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洗心湯屋

日本一長い、時代小説を目指しています。

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【鐘巻兵庫 第113話 極月(その11)】 

 若林家の者を送り出した兵庫は、表口に陣取る保安方の勘三郎と富五郎に、山中碁四郎や各養育所を回らせ、物騒な話が生じたので、午後、中之郷に一人以上、留守居か保安方に集まる様に伝えさせた。

 昼食後兵庫は地天の半纏を着た富五郎を伴ない、待ち合わせ場所に成って居た駒形に入った。そこには既に若林忠衛門、進之介親子が来ていて、内藤、新藤、金子らと話していた。
「お揃いですね。ご案内致します」
駒形を出たのは兵庫、富五郎、若林親子、内藤、金子の六人だった。
吾妻橋を渡り始めた忠衛門が
「この橋を渡るのも久しぶりだな」と懐かしそうに呟いた。
「平九郎殿が入った石原新町の金子家が番長へ屋敷替えが在りましたからね」
「あの頃はと云うより昨日まで、晦日の三左衛門には微塵も悪意を抱く事は無かったが、三左衛門に倅が居るとすれば平九郎は不俱戴天の仇となりかねない。立場が変わるだけで今度は狙われる・・・取り越し苦労であって貰いたいものだ」
「十中八九は何も起きないでしょう。万が一に備えるのは後々後悔したくないからです」

 中之郷の屋敷に入った兵庫に番士の一人心太が歩み寄り
「先生、皆様は道場に集まって居ます」
「分かりました」
兵庫は母屋には入らず、中庭の木戸を開け進んでいき、道場の縁側から障子を開け入っていった。
「お待たせしました。人が多いので間合い三間で車座に座りましょう」と兵庫は碁四郎前方三間の位置に座った。
こうして凡そ二十人が四方障子張りの明るい道場で向かい合った。
「急ぎ集まって頂きました用件に入る前に、どのように事の発端がもたらされたかを内藤さんに話して貰います」
「話は入魂(じっこん)にしている奉行所の者より伝えられました。その内容は盗賊・晦日の三左衛門と同じ手口の事件が起こっている。そのため奉行所は取り敢えず無宿人、浪人狩りを近々行うとのことです。養育所としては幸か不幸か見た目奉行所に狙われそうな方が多いので、地天の半纏を配らせて貰いました。話はこれだけですが、この話を鐘巻さんが吟味し直した結果、万が一の話として、知り合いの者が命を狙われているのではないかとの考えに及びました。その辺の話を鐘巻さん頼みます」
「先ず、晦日の三左衛門ですが火盗改めが追う賊でした。二年ほど前、当時のお奉行遠山様から晦日の夜、駒形で逃亡する賊の見張りをするよう頼まれました。そして逃亡する賊二人が現れたのです。その賊を私と私の最初の弟子だった若林平九郎で討ち取ったのです。その時の事件を描いた瓦版がこれです」と兵庫は懐から瓦版を取り出した。

 瓦版が回されて、兵庫の元に戻って来た。
「これから集まって頂きました謎解きを致します。先ず賊と立ち会った感じから三左衛門は武士だと思います。こんかい動き出した賊を火盗改めは三左衛門の残党ではないかと見ているようです。その残党の中に三左衛門の縁者が居たとします。極端な例は三左衛門の子供です。侍の子が父の仇を狙うのは普通のことです。ここまでの話、少し飛躍しては居ますが万が一の話として、おかしいところは在りますか」
「兵さん、話が面白く成って来た。進めて下さい」と碁四郎が促した。
「それでは話を進めます。仇を討ちたいと願う子は仇が誰かを調べるでしょう。その時先ほど見せました瓦版です。瓦版には阿部川町に住む若林平九郎と書かれて居ます。仇は阿部川町の若林平九郎です。しかし、そこには居ません。居るのは父と兄です。本日私の脇にお越しの方が平九郎殿の父上の忠衛門殿と若林家跡取りの進之介殿です。私は万が一のことを考え、屋敷内に入り賊を迎え討つお許しを頂きました。・・・」
「先生、私も手伝わせて下さい。平九郎さんのお陰で先生と出会うことが出来たのです。手伝わせて下さい」と甚八郎が名乗り出た。
「平九郎殿の祝言に出たお父上が私の腕前を確かめるために駒形まで来たのを打ち負かしたら、暴れん坊の甚八郎を押し付けられたのだったな。甚八郎は若いが腕を上げた、そろそろ実戦もいいだろう。突きを磨いておきなさい。相手は着込んでいたからな」
この後次々と名乗り出た。

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Posted on 2018/10/06 Sat. 04:01 [edit]

thread: 花の御江戸のこぼれ話

janre 小説・文学

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