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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その2)】 

 朝飯を伝える板木(ばんぎ)が打たれた。板木での合図は幾つかある養育所共通の方だが、凡そ朝は五つ少し前である。それは、ここ神田庵でも踏襲されて来ていたが、吉原から二十一人の女たちを引き取ると変化が起きた。
食事の時間が早められたのだ。その狙いは食後に風呂屋に行くためだった。
神田庵にも風呂は在るが住んで居る者が増えすぎ、町の風呂屋に行くことになった。
比較的すいて居て、湯が綺麗な朝方に女たちは代わる代わる湯に行くように成って居た。

 朝飯は幾つかの部屋に分かれて食べられるのだが、兵庫の部屋には養育所の女の子十二人と佐吉が一緒に食事を摂った。
昨日までは保安方の勘三郎も同席していたが、相方の富五郎が来たため一人飯ではなくなったので表口の部屋で食べるようになった。
 食事が終わり兵庫が、
「子供たちの修行場所を今後も変えて行きます。早速ですが深川の涛屋で預かって居る子供たちと遊びながら文字などを教えるために、今、中之郷に居る大助に行って貰います。ただ預かり所の子供たちは夜に成ると、親が引き取りに来て帰ってしまい、大助は一人に成ってしまいます。ですから大助と同じぐらいの年頃の子にも行って貰う考えです。いま、中之郷に居て大助が指導できる幼い子の豆吉(六歳)と浅次(五歳)に行って貰えるか話してみます」
「兄上様、同じ年頃の子、柿次郎と桐丸が向島に居ます。深川に行くのなら・・・」
深川から来て事情を知って居る桔梗が言った。
「確かにかわいい子がいましたね。この話は先に向島からしてみます」

 神田庵を出た兵庫は先ず、駒形に寄った。
経師屋の店番をしながら書き物をしていた内藤虎之助が、
「鐘巻さん、今夕に草加宿から金子鉄太郎と反町半四郎さんが来ます。棒手振りさん改め牽き荷商いで草加宿から戻る空の車に荷を乗せて来るそうです」
「今晩と明日は、こちらでお願いします」
「そのちもりです」
「これから大助を深川涛屋の子供預かり所に連れて行きます」
「薬研堀に行っているお玉と同じ役目ですか」
「そう成ります。向島の柿次郎と桐丸にも話をして行って貰い、三人で預かって居る子供たちと遊ばせながら文字などを覚えさせようという狙いです」
「それはなかなかの案ですな」

 中之郷の養育所に入った兵庫は留守居役の中川彦四郎に会い、事情を話し大助を呼び出した。
兵庫の話を聞いた大助は「面白そう」と引き受けた。
大八車を借り、大助の私物を乗せ、兵庫は向島に向かった。

 向島に着いた兵庫は村上茂三郎を尋ねて来た事情を反して居ると、大助が柿次郎と桐丸を連れて来た。
「柿次郎、桐丸、大助と深川の涛屋に行き、他の子供たちと遊びながら修行する気は在るか」と事情を知って居る者に話すように聞いた。
「行きたいです」「行きたいです」と二人は応えた。
「分かった。戻りたくなったら大助に伝えなさい。迎えに行くからな」
「はい」
「それでは、皆に挨拶してきなさい」

 皆に見送られ大助と手を繋いだ柿次郎と桐丸が歩き始めた。その後ろを兵庫が三人の荷と握り飯の入った包を乗せた大八車を牽いていった。
のんびり歩き昼少し前に涛屋に着いた。
大助が閉め切られていた戸を開け中に入った。
「あら、大助ちゃんと・・そっちに子とは会ったことあるね」
炬燵に入り、預かって居る子供たちとカルタをしていた一枝が言った。
「柿次郎です」
「桐丸です」
「お話が出来るように成ったんだね。えらいね」と云いながら、外で荷を解く兵庫を見て
「網吉さん、先生が来られましたよ」と奥に向かって呼んだ。
足音を立てて姿を見せた網吉は土間に下り、外に出て大八の荷を中に運び入れた。
 戸が締められ、皆が板の間に上がり、向かい合った。
「皆、友達を連れて来たよ。ここにずっといるから、仲良く遊んで下さい」
「大助です」「柿次郎です」「桐丸です」
 一枝さん、三人のこと宜しくお願いします。
「分かりました。助かります」
「網吉さん、ねぐらを変える気は在りますか」
網吉は永代寺門前町参道の土産物屋・永代屋の娘・里に一目惚れしたのだが、そのお里には婿を貰う話がまとまってしまった。網吉にとってお里の姿が見える永代寺門前町は住む場所ではなくなって居たのだ。
「はい、何処にでも行きます」
「それでは皆さんに挨拶して荷を大八に乗せて下さい」

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Posted on 2018/09/27 Thu. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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09/28 05:55 | edit

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