神明の鬼吉さんに伝えて下さい。親孝行して下さいと伝えて下さい」
「鬼吉を手放すのですか」
「己の道を見つけたのですから結構なことです」
「入谷の竜三郎さんも独立させるのですか」
「そのつもりですが、これから行って入谷の店が旅籠として一本立ち出来るよう暫く助力を頼むつもりです。それでは行って来ます」

 兵庫の足は真っすぐ入谷には向かわず高田寺の山門を潜り、庫裏に雲海和尚を訪ねた。
「お願いに参りました」
「願いは良いのだが、今出て行かれては困るのだ」
「昇龍院については半ば無理矢理お借りしたので、早番お返ししなければならないと思って居ました。そんな折に相次いで代わりとなる家が手に入りましたので、返そうと思ったのです。ところが、思っても居なかった多くの者たちを受け入れることに成り、その家を使わなければならなく成ってしまったのです。今暫く昇龍院をお貸しいただきたくお願いに参りました」
「はい、結構ですよ。出来れば、浜中様をお借りできれば有難いのです」
「こちらは構いません。ご本人気持ちを尊重して下さい。独立派こちらの願って居ることですから」
「それは寺にとっても有難い話じゃ」
「よいお返事を頂けましたので、昇龍院によって戻りたいと思います」

 昇龍院に入ると、開け放たれた部屋の廊下近くに文机を置きで浜中松之助が本を読んでいた。
「鐘巻様、太白殿と又四郎殿はただ今、寺から頼まれた襖絵を描いておりますので暫く上がるのは御控え下さい」
「それは絵師として誉れとなる仕事ですね。邪魔はしません。近々、新しい未習熟の子供四人を加え、お願いすることに成りますので宜しく頼みます」
「楽しみに待って居ます」

 昇龍院を出た兵庫が次に向かったのは入谷だった。
昼飯時が過ぎた店に客は居なかったが、店の奥では声が上がっていた。
「竜三郎さん」と奥に向かって声を投げ入れた。

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Posted on 2018/09/20 Thu. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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