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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その4)】 

 網吉のお里への恋心がお里に舞い込んだ婿取りの話で花を咲かせることなく散った。
一方的な恋心だが、お里と網吉は知らぬ仲ではなく、無関心ではなかった。一人娘のお里には親に従わなければならない定めが在った。
網吉にどれほどの傷心が残って居るか定かではないが、もし二人に何かしらの思いが残ったまま放置するのは避けた方が良いとの思いから、今回の再配置が行われたのだ。
 兵庫が網吉の配置換えでは関連施設の何処が良いのかきまらず、碁四郎に話をしたら、それならと引き受けてくれた。 
それで網吉を配置したのが風呂屋への住み込みで、主な仕事が三助なのだ。
三助は碁四郎の出世に無くてはならない要素だった。
網吉にとって、そうなるとは思わないが、何よりも良いと思えたのは、富士の湯にはこれまでに網吉のことを知る者が居ない事だった。新しくやり直すにはもってこいの修行場だと兵庫は思った。

 深川の涛屋に開設して居る子供預かり所に預かった子供たちを将来自立させるためには読み書き算盤を身に付けさせる必要があった。そのために大助、柿次郎、桐丸の三人を送り込み遊びながら教えさせることにした。
 さらに少しばかり元気が感じられなくなった網吉の配置転換をおこない、気に成って居たことに手を打った兵庫は、借りていた大八車を返し、神田庵に戻った。

 暫く志津と出来事を話してから、兵庫は仲居親子を部屋に呼んだ。
畏まって居る二家族四人に、
「当初、おみよさん、おしゅんさんをお招きしたのは、直ぐにでも入谷で働いて貰おうかと思ってのことでした。しかし、入谷のことは別の者に頼むことにしたのはご存知の通りです。お二人の働き場所は暫くここでお願いします。そこで問題なのはお子さんのことです。お子さんとここで暮らしながら学ばせる場合は日々駒形とここを往復して貰うことに成ります。送り迎えはこちらで責任を持って行います。ところでお子さんの年齢は幾つですか」
「二人とも年内は七歳です」
「もう一つは、お子さんを寄宿させ学ばせることです。この場合は年齢の合う中之郷の養育所に成ります。そこには先日深川の涛屋で一緒だった音吉もいます。養育所に教育を望まれるのでしたらどちらを選びますか、お子さんと相談して決めて下さい」
「分かりました」
「私は、音吉さんが居るほうに行きたい」
「私も」
永吉と富吉が応えた。
「決めたことを後で変えても構いません。相談して決めて下さい」
「分かりました」

 親子が部屋から出て行くと、兵庫は次に為すべきことに窮した。
兵庫が手持無沙汰に成ることはよくある。その様な時兵庫は剣術の稽古、子守り、草鞋造りのどれかで時を過ごす。
ただ神田庵から男たちが消えると稽古をする相手が居なくなった。子守りは、佐助爺さんに任されてしまっている。残りは草鞋作りだった。
「草鞋でも作るか」と独り言を言うと、兵庫は部屋を出て行った。
向かったのは表口の板の間だった。
神田庵には兵庫の他に手持ち無沙汰になる男が居る。保安方の二人である。
女を大勢抱えているため保安方は必要なのだが、基本的には平穏無事の日が続くため、表口の板の間に座り草鞋作りをすることが多いのだ。
案の定、勘三郎が草鞋を作っていた。
「富五郎さんは」
「この近辺の様子を見に行っています」
兵庫が勘三郎の脇に座り草鞋造りを始めた。
平穏な時が流れていった。
四半刻ほど経ち、富五郎が戻って来て草鞋作りに加わった。
そして足音がして稽古着姿の新道栄二がやって来た。
「内藤様からです。草加宿坂崎道場より金子鉄太郎殿と反町半四郎殿が着きました」
「分かりました。明朝、食後迎えに行くと伝えて下さい」
「分かりました。お待ちしております」

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Posted on 2018/09/29 Sat. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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