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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第112話 一抜けた(その31)】 

 兵庫の声が届くと直ぐに竜三郎が出て来た。
「先生、お上がりください」
「いや、三人が頑張って居る声が聞こえます。気が逸れるといけないのでここで話します」
「確かに、何か在ったのか、急にやる気を出し手伝いを始めました」
「実はそのことと関係ある話が有ります」
「何でしょうか」
「竜三郎さんの話を伝え、繫蔵さんと久蔵さんを、昨日、神田庵に呼び戻しました。それでお願いですが、繁蔵さんをこちらに受け入れた上で店が旅籠を営むまで面倒を見て欲しいのです。そのために今、志津が賄いと仲居について、三人の女を仕込んで居ます。ある程度、出来るように成ったら喜重、島吉、圭次の嫁に成ることに成って居ます」
「そう云う事だったのか。三人が変わったのは」
「女三人と男三人が夢を叶えるために動き始めています。竜三郎さんご夫婦の夢はその後に追いかけて下さい。あなた方なら必ず夢を叶えられると志津も申しておりました。お願いします」
「勿体ない、お言葉です。鐘巻様が私たちに夢を持たせてくれたのです。夢を見られる時が長くなるのを拒む理由など在りません。明日にでも繁蔵さんをお迎えに参ります」
「待っています」

 神田庵に戻った兵庫は男の子たちを自室に集めた。
この時集まったのは文吉、霧丸、雲丸、在吉、勘八だった。
「皆はこれからは高田寺内にある昇龍院で修行をして貰います。霧丸、雲丸、在吉、勘八の四人は文吉より修行を始めたのが凡そ一年遅いので その分遅れて居ます。この遅れを半年で取り戻すように解らないことは尋ねることを恥と思わないことです。周りには僧侶も居るのですから教えを請いなさい。なお、ここに居る五人の他に深川の涛屋に使いに出ている佐助も加わります。文吉。これより涛屋に行き、一枝殿に、用心のためほとぼりが冷めるまで一時引き揚げますと伝え、音吉、佐助、梅次郎をここに連れ戻して下さい」
「分かりました」   
「他の子供たちは稽古仕度をして中庭で稽古をしなさい」
「はい」

 子供たちが部屋から出て行くと、障子の外から
「兄上様、彦次郎様がご挨拶にお越しです」
「通して下さい」
障子が開けられた。開けたのは押上から来たばかりのももだった。
部屋に入って来たのは彦次郎、水野賢太郎・粟吉親子、総三郎、浜吉の大工衆だった
「ご苦労様でした」と兵庫から話し掛けた。
「取り敢えずの修繕と修行の場と云う事で物干し場造り、井戸回り洗い場、表の塀などを直しました。より使い易くすることは出来ますが、これから娘たちが暮らす所は九尺二間が始まりでしょうから、そこに無い物を作っても修行の妨げと思い、敢えて作って居ません。何か必要な物が生じた時、直したい物が有る時は呼んで下さい」
「その時はお願いします。それと、駒形ですが経師屋と未だ看板は上げて居ませんが調度屋を始めています。作業場所、置き場所を用意しないと客を待たせることに成り商いの機を逸することに成るとのこと。そこで、建吉さんと相談して裏庭に以前建てた道場のようなものを建てて下さい」
「その件については、何度か建吉さんや為吉さんとも話しています。ただ、裏庭は子供たちにとっても大切な場ですから・・・」
「そうですが、これからは駒形で修行させる子供たちは男子の年長の者を選び、手に職を付けさせようと考えています。駒形では居ながらして大工、建具、経師の技を教えられるようにして行こうとも考えてのことです。もし剣術を学ばせる場のことを考えるのでしたら、ここ神田庵の中庭を使えます。何とかなります」
「分かりました。子供たちにとって、何よりの楽しみが出来るのでしたら、心配事は失せました」
「それでは、頼みます。竹刀の音が聞こえてきました。剣術は私の楽しみの一つです。佐吉爺さんが好きな庭いじりを諦め、私のために、ここを更地化させてくれたのです。行って来ます」
 兵庫は長押にかけてあった竹刀を掴むと、大工衆を置いたまま、部屋を出て行った。

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Posted on 2018/09/21 Fri. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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09/21 05:30 | edit

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