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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その9)】 

 兵庫の話に忠衛門は下座に座る妻に
「早苗、平九郎に伝えておいた方が良いかもしれぬな。取り越し苦労と云われるかも知れぬが」
「出仕の邪魔をされ、遅れては不面目になりますね」
「ご両親様、その心配は無いでしょう」
「??・・」忠衛門が兵庫を見た。
「襲われるのは阿部川町の若林家に居る平九郎殿です。その後、平九郎殿に起きた出来事は瓦版には書かれては居ません。狙われるのはこの家に居ると思われている平九郎殿ですよ」
「平九郎は居ない・・・」
「相手が侍なら女、老人は討たないでしょう、狙われるとすれば・・」
「倅の進之介か・・・それは困る」
「いくつかの仮定の上の話です。ただ事が事ですから用心をしておいた方が良いでしょう。その用心ですが、火盗改めが追う盗賊相手となると、守るのは大変です。ことが納まるまでお家に変事が起きないように手勢を用意いたしますので屋敷内に入れさせてください」
「頼みたいが、鐘巻殿や来て頂く方々にお礼をする術がない」
「その事でしたら賊から頂くのが習いに成って居ますのでご心配無用です」
「賊から貰うのが習い?・・」
「褒美は切り取り次第。私に流れている戦国武士の血がそうさせるのです。敗れた者に償わせます」
「そのようなことが出来るのか」
「“骨折り損のくたびれもうけ”に成ることも在りますが、大した損は致しませんので、お気遣いなくお願いします」
「わしはお願いしたいと思って居るが、この家の主は倅に進之介に譲っており、決めるのは主が決めることだ」
「分かりました。それまでもう少し話を聞かせて下さい」
「何ですか」
「この屋敷には何人住んで居ますか。わしらと息子夫婦それと下男の五人だよ」
「この家を守るために夜間に人を入れます。反対に身を守れない者はこの家を出て、こちらが用意する家に移って頂きます」
「わしもか」
「この家の者は出来るだけ居ない方が戦いやすいので、お願いします」
「有難く受け入れることにするよ」

 兵庫と忠衛門の話がやって来た要件と外れ始めた頃、
「戻ったようだな。早苗二人をここに呼びなさい」
 おおよその話を母から聞いた進之介と妻の栄が隠居部屋にやって来た。
「ご親切な申し出を母から聞きました。一つ確かめさせて頂けますか」
「何なりと」
「もし、何も起こらなかった時はどうなりますか」
「何も起こりません。速やかに退散します。十中八九はそうなると思います」
「分かりました。万が一を考えお願いしたいのですが、両親を預ける家を確かめさせて頂けますか」
「いつでも結構です。全てお見せ致します」
「幸い明日は非番ですのでお伺いいたします。駒形ですね」
「いや、変わりました。今は竜泉寺町の神田庵に住んで居ます。誰か迎えに行かせますがいつ頃が良いでしょうか」
「竜泉寺町でしたら分かって居ます。あとは神田庵を探すだけです」
「神田庵は最近付けた名で以前は成田屋与兵衛の金貸し屋でした。そこがなぜ私の住処に成ったか、悪党を懲らしめた戦利品と申しておきましょう。お待ちしております」

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Posted on 2018/10/04 Thu. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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