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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その6)】 

 反町と浜中それと駒形詰めとなった金子とは旧知の仲で、それも命拾いした仲でもあった。
生きるために、金で雇われ抗争の場に身を晒したのだ。それは生きるために人を殺すという歪んだものだった。幸運は抗争で誰も死ぬことなく、軽い打撲程度で済んだことだった。
更に言えば、無宿者狩りの手から逃れるために、一時的に江戸を離れた草加宿に匿われ、全うな仕事の世話までして貰って居たのだ。
そして、江戸に戻りたいと云う願いが受け入れられ、人を育てる仕事が与えられ戻ることが出来た。
これらの顛末は養育所を束ねる兵庫の意志によるものだった。

 久しぶりに再会した反町と浜中の笑顔は剣術稽古をしていた子供たちにも伝播していた。
そして二人の元に七人の子供たち文吉、佐助、勘八、在吉、霧丸、雲丸、海吉と賄い方の団吉が集まった。
「新しく反町半四郎さんが加わります。仲良く励んで下さい。それと子供たちが居る駒形、押上、中之郷、向島、昇龍院、神田庵、薬研堀、深川涛屋で都合の良い日を決めて餅つきをします。それには皆の母も来ますので楽しみに待っていて下さい」

 用を済まし、兵庫と富三郎は神田庵に戻った。
そして改めて、勘三郎と富五郎に告げた。
「駒形の内藤さんに子供のいる養育所と預かり所で餅つきをするので、養育所関係者一人一升あてで餅米の手配を頼んで下さい。宿場には米で配るのでその分もお願いしますと・・」
「凄い量に成りますね」
「二百人で二十斗ですから、俵で五俵に成りますが・・腐るものではないのでと伝えて下さい。それと道具を出して支度をするように手配して下さい」
「今度は勘三郎さん、足を延ばして来て下さい。私は草鞋を編んで居ます」
と、富五郎が譲った。

 部屋に戻ったが志津は女の子たちへの指導のためか居なかった。
餅つきの日取りで志津の都合を聞くためだったが、急ぐことではなかった。
志津が戻るのを待って居る間に、駒形に餅米の用意を頼みに行った勘三郎が戻って来て、兵庫の部屋を訪れた。
「先生、内藤さんからですが、久坂さんの言伝が在るので午後、来て欲しいとのことです」
「分かりました。ご苦労様でした」

 昼食後暫くして兵庫は駒形の養育所の奥に入いり内藤と対座していた。部屋から出された内藤の妻・お雪は帳場に場所を変え、針仕事をすることになった。
「午前中に久坂(南町定廻り同心)さんが参り、色々と話していきました」
「それでは、一つずつお願いします」
「私がこちらに来る前の話、今から凡そ二年目に晦日の三左衛門と云う賊を鐘巻さんが仕留めたそうですね」
「はい、但し、暮れではなく正月だったような気がしますが、凡そ二年前に・・」
「あの者は火付け盗賊改めが追っていた賊だそうで、皆捕らえたと思って居たら晦日に徒党を組んで商家に押し入る賊が現れたそうです。その手口も以前の手口に似ており、残党が居たのではないかとのことです」
「話は分かりましたが、久坂殿がわざわざ来られた訳は何でしょうか」
「若い無宿の者を捕えるそうですから、用心して欲しいとのことです。養育所にはあまりにも多くの者が居るので顔を一々覚えてはいられないと云う事です」
「確かに顔は覚えきれないでしょうね」
「どうしますか。みんなを足止めにしますか」
「内藤さん、地天の半纏ですが残って居ませんか」
「なるほど、在りますが綿入れと一重(ひとえ)を合わせて三十着ほどですね。東都組以降の者には配って居ませんが何とかたりそうですね。足らない場合は既に配った者から一重を借りましょう」
「外で商いをする棒手振りの者たちには綿入れを配るようにして下さい。侍は一重で良いでしょう」
「分かりました。帰りに二人分お持ちください」
「その前に、久坂さんから聞いた色々な話の二番目を話して下さい」

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Posted on 2018/10/01 Mon. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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