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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その5)】 

 嘉永六年十二月十三日(1854-1-11)、ここ神田庵では変わらぬ朝を迎え、朝食が終わった。
兵庫は着替え直すと表ごちに出た。そこには長い一日の出入りを見張ることになる保安方の二人が手慰みとして草鞋作りを始めていた。
「駒形経由で高田寺の昇龍院に参ります。富五郎さん、昇龍院は未だでしたね。荷物運びも兼ね付き合って貰えませんか」
「富五郎、行ってこい」と勘三郎が促した。

 神田庵を出て駒形の養育所に入ると帳場には内藤虎之助の他に金子鉄太郎と反町半四郎
が座っていた。
「どうやら昇龍院行きを引き当てたのは反町さんのようですね」
「当てた訳ではないが、波銭のお告げだ」
「寺ですから学ぶのに金はかかりません。遊ぶ所も近くに在りますが、波銭では足りません。波銭のご託宣は学べと云う事のようですね」
「反町の旦那。柳行李は私に担がせて下さい」
「富五郎さん、有難いが荷物はそれだけだだから・・」と剣術の道具を身に付け、ぶらさげている反町が遠慮した。
「今日は昇龍院までの荷運びを願い出てお供をさせて貰ったのです。私の顔を立てて下さい。背負子が泣きます」
反町が兵庫を見ると、兵庫が頷いた。
「悪いが、頼む」
兵庫は子供たちの世話をすることで、互いに思いやる気持ちを育ててきている大人を見ていた。

 歩きながら兵庫と反町は昇龍院での仕事について話し合い、時には声を上げて笑い、高田寺までやって来た。
「着きました、昇龍院はこの高田寺の塔頭の一つです。和尚に会いに行きましょう」
兵庫は二人を高田寺の和尚が居る庫裏に案内した。
 三人は和尚の居る部屋に入り対座した。
「和尚様、遅れましたが、お役に立てればと草加宿の道場から昨夜来てもらいました反町殿です」
紹介された半四郎が「反町半四郎で御座います。宜しくお願い致します」
「待たされましたが、心強いお方ですね。こちらこそよろしくお願いします。仕事については浜中様にお話ししてありますのでお聞きいただき役割を決めて下さい。役割を分けるもよし。役割を行う日を分けるのも良しです。やって来る子供たちを忘れないで下されば結構です」
「和尚、二人の都合が悪い日には他の者を寄越しますのでご安心して下さい」
「時には、学門ばかりではなく絵でも経師仕事でも子供たちの為になるものなら何でも構わないよ」
「分かりました。これからそちらにも挨拶して戻ることに致します」

 庫裏を出た三人は次に反町が暮らすことに成る昇龍院へと向かうと気合が聞こえて来た。
「子供たちの声ですね。侮れない強さです。油断すれば江戸道場の道場主も打ち込みますからね」
「それは楽しみだ、坂崎道場に来ていた子供も強かったのを覚えているよ」
「観太と大助を預けたことが在りましたね」
「その観太だよ」
「観太は今、駒形に居ます。ここに居るのは文吉ですが、もっと強いです。楽しみにして下さい」
「あれ?・・裏へ行くのですか」
「表口は閉め切られているので、普段の出入り口は脇に成って居ます」
その脇口から三人が入ると、気が付いたのか竹刀の音が止んで、姿を見せたのが浜中松之助だった。
「反町」
「浜中」
互いに呼び合う声が邸内に響いた。

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Posted on 2018/09/30 Sun. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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