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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その7)】 

 内藤は飲み残した茶を飲み干した。
「この話は矢五郎さんにも声を掛けて在りますので、もう少し待ってください」
「矢五郎さんには先日働いて頂いたのですが、大きな事件に成ってしまい気に掛けて居たのです」
「深刻な話には・・」
表の戸が開けられる音が内藤の話を止めた。
部屋に入って来た矢五郎が
「ご褒美でも頂ける話に成りませんね」と冗談を言った。
「いや、そうとは限りませんよ・・・」と内藤が相槌を打った
「どう云う話ですか」と兵庫が乗り出した。
「先ず、矢五郎さんの名は一切出ていないそうです」
「わしが関わって居ることを知って居るのは岡っ引きの百吉だが、別に悪いことはしていないので伏せたのだろう。話がややこしくなるからな」
「話とは、白子屋事件は殴り込みではなく、招いた仲間をだまし討ちにしようとして相打ちになったと云う事で納まるそうです。その訳は店側が長脇差で相手が匕首の争いで、準備して居たのは店側とおもわれるからだそうです。それで店財産は闕所扱いに成るそうです」
「これまで養育所は、この手の物件を手に入れて来たので知らせてくれたのですね」
「今回も入れ札したらどうですか」と内藤が
「矢五郎さん、店を見られたようですがどのような建物でしたか」
「間口六間、奥行は深かく、総二階に見えた。入れ札するのなら見に行った方が良いだろう」
「その役を弥一さんに頼んで貰えませんか、土地の大きさだけは出来るだけ正確に頼みます」
「土地代で買うつもりか」
「はい、町人は縁起の悪い建物ですから取り壊すことも考えるのではありませんか。私は土地代だけで入れます」
「それでは町人と同じで手に入るかは土地代の値踏み次第ではないか」
「そうですが、町人は建物を取り壊す費用を引くでしょうが、私は取り壊さずに一分交換する程度で使います。事実、薬研堀の養育所も随分人が亡くなって居ますが、何の祟りも在りません」
「江戸は、妖怪の絵や幽霊話が流行る土地柄だから、心のどこかに取り付かれているのだろう」
「内藤さん、取り敢えずですが白子屋の買い取り金として百両ほど用意しておいて下さい」
「それぐらいの金ならいつでも用意できますが、百両の根拠が在れば教えて頂けませんか」
「それは以前、浅草田原町の家主があの辺りは坪単価十両だと云うので、駒形の川沿いはと聞くと、裏通りだから二両ほどだろうと云ったのです。白子屋の坪数は分かりませんが奥行十間とし六十坪としました。駒形と同じなら百二十両に成りますが、少し割引百両としましたが、これから山倉屋に行きその辺りのことを尋ねてみます」
「帰りに寄って下さい。地天の半纏を用意しておきます」

 兵庫は浅草・森田町の札差山倉屋の裏口から入り、番頭の晴四郎を呼んで貰った。
「鐘巻様、お久しぶりです。何で御座いますか」
「霊岸島四日市町に在る白子屋で十人を超す者が亡くなる騒動が在りました。この白木屋は闕所となることに決まった様です。養育所としては入れ札に参加するのですが、土地の相場が分らないので伺いに参った次第です」と単刀直入に尋ねた。
「一日猶予頂けませんか」
「有り難うございます。後日、内藤が参りますので宜しくお願い致します」

 駒形に戻った兵庫は内藤に晴四郎との話を伝え、地天の半纏を受け取り神田庵に戻った。
表口で勘三郎と富五郎に地天の半纏を渡し、
「これから無宿人狩りが行われるそうです。これを着ていれば養育所の者だと分かりますので、いちいち言い訳しないで済みますので出かける時は着て下さい」

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Posted on 2018/10/02 Tue. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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10/02 07:09 | edit

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